自動調理鍋の代表的ブランドといえば、シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」シリーズは外せません。とはいえホットクックは機能が複雑なため、価格もそれなりに高価格。そこで、シャープは機能を絞った新ライン「withシリーズ」を発表。その第一弾となるのが11月21日発売予定の「KN-MN16H」です。

新製品はホットクックの「美味しさ」に関する機能はそのまま、かき混ぜ機能やWi-Fiなどの一部機能を省いています。気になる使い勝手はどうなのか? 発売前に少し使ってみました。

  • 新製品の水なし自動調理鍋ヘルシオ ホットクック withシリーズ「KN-MN16H」。色はブラック一色。価格はオープンで市場推定価格は39,000円前後です

ホットクック withシリーズはどんな自動調理鍋?

新製品であるKN-MN16Hは調理容量1.6Lタイプの自動調理鍋で、煮込みや炒め、ゆで、炊飯、発酵、低温調理、ケーキなどの焼き料理まで可能。さらに、付属の蒸しトレイを利用することで蒸し調理や、炊飯と蒸し料理を同時にするような「2段調理」にも対応します。

  • 本体サイズは幅316×奥行308×高さ221mm、重量約3.9kg。デザイン面では、ホットクックシリーズではフタの上にあった操作部が、本体前面に配置されました。付属品には蒸しトレイがあります

従来までのホットクックとの違いは、なんといっても「かき混ぜ機能」を搭載していないことでしょう。

既存のホットクックは内蓋部分に「かき混ぜユニット」を搭載しており、加熱中にほどよいタイミングとパワーで食材を混ぜたり、潰す、泡立てるといった調理まで鍋がおこなってくれました。かき混ぜ機能には、少ない調味料でもムラのない煮込みの実現や、焦げ付きの低減、調理時間を短くするといったメリットも。

  • 従来のホットクックと新製品の内蓋の違い。従来はかき混ぜが必要なタイミングでアームが飛び出し、食材をかき混ぜることができました。新製品は構造なシンプルな分洗うのが楽になっています

とはいえ、じつはホットクックにとって「かき混ぜ機能」は便利機能のひとつでしかありません。ホットクックの真価は「料理を誰でも美味しく調理できる」という点にあります。

具体的に言えば、ホットクックのもつ「食材の水分だけで煮込み料理が作れる無水調理」と「温度と蒸気のダブルセンサーを使って、難しい火加減も食材にあわせて自動調整」のふたつの機能がホットクックの核なのです。

今は無水調理ができる製品が増えていますが、複数のセンサーを使った火加減や、自動調理メニューの美味しさやメニューバリエーションの豊富さは、発売から10周年という積み重ねのあるホットクックだからこその魅力といえます。

新製品となるKN-MN16Hは、このホットクックならではの無水調理や多彩な内蔵メニューに対応しています。

  • 新製品のメニュー選択画面。エントリーモデルの自動調理鍋は「3-5」といった番号でメニューを入力する製品も多いのですが、新製品のKN-MN16Hは料理名で検索できるのが便利。Wi-Fi機能が省かれたのでスマホからのメニュー選択機能はなくなりましたが、調理方法や食材などから料理を検索することもできます

かき混ぜ機能がなくなったため、KN-MN16Hの新機能として搭載されたのが「まぜナビ」機能です。

これは「調理中に具材をかきまぜたほうが美味しくなる料理」にかぎり、調理中の最適なタイミングで具材をかき混ぜるように知らせてくれるという機能。KN-MN16Hにはこのまぜナビ機能対応メニューが30種類内蔵されています。

さっそく肉じゃがを作って「まぜナビ」機能を体験

実際にKN-MN16Hを使ってホットクックの公式メニュー「肉じゃが」を作ってみます。

従来のホットクックでは、加熱中にかき混ぜユニットが材料を混ぜることで、少ない調味料でも具材全体にムラなく味が染みこんでいました。またジャガイモがかたい内はしっかり混ぜ、火が通って柔らかくなると優しく食材を混ぜることで、できあがりのジャガイモが崩れることなく仕上がる点も便利でした。

新KN-MN16Hも途中までの作り方は同じ。鍋に野菜と肉、調味料を入れて「肉じゃが」メニューを選択します。この段階では汁気がほとんどなく、上のほうにあるジャガイモに火が入るのかちょっと心配になる見た目です。

  • 2人分の肉じゃがの材料をいれたところ。しょう油や酒などの液体調味料は合わせて大さじ4.5杯分しかなく、火が入る前の段階では肉に砂糖をかけただけのような見た目です

  • 「肉じゃが」を選択後は「まぜナビ」調理か、混ぜずに調理するかを選択できます。忙しい時は、できあがりまで一切手間がかからない「調理を開始する」を選ぶとよさそう

  • 加熱調理中は完成までの時間がカウントダウンされるので、他の料理を作るタイミングの調整ができて便利です

加熱開始後25分ほどで「まぜナビ」のアラームが鳴り、液晶画面に「味を全体になじませるため上下を入れ替えるように大きく混ぜてください」というアドバイスが表示されました。ちなみに、まぜナビのアドバイスは「ちゃんぽん」なら「めんをほぐしながら手早く混ぜてください」など料理によって異なります。

  • 「まぜナビ」の画面。アドバイスとともに混ぜるタイミングをお知らせ

  • 混ぜる前の肉じゃがの様子。野菜の水分が出ることで鍋底に煮汁が溜まっていますが、汁に浸かっていない上の方の野菜や肉は白いままでした

アドバイス通りにかき混ぜた後はフタを閉めてスタートボタンを押し、約10分後に肉じゃがが完成。かき混ぜ前は味のムラできることを危惧しましたが、できあがりは全体にしっかり調味液の色が行き渡っていました。

ジャガイモが柔らかくなってからかき混ぜるため、ジャガイモが崩れてしまうことが心配でしたが「調理中にかき混ぜるのが1回だけ」であるためか、思ったよりジャガイモの崩れも気になりません。

筆者は普段から肉じゃがを作りますが、ジャガイモの崩れにくさは「かき混ぜ機能があるホットクック > 新製品KN-MN16H > 普通の鍋で手動調理」という印象です。

  • 完成した肉じゃが。ジャガイモは面取りをせずに調理したのですが、そこまで煮崩れていないのがわかります

  • 煮込み時間は約35分ほどでしたが、中までホロホロでしっかり味が染みこんでいました

結局withシリーズのメリットとはなんなのか?

どこよりも早く「混ぜる機能」を搭載した自動調理鍋というのが、ホットクックシリーズのわかりやすい特徴でした。今回の新製品ではあえてこの混ぜ機能をはじめとした複数の機能を省き、価格を抑えることに成功しています。

とはいえ(発売後に価格が落ちる可能性はありますが)市場推定価格は39,000円前後というのは、一般的な自動調理鍋としては決して低価格とはいえません。また、自動調理鍋としては珍しい「圧力機能非搭載」という点もネックになるユーザーはいるでしょう。

今回、新製品を実際に使って感じたKN-MN16Hのメリットは「無水調理の美味しさ」「圧力機能がないからこその使い勝手のよさ」「最大15時間の予約調理」「片付けのしやすさ」の4つ。

筆者は家電ライターという職業上、さまざまな自動調理鍋の無水料理を食べていますが、ホットクックの無水調理の美味しさはそのなかでもトップクラスです。

「圧力がないからこその使い勝手のよさ」も見逃せません。たとえば、圧力鍋は粘度の高い煮込み料理が出来ません。そこで、カレーを作る場合も「野菜と肉が柔らかくなるまで煮込む(圧力)」「ルーを入れてさらに煮込む(非圧力)」と2段階の調理工程が必要になります。しかし、ホットクックなら最初からルーを入れた状態で調理ができるのです。

  • 歴代のホットクックシリーズ一番の人気メニューだと思われる「チキンと野菜のカレー(無水カレー)」。最初に野菜と肉、ルーを鍋に入れてメニューを選ぶだけで、野菜の旨みあふれる美味しいカレーができあがります。無水カレーは「まぜナビ」メニューにも対応

  • 水を入れないで作ったとは思えないくらいトロトロの仕上がり。最初からルーをいれているためか、2日目のカレーのように大きめの肉にもしっかりとカレーの味が染みこんでいます

調理中でもフタを開けられるのも、圧力がないからこその便利さ。圧力鍋は一度圧力をかけたら、減圧が終わるまでフタが開きません。このため「具材を入れ忘れたから急いで追加したい」「煮込み具合をチェックしたい」といったことが気軽にできないのです。

たとえば、筆者は今回まぜナビメニューにある「具だくさん味噌汁」を作ったときに味噌を入れ忘れてしまったのですが、ホットクックなら加熱途中でも好きなタイミングでフタをあけて味噌を投入できます。ある意味、普段使っているコンロに近い使い方ができる自動調理鍋といえそうです。

  • 新ホットクックで調理した「具だくさん味噌汁」。公式レシピでは最初から味噌も投入するのですが、今回は味噌を後半にいれたことでむしろ香りが飛ばずにより美味しくなった気さえします

また、自動調理鍋は肉や魚などの腐りやすい食材を扱うため、予約調理ができない製品も多くあります。そんななか、KN-MN16Hは予約待機中も絶妙に温度を調整することで最大15時間までの予約が可能です。

  • 食品が腐らないように温度をキープしつつ、食べたい時間に一番美味しくなるように温度を調整してくれます

  • かき混ぜ機能も圧力機能もないので、部品構造がシンプルで洗いやすいのは新製品ならではのメリットかもしれません

正直な感想をいえば、予算と置き場所に困らないならかき混ぜ機能搭載の既存のホットクックが絶対に便利です。ただ、かき混ぜ機能がない新製品KN-MN16Hも、美味しさや使いやすさの点では「ホットクックらしい製品」だと感じました。

「予算は抑えたいけれど、ホットクックを使ってみたい」「今使っているホットクックが便利だから、2台目が欲しい」という人は一度チェックしてほしい製品だと思います。