第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は5回戦が進行中。11月8日(金)には渡辺明九段―佐々木勇気八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、渡辺九段の角換わり早繰り銀をうまくいなした佐々木八段が152手で勝利。4勝1敗として挑戦権争いに踏みとどまりました。
熾烈な先陣争い
今期のA級は永瀬拓矢九段(4勝1敗)と佐藤天彦九段(4勝0敗)を3勝1敗の渡辺九段と佐々木八段が追う展開。上位に踏みとどまるためにこの一戦はなんとしても負けられません。角換わりに進んだ本局は先手の渡辺九段が早繰り銀の急戦策を披露、繰り出した右銀を盤上中央に進めて主導権を握ります。
水面下で研究が進む形を前に両者早いペースで指し手が進みます。右金を繰り出して攻めに厚みを加えたのは先手番での先攻を好む渡辺九段らしい積極策。金銀の協力で後手からの仕掛けを封じているのが自慢です。これを見た佐々木八段は局後「作戦負けか」と明かしましたが、それとは裏腹に盤上は後手ペースへと転じていくことに。
佐々木八段の時間攻め
黙っていては苦戦と見た佐々木八段が9筋からの動きを見せたとき、中央に自陣角を据えた手は渡辺九段が局後まっさきに後悔した一手。盤面全体をにらんでいるようですが右方には後手の金銀の厚みがあり攻めが不発、また左方では香を取ったあとに有効手がないのが渡辺九段の誤算でした。感想戦では渡辺九段のボヤキが止まりませんでした。
攻め続けるよりない渡辺九段は角を切って勝負を迫ったのに対し、形勢と持ち時間の両方でリードする佐々木八段はいわゆる「時間攻め」で余しにかかります。終局時刻は翌9日0時24分、最後は逆転の見込みがなくなったのを認めた渡辺九段が投了。途中で若干形勢が接近する場面はありつつも、総じて佐々木八段がリードを広げた一局となりました。
これで勝った佐々木八段は4勝1敗、敗れた渡辺九段は3勝2敗の成績に。次戦6回戦で佐々木八段は増田康宏八段と、渡辺九段は千田翔太八段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)