JR東日本は、大井町駅で京浜東北線の線路切換工事を11月17日に実施した。品川区と連携した「大井町駅周辺広町地区開発(仮称)」の一環で工事が行われ、1番線(大宮方面)ホームを拡幅し、それにともない線路が移設された。この様子が同日、報道関係者らに公開された。
JR東日本は羽田空港の国際化とリニア中央新幹線の整備による交通基盤の進化を見据え、国際交流拠点の実現をめざす「品川開発プロジェクト」を中心に、浜松町駅から大井町駅までの東京南エリアで事業パートナーや地域と連携したまちづくりを推進している。このエリアを「広域品川圏」と名づけ、文化・観光、国際交流、都市生活の共創拠点を駅ごとに形成。それにより、各エリアの交流から新しい価値の共創を促し、東京・全国・世界に広げ、東京の魅力と国際競争力の向上につとめるとしている。大井町駅は都市生活共創拠点にあたり、「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」として2026年3月にまちびらきを予定している。
今回の線路切換工事は、再開発によって大井町駅利用者が増加する見込みとなったことを受け、実施されたという。1番線(大宮方面)の線路をホーム部で最大約0.7m、通路部で最大約0.8m横移動させ、ホームも線路に合わせて拡幅した。この工事で、線路の横移動を行った延長は、8号車の停車位置付近から品川方に249.9m。ホームを拡幅した延長は、8~10号車(品川方の3両)の停車位置を含む53.1m。JR社員・作業員あわせて約600人が作業にあたった。
工事に先行して、8月に1番線の品川方3両分のホームドアが撤去されている。工事当日(11月17日)の始発から16時30分頃まで、京浜東北線の品川~蒲田間で全列車が運休。大宮~品川間・蒲田~大船間で折返し運転を行い、通常よりも本数を減らしての運行となった。同日、周辺の私鉄各線で振替輸送も実施された。運転再開直前までJR大井町駅のシャッターは閉じられ、東口前の歩道から多くの利用者らが工事の様子を見学していた。
前日(11月16日)の終電が発車した後、架線の移設と地上子の取外しが行われたとのこと。取材開始時点で、線路の横移動に加え、バラストを敷き、タイタンパーで突き固める作業まで終わっていた。品川方・大船方に分かれ、2台体制で作業が行われたという。作業を終えたタイタンパーが品川方に引き上げた後、正しい軌間になっているか確認する作業が行われた。
線路の工事が終わった後、ホームの拡幅工事を開始。足場に貼られたテープや点字ブロックをはがし、ホーム端の足場となっている覆工板を外す。人海戦術で複数箇所を同時に進め、次々と足場を外していく。覆工板1枚を2人で持ち上げて運ぶ際、「エイ!」と声をかけ合っていた場面があり、1枚でもかなりの重量が予想された。その後、延長する部分に鉄骨(H鋼)を継ぎ足し、ボルトで固定。延長した部分に再度覆工板を設置し、シートをはがした部分にシートを貼り直していく。
今回の線路切換工事について、JR東日本建設工事部マネージャーの中本康晴氏が取材に対応した。工事を行った目的について質問があり、品川区と連携して行っている再開発計画により、東口の利用者が増える見込みがある旨を説明。ホームを拡幅する長さが最大0.7mであることについても聞かれ、線路のすぐ左側に壁や都道420号線の橋台があるため、広げられる限界が0.7mだったと説明した。それでも利用者1人分の広さを確保できるため、十分な間隔であるという。工事にあたり、計画時に3Dで座標を取り、支障がないか確認したとのことだった。
報道公開の終了後も工事は続いた。拡幅後の足場に乗車位置ステッカーと点字ブロックを設置し、線路に地上子を取り付け、車掌用カメラの位置調整と清掃を行い、並行して軌陸車で架線の微調整も行った。すべての作業が完了した後、試運転列車が16時6分頃、1番線に入線。問題がないことを確認し、16時18分に大井町駅を発車した。京浜東北線の南行(横浜・大船方面)は同駅16時4分発の磯子行、北行(東京・大宮方面)は同駅16時36分発の大宮行をもって運転を再開した。
今後の工事として、撤去したホームドアの復旧(2025年8月頃の予定)、品川方ホーム通路の拡幅(最大約0.8m)、通路端部柵の移設、屋根の拡幅を行うほか、品川方の階段を既存位置よりさらに品川方に新設し、あわせて通路の延伸と既存階段の撤去も控えている。「ホームドアの復旧、通路の拡幅、コンコース階と、まだ工事が残っています。引き続き、安全に工事を進めていきたい」と中本氏はコメントした。なお、ホームドアの復旧と通路の拡幅は来年度の早いうちを予定しているとのことだが、その後の工事予定については今後の詳細発表を待つことになる。