関西旅というと京都や大阪、神戸が注目されがちだが、オーバーツーリズムのいまだからこそ目を向けたいのが奈良だ。近隣府県に比べ宿泊施設が少なかった奈良だが、近年外資も含め素敵な宿泊施設が続々オープンしており、混雑を避けた心静かなステイが叶う。今回奈良市のホテルを巡ってきたので、おすすめをピックアップして紹介したい。

  • caption

    「ノボテル奈良」

1909年創業、皇族や国賓にも愛されてきた「奈良ホテル」

  • caption

    1909年創業、皇族や国賓にも愛されてきた「奈良ホテル」

奈良の憧れホテルと言えば1909年に創業し、「関西の迎賓館」として国賓や皇族にも愛されてきた「奈良ホテル」だろう。本館の建築は、東京駅や日本銀行本店を手掛けたことでも知られる辰野金吾氏によるもの。西洋建築のイメージがある辰野氏だが「奈良ホテル」は、大和の街並みとの親和性を重んじ、外観は和風な瓦葺き建築だ。

  • caption

しかし、中に入ると春日大社の釣り灯篭をモチーフにしたシャンデリアや、ビロードの大階段などが現れ、桃山風の豪奢・華麗な意匠が感じられる和洋折衷な内装となっている。

  • caption

「奈良ホテル」の歴史は日本の近現代の歴史と言っても過言ではないほど、歴史を動かしたさまざまな人物が来館している。

  • caption

例えばティーラウンジにはアインシュタインが弾いたピアノが鎮座していたり、ラストエンペラーとして知られる満州国皇帝の溥儀が使ったグラスがディスプレイされていたり、オードリー・ヘップバーンが宿泊した客室があったりと、枚挙にいとまがない。

  • caption

クラシックホテルならではのサービスを感じたいなら、ぜひともダイニング体験を。メインダイニングルーム「三笠」は、ビジター利用も可能となっている。今回いただいたのはディナーの「春日コース」(1万7,000円)。カボスが香るサーモンのムニエルいくらのせや、国産牛フィレ肉のグリエ、茸と栗のソテーなど、大和野菜や日本の食材を生かしたクラシカルなフランス料理がいただける。

  • caption

食事に合わせるワインはフランスをはじめ、アメリカやオーストラリアなど新世界の名ワインや、日本ワインなどボトルも含めると約300種類揃う。訪れた日のシャンパーニュは「ストラディバリウス・ブリュット」、赤ワインはオーストラリアのプレミアムワインの生産地であるマーガレットリバー「ルーウィン・エステート」の「アートシリーズ シラーズ」など、セレクトにも「奈良ホテル」の格式高さを感じた。

  • caption

しかも銀器は100年以上前に長崎ホテルから受け継いだビンテージというから驚き。博物館級の代物にじかに触れられる貴重な体験であった。明治・大正時代の貴族の社交場にタイムスリップしたかのような、重厚華麗なダイニングの雰囲気も魅力的だ。

CMでも話題の絶景ホテル「ANDO HOTEL 奈良若草山」

  • caption

    CMでも話題の絶景ホテル「ANDO HOTEL 奈良若草山」

俳優の鈴木亮平さんが出演したJR東海のCM「いざいざ奈良」にも登場し、話題となったのが2020年オープンの「ANDO HOTEL 奈良若草山」だ。

  • caption

56年続いた旅館「遊景の宿 平城」を受け継ぎ、2020年にリノベーションしてオープンした。

  • caption

その名の通り若草山の中腹に位置するホテルで、ロビーやレストラン、客室からは東大寺の大仏殿や興福寺五重塔、「星のや」開業が予定されている旧奈良監獄などが見渡せる。

  • caption

CMの撮影でも使われた露天風呂があるのは「ペントハウススイート」の客室。近鉄奈良駅から車で約10分の距離でありながら、周囲には世界遺産にも登録された春日山原始林など豊かな自然が広がり、リフレッシュにも打ってつけのロケーションだ。

奈良の伝統とモダンを融合させたデザインが特徴の「セトレならまち」

  • caption

    奈良の伝統とモダンを融合させたデザインが特徴の「セトレならまち」

近鉄奈良駅から徒歩7分、奈良の繁華街や興福寺からも至近と観光にも便利な場所に、2018年にオープンしたのが「セトレならまち」だ。

  • caption

非日常ではなく、良い日常をコンセプトにした同ホテル。奈良の伝統的な町並みに溶け込むよう吉野の杉やヒノキ、月ヶ瀬の土などを用いつつ、現代的なインテリアを融合させた匠の技が光るデザインが印象的だ。

  • caption

客室は奈良の町家に設けられているという坪庭を設けた「まちやルーム」など、奈良の歴史や文化に根付いた造りをしている。

  • caption

さらにオーガニック農法で食物を育てる「ビオガーデン」もあり、奈良の中心部にいながら、自然と調和した心静かな時間が過ごせるのもこのホテルならでは。

  • caption

マイスタールームも設けられた宿泊者専用ラウンジ、ライブラリー&レコードルーム、ルーフトップの星宙テラスなど施設が充実しているため、ここを訪れることも旅の目的にしたくなる。

  • caption

酒三昧が叶う! 酒蔵を受け継いだ「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」

  • caption

    酒三昧が叶う! 酒蔵を受け継いだ「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」

「セトレならまち」と同じく奈良の歴史地区であるならまちに位置するのが、2018年オープンの「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」だ。

  • caption

明治創業の奈良豊澤酒造の元酒蔵を当時の趣を残しながら修繕したホテルで、滞在を通して奈良豊澤酒造の歴史・奈良の歴史に触れられる。

  • caption

全8つの客室は、蔵や茶室などを修復しており、酒を保管していた蔵に泊まれるという貴重な体験が叶う。しかも客室の冷蔵庫に入っているお酒は全て宿泊費に含まれているという、酒好きにはたまらないホテルだ。

  • caption

土間を修復した「レストラン ルアン」では、奈良の食材を生かした酒ホテルならではの美食が味わえる。

2024年9月オープンの外資系シティホテル「ノボテル奈良」

  • caption

    2024年9月オープンの外資系シティホテル「ノボテル奈良」

奈良といえばこれまで、ミドルクラスの外資系シティホテルが皆無だったが、ついに待望のオープンを遂げた。それが2024年9月にオープンした、世界的ホテルチェーンであるアコーグループが展開する「ノボテル奈良」だ。

  • caption

エントランスに足を踏み入れると、青々と輝くソーシャルラウンジとバーが広がり、高揚感に包まれる。レストランやレセプションも、スタイリッシュで洗練されたデザインだ。

  • caption

館内にはフィットネス施設やキッズルームに加え、リラクゼーションスペースや大浴場まで備える充実ぶりだ。

  • caption

特に素晴らしいのがルーフトップテラスからの眺め。景観条例の関係で高層ビルが建てられない奈良市内において、条件下で随一の高さを誇るため、天平色に輝く朝日や夕焼け、キラキラと輝く奈良の夜景を一望できる。

  • caption

全264室ある客室はスタンダードタイプでも24平米あり、使い勝手の良い造りだ。8〜9階はクラブフロアとなっており、クラブフロア専用ラウンジも用意されている。

実質負担2,000円?! ふるさと納税返礼品で叶える奈良の旅

  • caption

    「ANDO HOTEL 奈良若草山」

今回ご紹介した宿泊施設はすべて、奈良市のふるさと納税返礼品の対象となっている。つまり実質負担2,000円(※所得に応じて寄付金額の限度額は異なる)で、これらのホテルに泊まることも人によっては可能というわけだ。宿泊費の高騰が続く今、ふるさと納税で節税しながら賢く旅を楽しむのもいいだろう。

取材協力: 奈良市