日本HPから、9月に発表されたIntelの最新プロセッサー「Intel Core Ultraプロセッサー シリーズ2(開発コードネーム:Lunar Lake)」を搭載した2in1 PC「HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PC」が発売されました。

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2024年モデルから同社のPCはブランド名を刷新し、個人向けには「OmniBook」の名称が用いられています。今回借用したHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCは従来モデルだと「HP Spectre x360 14」の後継ともいえるモデルです。

また搭載CPUの「Intel Core Ultraプロセッサー シリーズ2」は省電力性能(ワットパフォーマンス)に優れ、AI処理能力(NPU)の性能向上も図られるなど、従来のCPUと比べパフォーマンスがどのようになったのかは気になる人は多いのではないでしょうか。

今回は日本HPよりHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCをお借りし、実際に使い勝手やパフォーマンスをチェックしていきます。

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCの仕様や外観をチェック

まずはお借りした「HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PC」の仕様について確認していきます。HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCには今回お借りしたモデルを含む、以下3つの構成が用意されています。

  • スタンダードモデル:Core Ultra 5 226V・RAM 16GB・SSD 1TB・ペン付属なし
  • パフォーマンスモデル:Core Ultra 7 258V・RAM 32GB・SSD 1TB・ペン付属あり
  • スタンダードモデル:Core Ultra 9 288V・RAM 32GB・SSD 2TB・ペン付属あり

今回お借りしたのは真ん中となるパフォーマンスモデルです。CPU、メモリ、ストレージ容量以外の仕様はどのモデルでも共通です。

  • HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PC

  • ボディカラーはイクリプスグレー。金属感ある仕上げにメタリックのロゴの組み合わせで高級感があります

ディスプレイは約14インチ、2880×1800ピクセルと高解像度の有機ELで、色域もDCI-P3 100%カバーを謳い輝度も最大で400nitと明るく、タッチ操作や専用スタイラスでのペン操作に対応しています。リフレッシュレートは48Hzから最大120Hz、テュフ・ラインランドのEyesafe認証も取得しハードウェアレベルでブルーライトカットを行い長時間使用でも目が疲れづらくなっています。

外部接続端子は本体左側にUSB Type-C(最大10Gbps)と3.5mmのステレオイヤホン・マイクジャック、右側にThunderbolt 4(40Gbps)が2つ備わっています。また左右のUSB Type-C・Thunderbolt 4ポートは1つずつ、ヒンジ側の角に斜めに配置されているため、隣あったポートと物理的に干渉しづらくなっています。ワイヤレス機能はWi-Fi7、Bluetooth 5.4に対応しています。

ボディカラーは「イクリプスグレー」のみ。本体サイズは約313×216×14.9mm、重量は約1.34kgです。

キーボードは日本語配列で、明るさを二段階に調整できる白色バックライトも搭載しています。トラックパッドは物理的に押し込めるボタンではなく、感圧式・触覚フィードバックのあるハプティックトラックパッドです。

同梱されるACアダプタは出力が最大65W、出力端子はUSB Type-Cでケーブル部分は一体型です。

  • 左側面にはUSB Type-Cと3.5mmイヤホン・マイクジャック

  • 右側面にはThunderbolt 4ポートが2つ

  • 奥側のポートが斜めになっていることでポート同士の干渉を避ける作りです

  • 日本語配列のキーボードは窮屈なキーもありません

  • バックライトもあるため暗所でのタイピングも安心です

  • キーストロークは浅め

  • ボディは上下ともにかなり薄型ですが剛性感は高いと感じました

  • 2in1 PCなのでディスプレイは180度以上回転します

  • 専用のペンも本体に合わせたデザインです

  • ペンは充電式、USB Type-Cで充電を行います

  • ACアダプタは一般的なノートPC向けの形状をしています

  • 画面を360度回転させてタブレットスタイルで使うこともできます

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCの使用感をチェック

続いてHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCをチェックしていきます。仕様の通りHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCは2in1 PCとしては高性能で、PCの起動やアプリケーションの立ち上げも速く動作へのストレスはありません。

キーボードもキーピッチが約19mmと広く、ノートPCに多い「エンターキー周辺のキーが小さくなったり、無理矢理名配列になっている」ということもないため、テキスト入力も快適に行うことができます。

唯一気になる点があるとすれば本来「Deleteキー」のある場所に指紋認証センサーを兼ねる電源ボタンが配置されてるため、慣れるまではうっかり押してしまいスリープに入ってしまうことがありました。キー配置にどうしても慣れない場合は設定から、電源ボタン押下でスリープに入らないように変更するとよさそうです。

  • 指紋認証センサー一体型の電源ボタンの場所だけが本機のキーボードの唯一の難点かもしれません

ディスプレイは有機EL、それもDCI-P3 100%カバーを謳うだけあり発色はかなり良好です。解像度も2,880×1,800ピクセルと高く、高解像度の写真データを表示した際にキレイなことはもちろん、編集作業も行いやすいと感じました。

ただ、100%表示だと文字が小さすぎて読みづらいと感じるかもしれません。デフォルトの200%表示では実質1440×900ピクセルと一般的なノートPCに多い「1920×1080ピクセル」よりも表示域が狭くなってしまうため、用途に応じ表示倍率を変更して使うといいでしょう。

  • 解像度、発色、どちらも優秀なディスプレイ。有機ELなのでバックライトのムラもなくキレイです

「Intel Core Ultraプロセッサー シリーズ2」を搭載したことでCopilot+ PCの要件を満たしているHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCですが、AI機能についてはまだ未知数だと感じました。 Windows自身の機能である「Recall(リコール)」の正式提供もまだ始まっていないため今回試すことはできず、HPがオリジナル機能として搭載している「HP AI Companion」についてもまだベータ版の提供です。

ただ、Copilot+ PCというブランドまで用意し積極的にAI機能の展開をMicrosoftも宣言している以上、Windows 11の月次アップデートや年次アップデートにより、今後AI機能がどんどん身近になっていく可能性は高いため、これからPCを買うのであればCopilot+ PCの要件を満たしたモデルを買った方が長く便利に利用できることは間違いありません。

  • HPオリジナルのAI機能も含め、AI機能はまだ本領発揮とはいかないようです

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCに搭載された「Intel Core Ultraプロセッサー シリーズ2」の強みはAIだけではありません。省電力性能に優れ従来モデルよりも長時間のバッテリー稼働が可能になっています。

そこでベンチマークソフト「PCMark10」のバッテリーベンチマークを実行しましたが、一般的なオフィスソフトやブラウジング利用が中心の「Modern Office」では驚愕の15時間半というバッテリー稼動時間を記録しました。

実際の利用では軽い用途といっても「複数のタブを開いてブラウジングを行う」「常駐ソフトも色々動かす」など、よりバッテリーを消費する環境になっていくためもう少し稼動時間は短くなるとは思いますが、それでも従来のノートPCよりもバッテリー稼働時間は長いと考えてよさそうです。

  • ベンチマークでは驚異の約15時間半というバッテリー稼働時間を記録しました

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCのパフォーマンスをチェック

続いてベンチマークソフトを使用しHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCのパフォーマンスをチェックしていきます。なお比較用に参考値として筆者が現在している富士通クライアントコンピューティング製のノートPC「FMV LIFEBOOK UH(WU2/H1)」でも同様のテストを行い掲載しています。

比較対象のFMV LIFEBOOK UH(WU2/H1)は2023年1月に発表・発売になったモデルで、CPUにIntelの第13世代Coreプロセッサ「Core i7-1360P」、メインメモリ容量は32GBの構成です。CPUの純粋な処理能力をチェックするCINEBENCH R23では、HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCがシングルコア性能でFMV LIFEBOOK UHを上回るものの、マルチコアでは僅差で負ける結果になりました。

「最新CPUなのに旧モデルに負けてしまうのはなぜ」と感じるところですが、FMV LIFEBOOK UHに搭載されている「Core i7-1360P」のコア数は12コアと、HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCに搭載されているCore Ultra 7 258Vの8コアよりも多いことが理由として推測されます。

が、実際にすべてのCPUコアを使い切るシーンは日常利用ではほぼありませんし、シングルコアではHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCのCore Ultra 7 258Vの方が高いスコアを示しているため、大半の実使用シーンでの快適さではこちらの方が上かもしれません。

  • CINEBENCH R23

続いてのテストはPCの総合評価を行うPCMark10の実行結果です。ブラウジングやオフィスソフトの利用、画像編集や3Dゲームを実行するテストですが、こちらはHP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCがFMV LIFEBOOK UHよりも良好なテスト結果となりました。

先のCPUのテスト結果にも書いたように「すべてのCPUコアを使い切ること」は日常使いでは稀なので、普通に使う中であれば「CPUコア1つあたりの性能が高い」方が快適であることを裏付ける結果といえます。

  • PCMark10

また3Dゲーム性能については「3DMark」と「FF14ベンチマーク」を実行し、性能をチェックしました。HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCに搭載されるCore Ultra 7 258Vに内蔵されるGPUは、デスクトップ向けに設計された「Intel Arc」をベースとしたGPUに改められています。

そのため従来よりもゲーム性能が向上していると言われており、ベンチマークテスト結果でも性能向上を確認することができました。実際どこまでゲームが遊べるかですが、比較的軽量なゲームであってもノートPCの内蔵GPUでは動作が厳しい場面が多かったところ、HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCであればフルHD解像度までなら十分に遊ぶことができそうです。

  • 3DMark

  • FF14

さらに実際のゲームで、それもノートPCの内蔵GPUでは難しいと言われる重量級のゲームも試してみました。Cyberpunk 2077では画質設定から「レイトレーシングを無効」「解像度もフルHD」とかなり落とすことで平均fpsは42.77、最低fpsも33.60と、なんとか遊べるフレームレートを出せるくらいの性能はあるようです。

  • Cyberpunk 2077

グラフィックのキレイさは失われますが、どうしても外でも遊びたい、ゲーミングPCを用意できない場合でも「遊べなくはない」というのは大きな進化といえるでしょう。

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCは満足度の高い1台

HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCですが、モバイルノートPCだからと今まで諦めていた重たい作業も十分にこなせるパワーも、1日中外で使えるだけのスタミナも、そして2in1 PCとしてノートPCだけでなくタブレットとしても利用できるなど、万能型の1台に仕上がっています。

  • HP OmniBook Ultra Flip 14 AI PCは満足度の高い1台

また本体の質感や剛性も高く、キーボードの打ち心地やトラックパッドの使い心地も良好です。性能やスタミナとあわせ、どこでもストレスなく作業を行える1台としてはかなり優秀な相棒になることは間違いないでしょう。

もし弱点を挙げるとすれば、外部接続端子がUSB Type-Cのみになること、そして価格です。映像出力やレガシーな周辺機器との接続に変換アダプタが必要になるため、用途によっては荷物が増えてしまう点は惜しいといえます。

また価格についても標準モデルで約25万円からと決して安価ではないため、購入には少しばかりの勇気が必要かもしれません。ただ、そうした弱点を覆せるほどには使用感の満足度は高く、まだ未知数なAI機能へ期待も含め、これから購入し長く使えるモバイルノートPCとしてオススメしたい1台であることは間違いありません。