JR東日本と日本線路技術は22日、新幹線における「スマートメンテナンス」の本格始動を発表。「スマートメンテナンス」の実現をめざし、導入する2種類の新幹線モニタリング車について、レールモニタリング車の愛称を「SMART-Green」、線路設備モニタリング車の愛称を「SMART-Red」とすることも発表した。同日に「SMART-Green」「SMART-Red」の報道公開も行われた。
新幹線の安全・安定輸送において、線路の健全性を確認するため、技術者の目視による線路点検・検査は必要不可欠とされている。これを装置によるモニタリングに置き換え、ICT(情報通信技術)等の先端技術を活用した「スマートメンテナンス」を実現することで、線路点検等の安全性・品質・生産性を向上させ、安全・安定輸送のさらなるレベルアップを図ると同時に、将来の労働人口減少を見据えた仕事のしくみづくりを進め、社員の働き方改革を推進するとしている。
JR東日本は2022年12月、新幹線の線路点検等における安全性・品質・生産性向上を目的とした線路モニタリング技術の開発が完了したことを受け、レール状態をモニタリングする「レールモニタリング車」、線路設備の状態をモニタリングする「線路設備モニタリング車」という2種類の専用保守用車を導入すると発表していた。レールモニタリング車は緑色を基調とした外観で、愛称は「SMART-Green(スマートグリーン)」に。線路設備モニタリング車は赤色を基調とした外観で、愛称は「SMART-Red(スマートレッド)」に決定した。
「スマートメンテナンス」を実現する手段として、2種類の新幹線モニタリング車により、高頻度で定期的な線路点検・検査を行う(新幹線モニタリング車による検測と取得データの処理はJR東日本グループの日本線路技術が担当)。「SMART-Green」「SMART-Red」は連結して運転することにより、少人数で線路の検測を行うことも可能。11月22日に行われた報道公開で、「SMART-Green」「SMART-Red」の連結シーンと走行シーンを見ることができた。
「SMART-Green」「SMART-Red」ともに全長18.4m。最大70km/hで測定できるほか、「38‰登坂性能あり」「38‰停車時、転動なし」「一定速走行機能(0~70km/h)」などの性能を備える。常用ブレーキは電気指令空気ブレーキ(直通)、留置・保安・貫通ブレーキも搭載。「SMART-Green」はすでに2023年6月から稼働しており、車体中央部の「超音波レール探傷装置」をはじめ、「レール頭頂面撮影装置」「レール凹凸測定装置」「レール断面摩耗測定装置」を床下に搭載。超音波でレール内部の傷を発見し、レール表面の凹凸や摩耗などのレール状態を総合的に把握できる。
「SMART-Red」については、2024年12月から1両が東北新幹線の東京~白石蔵王間で稼働開始する予定。主側(新青森方)の屋根上に搭載した「点群データ取得装置(MMS)」で建築限界の確認や軌道中心間隔の測定を行うほか、副側(東京方)の床下に「軌道材料モニタリング装置」「分岐器モニタリング装置(TCMS)」も搭載している。これら3種類の装置を線路点検・検査に活用し、線路設備の状態をモニタリングする。
「SMART-Red」の稼働開始に合わせ、2024年12月から「スマートメンテナンス」の業務システム「S-RAMos+」も導入。モニタリングした画像から修繕の必要な箇所を自動判定・提案する機能を有し、測定データの処理から技術者の確認・判断に至る「スマートメンテナンス」のプロセスをひとつのプラットフォーム上で実施できるという。
なお、「SMART-Red」は2025年度末までに計4両を導入し、東北新幹線の白石蔵王~新青森間、上越・北陸新幹線の大宮~新潟・上越妙高間でも2025年度中に「SMART-Red」の稼働を開始する予定。「SMART-Green」1両、「SMART-Red」4両の計5両でJR東日本の新幹線全線をモニタリングする。新幹線モニタリング車を用いた「スマートメンテナンス」について、他の鉄道会社への展開も検討するとのこと。