大和自動車交通とニューステクノロジーは、都内のホテルを対象にプレミアムハイヤーサービス「TOKYO CHAUFFEUR SERVICE」の提供を11月7日より開始した。

訪日客の増加に伴い、プレミアムな移動手段への需要も拡大しており、より直感的で効率的な配車システムを提供。

目的地への送迎だけでなく、都内ランドマークの観光案内などさまざまなリクエストにも対応し、ハイクラスな宿泊客のニーズも満たせるとする。

ホテル事業者に特化したハイヤー専用の配車システム

昨今の訪日客数は過去最大ペースで増加しており、それに伴ってタクシー利用も増えている。大和自動車交通が2024年6月に行った調査では、タクシー利用の約半数が訪日客となる車両もあったという。

ハイヤーに関しても、都内のハイヤー登録台数が2022年6月から2024年6月の間に660台も増加しており、こちらもインバウンド需要に伴うものと考えられる。

その一方で、運転手不足や電話やメール、FAXなどを用いた非効率な配車依頼により、需要と供給の不一致が発生。増えていく需要に対応していくことは業界の大きな課題となっていた。

観光庁も「観光DX」を推進しており、タクシー・ハイヤー事業者、ホテル事業者ともに、配車の効率化と移動体験の向上は急務となっている。

  • 大和自動車交通の常務執行役員、小山哲男氏(左)とニューステクノロジー代表取締役の三浦純揮氏

「TOKYO CHAUFFEUR SERVICE」では、高級車両を使用した移動サービスを、ホテルを介して訪日客向けに提供するサービス。

車両はレクサスLM、トヨタ・アルファード、ヴェルファイアなどを使用しており、車両クラスの指定も可能だ。

ドライバーは語学堪能な人材をそろえ、目的地まで専属で送迎する。ドライバーは東京シティガイド検定も保有しているため、観光案内のリクエストにも対応可能だ。

また、ドライバーの装いにもこだわり、オーダースーツを着用してサービスを提供する。

ホテル事業者は、ハイヤー手配に特化した「TOKYO CHAUFFEUR SERVICE」専用のシステムで、配車情報を一元管理することができるほか、車両の現在位置も把握できる。

システムは、PCブラウザからのアクセスのほか、スマートフォンアプリも順次提供予定とのこと。

配車注文の際は、氏名や乗車人数、荷物の個数、目的地、車両のクラス、観光希望などを事前にシステムから入力。プルダウンメニューなど直感的な入力で手配できるようになっており、車いすやチャイルドシートなど細やかな要望にも応える。

ドライバー・ハイヤー運行担当者などと直接やりとりできるチャット機能も備えており、配車依頼から発注書などの文書管理まで、すべてオンライン上で処理が可能となっている。

  • ハイヤー手配・業務管理画面(スマートフォン版) 提供:大和自動車交通

このDX化により、ハイヤー手配時の電話連絡や手配依頼書のFAXやメール送信など、レスポンスとスピーディな配車、煩雑な発注処理などの課題を解決していく狙いだ。

同サービスは、都内のラグジュアリーホテルを中心に導入されるという。

オンライン会議や社内打ち合わせもOK、プレミアムな移動を実現

体験試乗では、レクサスLMに乗車させてもらった。

車内は、ゆったりと足が延ばせる個室空間で、冷蔵庫やスマートフォン充電器なども装備。水やおしぼりなども用意されていた。要望があれば、マットや社内の香りなどもホテルの仕様にカスタマイズすることができるという。

正面の大きなモニターでは映像コンテンツの視聴のほか、HDMIケーブルと手持ちの機器をつなげることで、会議や打ち合わせを移動しながら行うこともできる。Wi-Fiもあるため、オンライン会議も可能。

運転席側とはパーテーションを立てて区切ることができるので安心だ。パーテーションやサンルーフのウィンドウ、座席のリクライニングなどは、手元のタッチパネルや操作盤で動作できる。

  • 提供:大和自動車交通

ハイクラスの車両ならではの揺れの少ないなめらかな走行で、テーブルを出してのPC作業も何の負担もなく行うことができそうだ。

東京の観光地を車窓から眺めながらの移動は快適そのもの。特にサンルーフからの景色は新鮮で、訪日客にもプレミアムな移動を提供できるはずだ。

多言語対応ドライバーの人材を増やし、2年後にはハイヤー車両50台を目指す

大和自動車交通によると、ホテルなどからの配車で利用が多かった「都市型ハイヤー」の場合、配車予約はホテルのコンシェルジュを通じて48時間前までに行うことが求められたり、法律上の制限により2時間以上の時間単位での専属契約が必要であったりと、利用へのハードルがやや高かったという。

そのため、「今日、ちょっと時間が空いたから都内を少しだけ観光したい」などの急な配車や、「空港に行くだけだが、高級車両で向かいたい」といった短時間利用ができず、一般的なタクシーを利用せざるを得ないケースが少なくなかった。

その点、今回のサービスで展開するハイヤーは、法律上「その他ハイヤー」となり、2時間の制限には当てはまらないため、短時間利用も可能となり、満たせなかったニーズに応えることができるようになる。

またDX化により素早いレスポンスが実現し、車両の空き状況次第で迅速にハイヤーを手配できるようになった。

現在該当するサービス車両は13台。タクシー特措法による制限で増車はできないため、同社の保有するタクシーの用途登録をハイヤーに変更した。

ハイヤーの方が顧客の利用単価は高いため、収益性も見込める。2年後には50台まで増やしたいという。

そして車両だけでなく、人材の確保にも積極的だ。

小山氏は「4~5年前から、安全指導や顧客対応指導といったドライバー教育のほかに、観光関連の資格取得を推奨したり、英語を習得させるための講座を受講させたりと、インバウンドに対応できる人材を育成してきました。そのため、車両さえ確保できればハイヤー事業をすぐに始められる準備が整っていました。今後は英語に限らず、多言語を話せる人材を募集し、対応言語も増やしていけるようにしていきたい」と話し、さらなる事業拡大に意欲をみせた。