リンナイは11月20日、医師・お風呂ドクター 早坂信哉氏監修による「冷え・ヒートショックに関する意識調査」の結果を発表した。調査は2024年10月19日~10月22日、自宅に浴槽があり、冬場に週1回以上湯船に浸かる20~60代の男女2,350名を対象にインターネットで行われた。

  • 冷え・ヒートショックに関する意識調査

冬の身体の不調1位は「冷え」女性6割、若い男性ほど冷え性を自覚?

冬の時期に多い身体の不調を聞いたところ、最も多い回答は「冷え(46%)」、続いて「肩こり(24%)」だった。「冷え」に悩む割合を男女別で見ると、男性3割、女性6割だった。地域別では、山梨(64%)が最も多く、続いて滋賀(62%)、そして福井、長野、岐阜、長崎(56%)が同率3位だった。また、冷え性の自覚について、「とてもそう思う」「ややそう思う」の割合が、男性については若い世代ほど高まる傾向だった。

  • 冬の時期に多い身体の不調

冷えを感じる時間帯は「就寝前」、冷えで眠れない人も

冷えに悩む人に、1日の中で冷えを感じる時間帯を聞いた。その結果、最も多い回答は「就寝前(60%)」、続いて「起床時(51%)」だった。また、冷えによりつらいと感じる症状を聞くと、最も多い回答は「眠れない(43%)」だった。

  • 1日の中で冷えを感じる時間帯/冷えによりつらいと感じる症状

冷え対策の方法「温かい食べもの」が5割超

冷えに悩む人にその対策方法を聞いた。その結果、最も多い回答は「お鍋やスープなど温かいものを食べる(54%)」、続いて「靴下をはいて寝る(39%)」、「入浴時、いつもより長くお風呂に浸かる(37%)」だった。また、その対策方法に関する悩みを聞いたところ、「効果が一時的である(52%)」が最も多い回答となった。

  • 冷えの対策

早坂氏によると、お鍋やスープなど温かい食事は、冷えに対して一定の効果が期待できるという。靴下をはいて寝るのは、足からの体温の放散を妨げることがあり、逆効果になることもあるため、ふとんに入ったら脱ぐよう勧めている。また、長風呂はのぼせのリスクが高まる。熱すぎる湯での入浴は湯上りの発汗が多くなり、身体の温かさが長続きしないという。

寒い脱衣所、6割が冷えを実感

身体の冷えと合わせて気にしたい冬の「ヒートショック」。自宅で冷えが気になる場所について聞いた。その結果、最も多い回答は「脱衣所・洗面室(56%)」、続いて「トイレ(38%)」、「浴室(34%)」となった。

また、「ヒートショック」について、「よく知っている(16%)」「ある程度知っている(49%)」の回答を合わせて7割が認知していた。地域別では、福島(78%)、栃木・長野(76%)、山梨(74%)の認知度が高い結果となった。

  • 自宅で冷えが気になる場所/ヒートショックの認知度

「ヒートショック」とは、特にリビングから脱衣室への移動などで起こる急な気温の変化によって交感神経が刺激されて血圧が乱高下し、その結果、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾病が起こることを言う。最近、メディアで取り上げられることも多くなり、認知度が上がってきた。特に、福島、栃木、長野など比較的寒い地域での認知度が高いことが分かったが、逆に香川、福岡など比較的温かい地域での認知度はまだ低いようだ。

冷えた身体を温めようと、高温で長時間の入浴をすると身体に負担をかけることに。温度差の大きい日本の住宅事情を考えると、冬は全国でヒートショックの可能性があるという。

お風呂ドクター監修、ヒートショック診断テスト

お風呂ドクターの早坂氏が、ヒートショック診断テストを作成した。5個以上のチェックで「ヒートショック予備軍」となる。

  • ヒートショック診断テスト

ヒートショック予備、1位は新潟・岐阜

調査対象者へのテストの結果、5個以上チェックした「ヒートショック予備軍」は、全体の41%を占めた。地域別では、新潟・岐阜(56%)が同率で最も多く、続いて福島(54%)、愛知(52%)だった。一方で、予備軍の割合が最も少ないのは滋賀(28%)だった。また、年代別では20代の半数が予備軍に。

  • 「ヒートショック予備軍」調査結果

若い世代も油断大敵「山型・谷型ヒートショック」

ヒートショックと聞くと高齢者の話と思うかもしれないが、早坂氏によれば、実は、若い人も注意が必要だという。今回の調査では、若い人ほど、身体に負担のかかる入浴をしていることが分かった。入浴前後の血圧の推移から、一般的なヒートショックと、若い人も注意すべきヒートショックを紹介する。

高齢者が危ない「山型ヒートショック」

脱衣所や浴室など、寒い場所で収縮した血管により血圧が上昇した後、42℃以上の熱い湯に浸かると今度は熱さによってさらに血管が収縮して血圧が上昇する。その後、身体が温度に慣れてくると血管が拡がり急に血圧が下がるが、この血圧の乱高下で起きる。一般的に「ヒートショック」と言われているのはこのタイプで、血管が老化している高齢者は、血管が破けて脳出血や、血管が詰まって心筋梗塞を起こす可能性がある。生活習慣病などで動脈硬化が進んでいる場合は、若い人も油断できないという。

若い人も気を付けたい「谷型ヒートショック」

湯船から立ち上がった際、温熱効果による血管拡張や、水圧による締め付けから血管が解放され、一気に血管が拡がり血圧が下がることで起きる。脳に血液が回らなくなり、立ちくらみや、最悪の場合意識を失ってしまい、転倒やおぼれてしまう恐れがある。血圧が低い人は特に注意する必要がある。湯船から出る際は、ゆっくり立ち上がるなど血圧の急降下を防ぐことができる。

  • 血圧の推移(イメージ)

毎日湯船に浸かる「お風呂好き県」は愛知県

冬の時期の入浴頻度を聞いた。その結果、「毎日(58%)」が最も多く、地域別では、多い順に愛知(72%)、続いて島根(70%)だった。湯船につかる理由は、「リラックス・ストレス緩和のため(57%)」が最も多く、続いて「身体の冷えをとるため(43%)」だった。

  • 冬の時期の入浴頻度

山梨は熱風呂・長風呂好き?

冬の時期の入浴方法を聞いた。その結果、入浴温度は40℃(29%)、入浴時間は10分~14分(31%)が最も多い回答となった。平均値はそれぞれ40.9℃、15.3分だった。地域別の平均値を比較すると、入浴温度は宮城が最も高い41.4℃、入浴時間は山梨が最も長い20.3分だった。

  • 冬の時期の入浴方法

「風呂キャンセル」3割が経験あり

入浴せずに寝てしまう、いわゆる「風呂キャンセル」の経験について聞いた。その結果、3割が「よくある(8%)」「たまにある(22%)」と回答した。

その理由について、男性は「お風呂に入るのが面倒だから(43%)」、女性は「疲れてお風呂に入る元気がないから(53%)」が最も多い回答だった。「疲れてお風呂に入る元気がないから(男性38%、女性53%)」の回答は男女に差がみられた。

  • 風呂キャンセルの経験

お風呂は単に汚れを落とすだけでなく、身体の疲れを取る効果や、心理面でのストレス改善効果も期待でき、特に入浴中に腹式深呼吸に集中すること(マインドフロネス)を行うとリラックスできる。「心身が疲れた時こそ入浴をお勧めします」と早坂氏は言う。入浴する気力が起きないことが続く場合は、メンタルクリニックの受診が推奨される。

20代の「ながら」入浴に警戒

入浴中の過ごし方について聞いた。その結果、最も多い回答は「何もしない(53%)」、続いて「スマートフォンやタブレットを使用する(13%)」だった。

「スマートフォンやタブレットを使用する」の回答者を年代別で見ると、若い世代ほど高い結果に。平均入浴時間を比較すると、使用者は25.0分、非使用者は13.8分だった。

  • 入浴中の過ごし方

早坂氏によると、入浴中は何もせず、ぼんやりすることが脳の疲労を取るためには重要だという。半数以上の人が、入浴中は「何もしない」と回答しているが、20代を中心にスマホを持ち込む人が多く、その使用者は平均入浴時間が25.0分と10分以上も長くなっている。動画を見たりSNSに没頭したりして、あっという間に時間が過ぎてしまうのかもしれない。動画を見たりSNSに没頭したりして、あっという間に時間がなる。「スマホを持ち込む場合はタイマーをセットして、入浴時間を長くて15分までにとどめる工夫をするとよいでしょう」と、早坂氏はアドバイスしている。

温度と時間で分かる4つの入浴タイプ

今回の調査では、冷え対策としての入浴に悩む声が聞かれた。湯船の温度と入浴時間を軸に入浴タイプを4つに分類し、早坂氏が解説する。

  • あなたは、入浴する際に、悩みを感じることがありますか

医師おすすめ「コスパタイプ」

ヒートショックやのぼせるリスクの少ない、安全で健康的な入浴タイプ。湯温が低めのため、光熱費も抑えられる。適切な湯船の温度や入浴時間が分からない人は、40℃10分を目安にすることができる。少しぬるく感じる温度かもしれないが、体温が0.5から1℃ぐらい上がり、お風呂上がりの身体の温かさも持続するという。

のんびり長風呂「マイペースタイプ」

ヒートショックのリスクは低いが、のぼせる危険が高い入浴タイプ。長風呂をしたい場合は、湯船の温度を下げたり、お湯の量を減らしたりして、のぼせないように注意できる。

サクッと熱風呂「熱血タイプ」

血圧があがるためヒートショックのリスクが高く、注意が必要な入浴タイプ。しかし、使い方次第では日中のパフォーマンス向上が期待できる。若い人にしかおすすめできないが、低血圧で朝が苦手であれば、起床後に水分を摂ってから熱いお風呂に短時間入浴することもできる。

入浴事故の危険「ストイックタイプ」

ヒートショックや熱中症のリスクが高く危険な入浴タイプ。熱い湯に長時間浸からないと身体が温まらないと思いがちだが、体温を下げようとする身体の機能の働きにより、かえって湯冷めしやすくなるという。「どうしても続ける場合は、休憩をはさむか、半身浴にしましょう」と早坂氏は勧めている。

  • 入浴タイプ診断結果

入浴タイプ別 冷え性、ヒートショック予備軍の割合

入浴タイプ別に、冷え性とヒートショック予備軍の割合を比較した。その結果、ストイックタイプは、冷え性が半数以上(「とてもそう思う(25%)」「ややそう思う(31%)」の合計56%)、ヒートショック予備軍についても半数以上(52%)を占めた。

  • 入浴タイプ別、冷え性の割合/ヒートショック予備軍の割合

医師監修、安全で健康的な入浴方法

冬は冷え対策として湯船に入りたくなる季節だが、ヒートショックなど入浴中の事故に注意が必要となる。そこで、安全で健康的な入浴方法を早坂氏に聞いた。

お風呂は40℃10分のコスパタイプ

40℃10分の「コスパタイプ」なら、ヒートショックの予防が期待できるだけでなく、光熱費を抑えることにもなる。安全面、健康面、費用面からもおすすめだという。

冷え対策にも入浴

女性の6割が悩んでいる冷え対策には、直接、身体を温められる入浴が有効な手段。しかし、温かさが長続きしない高温の湯船に入っている人も多く、正しい入浴ができていないことも。低温短時間40℃10分の入浴は冷えにも効果が期待できる。さらに、手足の血流改善により、良い睡眠にもつながるという。

ながら入浴のZ世代、谷型ヒートショックに注意

今回の調査では、若い人でスマホを持ち込んで入浴する人が多く、スマホを使うことで圧倒的な長風呂になっていた。長風呂は熱中症である「のぼせ」を引き起こし、脱水や血管拡張を招くので、湯船から立ち上がるときに「谷型ヒートショック」を引き起こす。立ち眩みとなって転倒し、大けがをしてしまう可能性も。若い人も、長風呂による立ち眩みに注意する必要がある。

STOP!風呂キャンセル界隈

「風呂キャンセル界隈」と言われるキーワードがSNSをにぎわしているが、入浴は単に身体の汚れを落とすだけではなく、疲れやストレスも取り除いてくれる健康活動。お風呂に入ることで、疲れの連鎖を断ち切ることができる。