投資初心者が最初の一歩を踏み出すのに向いていると言われる「投資信託」。運用をプロに任せられるほか、少額から始められるのも大きなメリットです。では、投資信託はいくらから始められるのでしょうか。今回は、投資信託の基本的な仕組みや投資できる最小の金額、投資金額を決める時のポイントや実際に始める際の注意点などをご紹介します。

■投資信託の基本的な仕組み

投資信託とは

投資信託とは、投資家から集めたお金を一つの資金としてまとめ、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが投資・運用する金融商品です。ファンドマネージャーは国内外の株式や債券などに分散投資を行い、利益が出るよう資産を運用します。運用の結果得られた利益は、投資した金額に応じて投資家に分配される仕組みです。

通常、投資を行うには自分で投資先を選び、市場の値動きを注視して売買のタイミングを見極めなければなりません。また、投資するにもまとまった金額を必要とすることが多くなります。そのため、投資に興味はあっても、初心者にとっては始めるハードルが高く感じるかもしれません。

一方、投資信託はファンドマネージャーに運用を任せられ、金額も株式投資などと比べて少額から始められます。積立型の投資信託の場合、毎月自動的にコツコツ積み立てられ、手間がかからないのもメリットです。

投資信託の値段は「基準価額」

投資信託の値段は、「基準価額」と呼ばれています。また、取引を行う際の単位を「口(くち)」と言い、1口あたりまたは1万口あたりの値段を基準価額と言います。一般的には、1万口あたりの基準価額が公表されています。

また、投資信託の総資産額から運用コストなど負債を差し引いた金額を「純資産総額」と言います。純資産総額は、「基準価額×総口数」でも求められます。純資産総額が大きい投資信託は、投資家から預かっている資金が大きいため、純資産総額が小さい投資信託と比べて安心感や信頼につながりやすい面があります。

純資産総額を投資信託の総口数で割ると、基準価額が算出できます。基準価額はあくまで取引の際に必要な価格であり、他の投資信託と比較しても、運用成績の優劣の判断にはならないことを理解しましょう。

■投資信託で投資できる最小の金額はいくら?

投資信託の最低限の金額

では、投資信託はいくらから始められるのでしょうか。投資信託は各金融機関で最低限の金額が決まっており、一律にいくらからとは定められていません。一般的には最低1万円程度ですが、積立型の商品の場合、1000円や100円といった少額から始められる金融機関も多くなってきました。また、最近ではポイントを利用して投資できる投資サービスも広まっています。

もちろん、1000円や100円より、1万円やそれ以上のまとまった金額で投資できたほうが投資効果は大きくなります。しかし、特に初心者の場合は無理せずお小遣い程度の金額から始め、慣れてきたところで徐々に金額を上げると安心してスタートできるでしょう。

いくらから投資信託を始められるかは、各証券会社や銀行などのホームページ、商品のリーフレットなどに載っています。積立型の投資信託の場合、「毎月100円から1円単位」のように、何円単位での購入が可能なのかという点も記載があります。「申し込み単位」「最低申し込み単位」などを確認しましょう。

また、同じ金融機関でもサービスごとに最低限の金額や申し込み単位が違う場合がありますので、そちらも確認が必要です。

投資信託の買い方は2通り

投資信託の買い方には、一度のタイミングでまとまった金額を購入する「一括投資」と、定期的に一定額を購入する「積立投資」の2通りがあります。

それぞれにメリット・デメリットがあり、一括投資の場合、短期間で大きなリターンが狙える一方、投資のタイミングが運用成果を左右するという面があります。積立投資の場合、投資するタイミングを分散させることで、運用成果がタイミングに左右されにくい一方、短期間で大きなリターンを得るのは難しいというデメリットがあります。

リスクを許容しながら、「まとまった資金をもとに、短期間で大きなリターンを狙いたい」という人は、一括投資が向いていると言えます。反対に、「一度に大きな資金を投資するのは難しい」「長い期間をかけて、安定的に運用したい」という人は積立投資が向いているでしょう。

どちらの買い方が正解ということはなく、自分に合う方法を理解して選択することが大切です。

ただし、積立投資のほうが投資信託のメリットを生かせる可能性があります。投資信託は、1つの銘柄の中で複数の金融商品を組み合わせて投資しているため、資産を分散することで、リスクも分散できる特徴を持っています。

これに加え、積立投資では「時間の分散」も可能になるのです。一定額を定期的に積み立てることで、購入している投資信託が値上がりしている時は少ない口数を、値下がりしている時は多くの口数を購入しますので、結果的に平均の買い付け単価を抑えられる可能性が高くなります(ドルコスト平均法)。

投資初心者で買い方に迷ったら、まずは積立投資で始めてみるのがおすすめです。

■投資信託の平均保有額はいくら?

では、投資信託を持っている人は、どのくらいの金額を保有しているのでしょうか。日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査(調査結果概要) 」(2024年10月16日)によると、投資信託保有額(個人・時価)は50万円未満が24.2%、50~100万円未満が14.0%、100~300万円未満が22.2%、300~500万円未満が12.3%、500~1000万円未満が10.6%、1000万円以上が16.7%です。

投資信託保有額は300万円未満が約6割(60.4%)を占めており、推計の平均保有額は398万円となっています。

たとえば、今から10年後まで毎月投資信託を積み立て、平均保有額の398万円を手に入れたいとします。シミュレーションツールを使って計算したところ、その場合の毎月の積立額は約2万8000円になりました(年利3%、税金や手数料は考慮しない、金融庁「つみたてシミュレーター」)。

ただし、毎月2万8000円を積み立てるのは難しい人もいるかもしれません。その場合、運用期間を長くしてみると、毎月の負担を減らすことができます。たとえば、15年かけて積み立てた場合、毎月の積立額は約1万8000円と1万円少なくて済みます。

なお、これらの金額はあくまでも投資信託の平均保有額から計算した参考金額です。ぜひ、ご自身のケースに当てはめて投資金額を決めましょう。

■投資金額を決める時のポイントと注意点

ここまで、投資信託に投資できる最小の金額や、投資信託の平均保有額などをご紹介しました。最後に、「では、自分はいくら投資するか」を決める際のポイントと、実際に投資信託を始める時の注意点について解説します。

1.まずは投資する目的を考える

投資信託をいくらから始めるかは、当然人それぞれです。それは、投資する目的やそれに必要な金額が一人ひとり違うからです。まずは、自分が投資する「目的」と、いつまでにいくら必要なのかという「目標額」を明確にしてみましょう。

目標額とお金が必要な時期が定まれば、金融庁や各金融機関のシミュレーションツールなどを使い、今から毎月いくら積み立てていけばいいのか計算できます。たとえば、「18年後に子どもの大学進学資金として500万円用意したい」「20年後のリタイアまでにあと2000万円貯めたい」のように、お金を準備する目的と金額、時期を思い描き、そこから月々の積立額を逆算していくのです。

具体的に思いつかない場合は、「老後に困らないようにしたい」といった希望だけでも構いません。まずは、自分は何のために投資を始めるのか考えてみることが大切です。

2.無理のない投資金額を把握する

1では、目標額から月々の積立額を逆算する方法をご紹介しましたが、その結果、今の生活が圧迫されるような金額を無理して積み立てることはおすすめできません。また、積立投資はリスクを抑える効果が期待できますが、それでも投資信託は元本割れすることがあります。

そのため、生活費や、すでに将来のために貯金しているお金ではなく、「当面、使う予定のないお金」を投資に回すようにしましょう。また、いざという時のために全く貯金をしていない人は、投資を始める前に「生活費の半年分程度」の金額を目標に貯金をしましょう。

自分が無理をしないで投資できる金額を把握するには、まずは家計状況の確認や”お金の色分け”をすることが大切です。

3.投資信託の手数料や税金を理解する

投資を始める際は、投資信託の手数料や税金など、資金や利益から引かれる金額があることも理解しておきましょう。投資信託には、購入時、保有中、売却時にそれぞれ手数料がかかります。たとえば、積立投資をする場合、「購入時手数料」は毎月発生します。ただし、投資信託の中には購入時手数料のかからない「ノーロード商品」もありますので、うまく活用したいところです。

投資信託を保有している間に継続して発生する手数料は、「運用管理費用」と言い、各金融機関や商品によって割合が異なります。そして、保有している投資信託を売却して換金する時にかかる手数料は、「信託財産留保額」と言います。

特に、運用管理費用は投資信託の保有中、ずっとかかり続ける手数料ですので、どのくらいの割合が引かれるのか必ず確認しましょう。

また、投資信託で得た利益には所定の税金がかかります。今年1月から新制度が始まったNISAなど、非課税制度の活用も検討してみましょう。

■投資信託は無理のない金額から始めよう

最近では、100円から積立投資できる金融機関が増えたこともあり、投資初心者が投資信託を始めるハードルは以前より低くなりました。ペットボトル1本程度の少額から気軽に始められるのは、嬉しいですね。まずは、自分が投資をする目的を明確にし、いくらなら無理なく投資できるのか把握しましょう。そのうえで、まずは100円や1000円から投資に慣れていき、徐々に金額を増やすのもおすすめの方法です。