藤井聡太竜王に佐々木勇気八段が挑戦する第37期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第4局が11月15日(金)・16日(土)に大阪府茨木市の「おにクル」で行われました。対局の結果、角換わり相早繰り銀の定跡形から用意の積極策を打ち出した佐々木八段が97手で快勝。スコアを2勝2敗のタイに戻しました。

斬新な早繰り銀構想

ここまで角換わり腰掛け銀・矢倉右玉・ダイレクト向かい飛車と、佐々木八段の作戦選択からは戦型に幅を持たせたい方針が見て取れます。先手番で迎えた本局で佐々木八段が用意したのは角換わり早繰り銀の急戦形。相早繰り銀の構えができたとき、攻めの先鋒と見られた銀を繰り替えて腰掛け銀の形を作ったのが前例の少ない構想でした。

佐々木八段の狙いは4筋に据えた自陣角のにらみで盤面全体の主導権を得ること。1日目から指し手の勢いと持ち時間の両面でリードした佐々木八段はさらに攻め続けます。9筋の香を捨てたのが決断の一手。代償に得た一歩で桂頭を攻めつつ馬を作る手が好便となり、先手有利がはっきりしました。藤井竜王は受けに打たされた自陣角が働きの弱い駒になっています。

日没前の完勝譜

藤井竜王の記した封じ手が開かれ2日目の戦いがスタート。ともに居玉のまま盤上は激しい終盤戦へと突入しますが、佐々木八段の指し回しには最後まで妥協がありませんでした。馬を切って飛車先を突破したのが読み切りの決め手。直後に王手飛車取りの反撃が待っていても、手にした豊富な持ち駒で寄せに転じれば十分にお釣りがきます。

終局時刻は15時45分、最後は自玉の詰めろを認めた藤井竜王が投了。終局図で佐々木玉に詰みはなく、藤井玉は一手一手の寄り形でした。本局は序盤から深い研究と積極的な指し回しでペースをつかんだ佐々木八段の完勝譜に。敗れた藤井竜王は「(4筋に自陣角を打たれて)すでに苦しいのかもしれない」と振り返りました。

これでシリーズ成績は両者2勝2敗のタイに。藤井竜王の先手番で迎える注目の第5局は11月27日(水)・28日(木)に和歌山県和歌山市の「和歌山城ホール」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 勝った佐々木八段は「12月までシリーズが続くのをモチベーションにしたい」と謙虚に語った(提供:日本将棋連盟)

    勝った佐々木八段は「12月までシリーズが続くのをモチベーションにしたい」と謙虚に語った(提供:日本将棋連盟)