コロナ禍を経て急速に普及したリモートワークでの働き方。しかし最近、アマゾンジャパンが2025年1月から原則出社、メルカリは週2日の出社を推奨するなど、オフィス回帰の動きも見られます。
とはいえ、従来の固定席で常に同じメンバーが顔を合わせるオフィスとは異なり、そこは令和の時代に即した仕様や仕掛けが施されているのです。
先日、「人が主人公のハイブリッド・ワークプレイスの進化」をスローガンに掲げる内田洋行が、2025年新製品の内覧会を開催しました。その会場から新しいオフィスに求められる機能や役割を探ってきました。
オフィス回帰の流れ
同社の代表取締役社長 大久保昇氏は
「一昨年からオフィスの増床が増え、本社オフィスのリニューアルや、製造業を中心としたR&D(研究開発)部門への投資として、働く環境の整備が進んでいます。さらに、東京都内の営業本部の拠点、そして全国の拠点の変革を目指した増床もあります」
と現在のオフィス回帰の流れを解説します。
これは、出社による社員のエンゲージメント(自社への愛着、誇りなど)や組織間の連携を強化し、業務へのモチベーションを向上させるためだと述べています。そうした企業ニーズに応え、オフィスの生産性を上げるための新製品をリリースすると言うのでした。
オフィスでのテーブルの可能性
「人が主人公」といキーワードの通り、新製品は「人がつながる」「人が集中する」「人が情報共有する」というように、働く場面ごとに最適化されたものとなっています。
またオフィス家具など「リアル」な基盤とシステムなど「デジタル」な基盤で区分され、まず前者から紹介しましょう。
会話をしながら仕事したり、モバイル機器を接続したモニターで作業に集中したりするなど、多様なワークシーンが構成できるテーブルシステム「Commons Table System-i」は、フラットで広い天板が特徴です。
2009年以前よりオフィスにおけるテーブルの可能性について、開発・研究を続けているという同社は、テーブルの高さについて特に着目しているそうです。
「立っている人と座っている人が目線合わせやすい、コミュニケーションが起こりやすいだろう。これはハイポジションという働き方が、コミュニケーションの活性化やインスピレーションを引き出すと私たちが提唱している働き方です」(広報担当さん)
働く側が使いやすい環境を設定していき、組み合わせ、移動させフレキシブルにオフィス空間を構築できると言います。
業務に集中する場面のアイテムでは、パソコン画面への照明の映り込みを解消する「映り込み防止」シェードが面白かったです。
設計部門で働く人やデザイン業務など、パソコンのモニター上で細かい作業がある人には感謝されそうです。ちなみに、同じ考え方で「ひさし」が付いたデスク用の仕切り板もありましたよ。
集中して作業する時はこれらの場所で、成果やアイデアを共有、共創したい時はオープンなオフィス空間で働く。自律的に自分で働く場所を選択する働き方が「当たり前」となりつつあるようです。
なお仕事に集中した後、気分をリフレッシュさせるのも大切とし、交流もできる「ライブラリ・ラウンジ」を同社は導入しています。木の製品に囲まれた空間で、書籍などにも触れつつ思考の切り替え、リラックスできることを狙いとしているようですね。
オフィスのロッカーも進化
フリーアドレスの場合、荷物は個人ロッカーに預ける形です。このロッカーに「毎日立ち寄る港の役割」を与えたというのが、パーソナルロッカー「Portainer(ポルテナ)」です。
物の整頓をしやすい仕切り、デバイス充電用の電源コンセントなど、使い勝手の良さがポイントです。また、もう一つの特徴がダイヤル錠でした。
「ダイヤル錠は当社独自のもので、『鍵の盗み見防止機構』を持ち、開けた状態でも番号を崩せるので荷物を出し入れの際もセキュリティを守れます」(広報担当者さん)
通常のものは開いた状態ではダイヤル錠の番号が回らないのですが、同社のそれはガチャガチャ変更できる。地味ですが、意外と重宝する機能でしょうね。
オフィスの課題を解消
今まで紹介したのは「リアル」な基盤です。では「デジタル」な基盤ではどうでしょうか。同社には「SmartOfficeNavigator(スマートオフィスナビゲーター)」というグループウェア(Microsoft 365等)と連携するプラットフォームがあります。
既に多く企業に導入されていて、その事例をもとに機能強化するなど、年々アップデートしています。
例えば「フリーアドレスで同僚が社内のどこにいるのか分からない」、「出社したけど、どの座席が空いているか把握したい」、「会議室の利用頻度や利用実態をつかみたい」など、オフィスでの課題に対応する機能が備わっているのです。
情報は社内情報発信サイネージ「エナジーウォール」で確認可能で、またスマホでも利用できます。
筆者は特に会議室の利用状況を把握できるのはいいなと思いました。空いている会議スぺ―スを見つけるのは、毎回四苦八苦するのですよね……。
ちなみに集計したデータはダッシュボードで可視化できます。では集計したデータはどう活用できるのでしょう?それこそ、生成AIを利用するなどできそうです。担当者の方へ尋ねました。
「組織間の交流度合いを見たいという場合には、結果を踏まえ、そこから生成AIも駆使して分析コメントを出すみたいなことはできるでしょう。ただ、まだ具体的な企画としてはなく、あくまで検討している状況です」
導入している企業から「こうしたい、こうならないか」と相談が入ると、実現可能なら改善しそれが一般化できるようなら、製品としてリリースする。そうした流れで製品はアップデートされると言います。
オフィスの持つ可能性はまだまだ広がりそうですね。