みずほフィナンシャルグループ(FG)と楽天カードの戦略的な資本業務提携にもとづき、みずほ銀行は楽天カードとの提携カード「みずほ楽天カード」を12月3日から発行します。年会費は永年無料で、みずほマイレージクラブにおけるATM時間外手数料無料特典などが用意されます。
みずほFGの木原正裕取締役兼執行役社長グループCEOは、「楽天のサービス、みずほのサービスを融合させ、ポイントも活用しながら、利便性の高い決済サービスを提供していきたい」と話し、カードだけにとどまらない協業を目指す考えを示しています。
楽天ポイントが貯まるみずほのカード
12月3日から発行されるのは、楽天カードが発行する提携カードで、国際ブランドはVisa。国内在住の18歳以上であれば無料で発行できます。すでに楽天カードを保有していても2枚目カードとしての申し込みも可能。引落口座はみずほ銀行口座に限定されます。
みずほ銀行のみずほマイレージクラブに加入した上でカードを利用すると「うれしい特典」の対象となり、みずほ銀行やイオン銀行ATMの利用手数料・時間外手数料が無料になり、コンビニATM利用手数料は月2回まで無料になります。
さらに年間100万円以上の利用があればコンビニATM利用手数料が月3回まで、みずほダイレクトを使った他行宛振込手数料が月3回まで無料になります。海外旅行傷害保険は利用付帯で最高2000万円までサポートします。
裏面には楽天ポイントのバーコードも記載されています。楽天Edyもサポートしますが、別途発行手数料330円が必要です。ETCカードの年会費は楽天会員ランクのダイヤモンドとプラチナは無料、それ以外は550円。家族カードも2枚まで発行できます。
利用金額に対する還元は楽天ポイントとなり、100円につき1ポイント(1%)の還元率となります。そのほか、楽天市場での利用で3%還元、楽天証券でのクレジット決済では0.5%の還元となっています。
提携カード発行を記念して、新規入会と1円以上のショッピング利用、みずほ銀行の口座設定で13,000ポイント、既存の楽天カードユーザー向けにエントリーと2枚目作成、利用、みずほ銀行口座設定で3,000ポイントを進呈するキャンペーンも実施します。
オリコとUCの参加で楽天カードのサービス向上や法人カードも
みずほFGと楽天グループの関係では、楽天証券との連携が続いています。提携の2年間で、楽天証券は200万口座、預かり資産は2倍に伸びたと木原社長は説明。楽天証券の強みはオンラインで楽天グループのインターネットサービスとの連携にありますが、みずほは対面に強みがあり、預かり資産が増えるとリアルで相談したい人も増えてくるとして、両社の連携が有効であることを強調しています。
楽天証券との協業では20%の出資をして様々な協業も行い、「お互いいろいろ話し合いながら信頼関係を構築してきた」と木原社長。この信頼関係が、今回のさらなる虚業の拡大に繋がったのだそうです。
今回の協業では、みずほのグループ会社であるUCカードとオリエントコーポレーション(オリコ)も参加。オリコはこれまでのカード事業で「審査能力を磨いてきた」と木原社長。性能規定与信として経済産業省からも認可を受けており、「ものすごく簡単に申し込みができて審査もものすごく速い」(木原社長)というもので、返済パターンも幅広く対応でき、利便性の高い仕組みだといいます。
これを楽天市場や楽天カードにも提供し、これによって楽天市場の販売、楽天カードの決済額が増え、さらにオリコのユーザーも増えると木原社長。
UCに関しては法人分野に強みがあります。「楽天の大きな課題が、楽天市場に参加しているサプライヤーの資金繰り」だと木原社長は指摘。それに対して法人カードの強みを生かして貢献することを狙っています。加盟店の相互開拓なども考慮されているそうです。
木原社長は、直近の決算で業績の下方修正をしたオリコの業績回復に関して、新しい性能規定与信を活用することで楽天市場や楽天カードとの協業が貢献することに期待を寄せています。
楽天カードの中村晃一副社長は、法人向けクレジットカードの提供検討においてみずほFGの法人向けマーケットのノウハウを生かした事業展開が可能になると説明。加盟店業務も協業することでビジネスの強化を図っていく考えを示しました。
内部のインフラなど、バックオフィスを含めて共同で利用していく考えもあるほか、「色んな新しい決済手段の共同開発もやりたい」と木原社長。幅広い協業を見据えているようです。
みずほFGは、「オープン戦略」を採用して様々な事業者と提携を行っています。楽天証券、楽天カードでは自社にみずほ証券、UC、オリコといった同業もあり、基本的には「お客様のニーズに応えていく」(みずほ銀行執行役員・宇井昭如氏)という考えとのことです。木原社長は「多少の整理は必要」としつつ、「継続すべきものは継続。オープン戦略なので、それは大事にしていきたい」と話します。
木原社長が2022年の就任以来考えてきたという戦略は、「自分たちのデジタルも深めるが、オープンでフェアというのが基本理念」であり、オープン戦略によって高い能力のある事業者と連携することを重視します。その結果が2022年11月の楽天証券との協業で、今回の楽天カードとの協業にも繋がるのだそうです。
例えばオンラインのみの楽天証券と対面もあるみずほ証券のように、「デジタルと対面は協働しうる世界もある。AIを駆使してデジタルの世界で全部完結する人もいれば、やはり相談したいという人もいる」(木原社長)ことから、相互に連携し合えるという考えです。
楽天の三木谷浩史会長兼社長も、楽天証券には支店がないなど、お互いの資産を活用できると指摘。みずほの利用者がみずほ楽天カードへの切り替えることで、「みずほ銀行のロイヤリティも楽天のロイヤリティも高まるのではないか」と期待を寄せます。
加えて、「まだ取れていない信用創造の機会が一杯ある」と三木谷氏。さらに楽天カードに法人カードがないことで多くのニーズがあったとして、今回の協業で法人カードへの取り組みを進める意向を示しています。
「オンラインのプレゼンスは相当に強いものを持っているが、オフラインのリアルマーケットでは支店もないし、対面で話したいという人も多いのでシナジーがある」と三木谷氏は話します。
連携といえば、ポイント経済圏として楽天ポイントとの連携も気になるところ。みずほ楽天カード自体は還元に楽天ポイントが設定されていますが、みずほマイレージ自体のポイントについて木原社長は、「みずほマイレージクラブの新しいポイントを作っているところで、作った暁にはいろいろ相談していきたい」としています。基本的にはポイント交換を想定しているようです。
みずほFGはオープン戦略であり、「一人でやるよりも経済圏が広がる」というのが木原社長の考え。他社では例えば三井住友FGが、OliveやVポイントなどグループ中心となったデジタル戦略を進めていますが、木原社長は協働も重視する考えを示しています。
なお、協働とは言え、「みずほの店舗で楽天モバイルのサービスや製品を売る」といった協業はありえるかという報道陣からの質問には、木原社長は否定的な見解を示しました。三木谷氏は「いいですね」と笑いましたが、木原社長は「業法上、難しいと思う」と指摘。例えば楽天モバイルと日本郵便がスマホ相談窓口の設置に関して協業していますが、「販売は難しいが色々な協力はできる」と木原社長は話しています。