先にお届けした記事、Lunar Lakeは省電力でも高性能! 仕事もAIもゲームも大幅強化な「Core Ultra 7 258V」搭載ノートを試す(前編)から、時間が空いてしまったが、今回は「Core Ultra 7 258V」を搭載するASUSのノートPC「Zenbook S 14 UX5406SA」と前世代(Meteor Lake)の「Core Ultra 7 155H」を搭載する同じくASUSのノートPC「Zenbook 14 OLED UX3405MA」を用意。Lunar Lakeは、Meteor Lakeからどこまで性能が向上しているのが確かめていく。
まずは、Core Ultra 7 258VとCore Ultra 7 155Hのスペックを確認しておこう。
CPU | Core Ultra 7 258V | Core Ultra 7 155H |
---|---|---|
製造プロセス | TSMC N3B | Intel 4 |
コア数(P/E/LP E) | 4/4/- | 6/8/2 |
スレッド数 | 8 | 22 |
Pコアクロック(定格/最大) | 2.2/4.8GHz | 1.4/4.8GHz |
Eコアクロック(定格/最大) | 2.2/3.7GHz | 900MHz/3.8GHz |
LP Eコアクロック(定格/最大 | - | 700MHz/2.5GHz |
3次キャッシュ | 12MB | 24MB |
対応メモリ | LPDDR5X-8533(CPUに搭載) | DDR5-5600/LPDDR5X-7467 |
NPU | 第4世代(47TOPS) | 第3世代(11TOPS) |
TDP | 17W | 28W |
内蔵GPU | Arc 140V(8Xe) | Arc(8Xe) |
どちらもBase Tile上に機能別のタイルを実装する構造を採用している。中枢となるCompute TileがCore Ultra 7 258VのLunar Lakeは「TSMC N3B」、Core Ultra 7 155HのMeteor Lakeは「Intel 4」で製造されているのが大きな違い。また、Meteor Lakeは低消費電力のLP Eコアを採用したが、Lunar LakeはEコアにその役割が統合された。Lunar Lakeは1コアで2スレッドを処理できるハイパースレッディング廃止しているのも特徴。おなじ、Core Ultraでも内部や機能は大きく変化している。
Lunar LakeはすべてPコア4基、Eコア4基で合計8コア8スレッドに統一。Core Ultra 7 155Hは、Pコア6基、Eコア8基、LP Eコア2基で合計16コア22スレッドに達する。コア数ではなく、コアあたりの性能向上に舵を切ったLunar Lakeの実力に注目したい。
また、内蔵GPUはどちらも同じ8コアだが、Lunar Lakeは最新の「Xe2」アーキテクチャを採用。AI機能を持つXMXエンジンを搭載されており、性能が大幅強化されている。ゲーミング性能の違いも重要なポイントだ。なお、Zenbook S 14 UX5406SAの特徴については、前編で確認してほしい。
8コア8スレッドでも高い性能を示す
ここからは、Core Ultra 7 258VとCore Ultra 7 155Hのベンチマークテストに移ろう。それぞれのノートPCのスペックを掲載する。
モデル | Zenbook S 14 UX5406SA | Zenbook 14 OLED UX3405MA |
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CPU | Intel Core Ultra 7 258V | Core Ultra 7 155H |
メモリ | LPDDR5X-8533 32GB | LPDDR5X-7467 16GB |
GPU | Arc 140V | Arc |
SSD | 1TB(NVMe SSD) | 1TB(NVMe SSD) |
OS | Windows 11 Home | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 14型(2,880×1,800ドット、120Hz) | 14型(2,880×1,800ドット、120Hz) |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 310.3×214.7×11.9~12.9mm | 312.4×220.1×14.9mm |
重量 | 約1.2kg | 約1.2kg |
直販価格 | 25万9,800円 | 17万4,800円 |
まずは、シンプルにCPUパワーを見るためCGレンダリングを実行する「Cinebench 2024」でのスコアと「HandBrake」を使用し、約3分の4K動画をフルHDにH.264とH.265形式でエンコードしたときにかかった時間を計測する。
Cinebench 2024の結果を見ると、コア数が減っているだけにMulti CoreのスコアはCore Ultra 7 155Hが上回るが、Single CoreのスコアはCore Ultra 7 258Vが約13%上回った。エンコードに関しては、H.264への変換時間はCore Ultra 7 155Hのほうが高速だが、より複雑な計算が行われるH.265への変換はCore Ultra 7 258Vのほうがわずかだが高速。コアあたりの性能向上が効いているのが分かる部分だ。
続いて、アプリの性能を見るため、Webブラウザ、ビデオ会議、表計算などさまざまなアプリをシミュレートする「PCMark 10」と、実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicを実行してさまざまな画像処理を行う「Procyon Photo Editing Benchmark」を実行した。
PCMark 10はわずかにCore Ultra 7 258Vが上回った。クリエイティブ系の処理を行うDigital Content Creationのスコアが高いのが効いている。それを裏付けるように、Procyon Photo Editing BenchmarkではCore Ultra 7 258Vが大きく上回った。CPUとGPUの両方を使うPhotoshopメインのImage Retouchingが特に強い。GPUの強化も効いていると見られる。
人気ゲームを遊べる性能! ドライバ更新でより強化
ここからはゲーミング性能を見ていこう。ポイントは、GPUのドライバを原稿執筆時点では最新だった「32.0.101.6045」を使っていること。前編は、レビュー用に配布された「32.0.101.5730」を使用した。前世代との比較に加えて、前編もチェックするとドライバ更新による効果も見えてくる。Arcのドライバは比較的頻繁に更新されており、まだまだ向上しそうな気配があるのも面白いところだ。
まずは、定番3Dベンチマークの「3DMark」から。DirectX 11ベースのFire StrikeとDirectX 12ベースのSteel Nomad Lightを実行した。
Fite Strike、Steel Nomad LightともにCore Ultra 7 258Vのスコアが高くなっている。GPUのコア数は同じでも最新世代のアーキテクチャーを採用することで、性能がしっかりと底上げされている。
実ゲームではどうだろうか。まずは、軽~中量級のゲームとして「Apex Legends」と「オーバーウォッチ2」と「ストリートファイター6」を用意した。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレート、ストリートファイター6はPU同士の対戦を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。
Apex Legendsとオーバーウォッチ2の平均fpsを見ると、Core Ultra 7 258Vのほうが約25~33%性能が上回っているのが分かる。また、Core Ultra 7 258Vだと最低fpsが高いため、カク付く場面が少なく快適にプレイしやすい。ストリートファイター6は対戦時は最大60fpsのゲーム。どちらも平均はほぼ60fpsに到達できているが、最小fpsではCore Ultra 7 258Vのほうが高いのがポイントだ。
続いて、ちょっと重めのゲームを試そう。「Call of Duty: Modern Warfare 3」、「Ghost of Tsushima Director's Cut」、「サイバーパンク2077」を用意した。それぞれアップスケーラーとフレーム生成機能を備えており、テストではどちらも有効化している。Call of Duty: Modern Warfare 3とサイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用。Ghost of Tsushima Director's Cutは旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
アップスケーラーとフレーム生成の効果があるとは言え、Core Ultra 7 258Vはすべてのゲームで平均60fpsを大きく超えた。画質設定は低めにする必要はあるが、重量級ゲームを含めて多くのゲームが遊べるGPU性能があるというのはうれしい。薄型軽量のノートPCなので、旅行先や出張先でもちょっとゲームを楽しみたいというニーズにも応えられる。
AI性能を大幅に強化! NPUの電力効率の高さも強み
最後にAI性能もチェックしておこう。注目はNPUだ。Core Ultra 7 155Hにも内蔵されているが、第3世代で性能は11TOPSと控えめ。一方でCore Ultra 7 258Vは第4世代で47TOPSと大幅に強化された。これによっとCopilot+ PCの要件を満たしているのも特徴だ。ここでは、さまざまな推論エンジンを実行してAI性能を見る「UL Procyon AI Computer Vison Benchmark」を実行する。また、電力効率も見るため実行時のシステム全体の消費電力も計測した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。
NPUのスコアはCore Ultra 7 258Vのほうが約5倍も高い。圧倒的だ。消費電力もわずかに向上しているが、スコア差を考えれば、電力効率はより高くなったと言ってよい。NPUに対応するアプリが増えれば大きな強みになるだろう。GPUによるAI性能も約1.8倍もスコアが向上。GPUでAI処理するアプリも多いだけに、ここも大きな強化ポイントと言える。CPUはコア数の少なさが影響したのか、Core Ultra 7 155Hのほうが若干高くなった。
8コアでも十分高性能でゲームもAIも強いLunar Lake
コア数を減らす、ハイパースレッディングを廃止する、メインメモリをCPUに統合するなど大胆な改革を行ったLunar LakeことCore Ultra 200Vシリーズ。コア数で上回る前世代のMeteor Lakeに比べてマルチスレッド性能では劣る場面は多少あるものの、多くのアプリ、ゲーム、AI処理では性能向上を果たしており、改革はうまくいったと言ってよいだろう。Meteor Lake搭載のノートPCは価格が下がってきており、迷うところだが、Lunar Lake搭載ノートのほうが汎用性は上。このテスト結果が、ノートPC選びの参考になれば幸いだ。