JR東海では2024年9月27日から2025年3月31日まで「もれなく富士山キャンペーン」を実施している。秋~冬の富士山を贅沢に楽しめる旅行プランを取り揃えているのが特徴だ。関係者は「紅葉が美しく景色を彩る秋から、富士山がひときわ輝く冬にかけての実施となります。富士山を眺めながらレジャー、グルメ、温泉などを堪能してもらえたら」とアピールする。筆者も、いくつかの観光プランに参加してみた。
「もれなく富士山キャンペーン」とは?
「もれなく富士山キャンペーン」では、富士山とセットで楽しめる観光プランを展開。富士山×レジャー・体験、富士山×グルメ・お酒、富士山×サウナ・温泉、富士山×観光施設・名所など、50以上の多岐にわたるプランを用意している。
焼津で「かつおの藁焼き」
まずは焼津で「かつおの藁焼きたたき作り」を体験した。そもそも焼津港は、かつおの水揚げ量で全国1位を誇る漁港。かつおと燻製の専門店 川直では、焼津港で水揚げされた厳選かつおを大量の藁を使って炙り、その場で試食できるのが嬉しい。この体験プランは所要時間約60分~90分で、料金は大人ひとり2,300円~2,800円。
かつおの解体ショーも見学した。普段はかつおを複数人で分担して捌いており、そのため数種類の包丁を使い分けているという。頭と内臓を取り除き、背びれを取り、腹骨と血合い骨を切り取り、見る間に三枚におろしていく6代目。その手際の良さに、参加者たちもくぎ付けになる。
「ときは江戸時代。海路から鷹狩りに出る徳川家康を護衛したのが焼津の漁船でした。そこで、焼津では八丁櫓と呼ばれる漕ぎ手がたくさん乗れる速い船を手にできた。この八丁櫓はカツオ漁にも最適でした。かつおの藁焼き自体は、高知で生まれた郷土料理です。土佐でかつおの生食により食中毒が発生しました。お国は生食禁止令を出しますが、漁師さんたちはどうしても生で食べたかった。だから表面だけ藁で焼いた(中は生のまま)のものを『焼き魚です』とごまかして食べたんだそう。これが後に、かつおの藁焼きになります」(山口さん)
実際に、かつおの藁焼きも体験した。これが想像を超える火力の強さ!! 思わず「かつおが焦げて消し炭になってしまうのではないか……」と要らぬ心配をしてしまう。
適度に焼き目をつけたかつおを、再び6代目が手際の良い包丁さばきで刺身にしてくれた。その場で試食。鮮度の良さから身がプリプリと引き締まっており、弾力もある。最高に旨い。添えてあるピンク色の岩塩を少しつけて、たまねぎと一緒にいただくのも非常に美味だった。
なお体験プランでは、この後、近場の富士山ビュースポットである親水広場「ふぃっしゅーな焼津」に案内。心地よい潮風に吹かれながら、かつおを楽しむこともできる。
浅間神社で「美の願い体験」
全国有数のパワースポットである富士山本宮浅間神社にて"美"を祈願できるプランも用意されている。同神社の御祭神であるコノハナサクヤヒメは、日本神話で最も美しいとされる女神。桜が咲き誇るような美しさを持つ美の女神にあやかり、体験者の美しくなりたい思いを天に届ける。料金は大人ひとり1,800円。
体験に先立ち、まずは富士宮駅前観光案内所(JR富士宮駅北口 観光協会内)にて、願い用紙、重ね御朱印台紙、御朱印ケース、体験の手引書を受け取る必要がある。願い用紙には「どのように美しくなりたいか」を書き込むスペースがあるので、ペンを使って思いを記入する。顔や身体など外観の美しさでも、心など内面の美しさでも、あるいは「美しい生き方をしたい」などでも良い。書けたら、富士宮市内に7か所ある「湧き水スポット」(それぞれ良縁、上昇、実り、誕生、浄化、成功、輝きの言われがある)のいずれかで願い用紙を水に浸す。すると女神からのメッセージが浮かび上がる、という流れになっている。ちなみに、美しくなった先に願っていること(良縁、上昇、実りなど)を考えて「湧き水スポット」を選ぶと良いという。
最後、富士山本宮浅間大社にお参りすると、ツアーオリジナルの御朱印をもらえる(初穂料は500円)。御朱印ケースには願い用紙を貼るスペースもあるので、一緒に持ち帰ろう。
400年の禁足地に立ち入る!!
今回の「もれなく富士山キャンペーン」では、目玉企画とも言えるプランが用意された。徳川家康公を祀る久能山東照宮の境内に、実は400年の歴史で1度も一般公開されてこなかった禁足地『鎮守の杜』がある。位の高い神職以外は足を踏み入れることが出来なかったこの神聖な場所を、EX会員に向けて3日間限定で特別公開するというのだ。所要時間は約180分、料金は大人ひとり7,000円、開催日時は2024年12月14日、2025年1月25日、3月2日の13時~16時(※原稿執筆時点で完売となった)。
権禰宜(ごんねぎ)の齋藤曜さんに話を聞いた。なんでも、久能山東照宮、富士山頂、日光東照宮は一直線上にあるんだとか。飛行機もGPSもない時代、昔の人は一体どうやってこんな正確な位置を把握できたのだろう...。
ツアー前半には、静岡県内で唯一の国宝建造物に指定されている拝殿を見学した。ここでは精神修養(心のお清め)を体験できるという。神職によくお祓いをしてもらったあと「人の一生は重荷を負て遠き道を行くが如し」で始まる、東照公 御遺訓を参加者全員で唱和。そして神棚に向かって二礼二拍手一礼した。齋藤さんには、久能山東照宮の歴史、社殿の見どころ、その修復方法について、また家康公と江戸時代についてなど、いくつもの興味深い話をうかがうことができた。
「わたしは作家 井上靖が好きなんですが、彼の作品にはよく富士山の描写が出てきます。彼が静岡県内の文化財を網羅する図録にあてた寄稿文には、こんな一節がありました。子どもの頃から富士山を見て育ってきた静岡県民、山梨県民は、みな各々、心の富士を持っていると。家康公も、そうだったのではないでしょうか。幼少期に駿府城で人質となり、青年期にも武田・北条と敵対するため駿府城に構えておりました。征夷大将軍を退いて隠居生活の地に選んだのも駿府です。おそらく心の中には常に富士山があったはず。ひいては久能山を通じて富士の山と一緒になり、天下泰平の世を守り続けたい、そんなことを考えていたのではないかと思うんです」(齋藤さん)
ツアー後半は、いよいよ禁足地『鎮守の杜』へ。断崖絶壁のけもの道を20分ほど登るという。はじめの5分で汗だくになる中年筆者。途中、齋藤さんには久能山の歴史、けもの道で見られる植生、久能城の史跡などを解説いただいた。ようやく山頂にある、小さな古社(末社愛宕神社)に到着。
さて古社の扉を開ければ、この裏手にそびえる富士山の絶景が拝めるというが―――。悩ましいことに、古社は大きくえぐれた岩盤の上に建っている状態。いつ崩落してもおかしくないんだとか。安全を最優先して、遥拝(遠くから拝む)してから下山となった。
超絶景の窓側席でカフェタイム
日本平ホテルの別棟にあるカフェレストラン「ガーデンラウンジ」では、ケーキセットプランも用意している。富士山、駿河湾、静岡市街を臨むことのできる"超絶景"の窓側2名席で、ケーキ1つ、ドリンク1杯がついてくる。料金は大人ひとり1,200円。
無人島リゾートは全室オーシャンビュー
「もれなく富士山キャンペーン」には、いくつかの宿泊プランも用意している。そのひとつが、海に囲まれた無人島のリゾート「淡島ホテル」に宿泊できるプラン。全室オーシャンビューの絶景と、静岡の海の幸・山の幸を堪能できるフレンチ&日本料理が用意されている。淡島桟橋からホテルまで、無料の送迎船が利用可能。料金は2名1室1泊で大人ひとりあたり26,950円~37,950円。
「もれなく富士山キャンペーン」は、スマートフォンのEXアプリからアクセスできる。ブラウザから「もれなく富士山」のキーワード検索でヒットするJR東海の公式ホームページからもアクセスできる。
取材協力: JR東海