セレクトラ・ジャパンは11月7日、「児童手当の使い道」についての調査結果を発表した。調査は2024年10月21日~22日、子育てが終わった親250名を対象にインターネットで行われた。

子育てが終わった親が選ぶ児童手当の使い道ランキング

  • もし子どもが中学生から高校生の時期に月額1万円の児童手当が支給されていたとしたら優先する使い道は?

「子どもが中高校生だった時に、児童手当がもらえたら、何を優先するべき?」という質問に対して、児童手当は「教育関連」に使用するという回答者が68.4%を占めた。

続いて、「習い事」や「部活」が続く。回答者数は少数だが、これらの選択肢は「勉強以外に様々な経験をさせてあげたい」「こどもの得意分野を伸ばしたい」といったような勉強以外の面を重視する回答者が集まった。

1位「大学進学のための貯蓄・投資」

大学進学には多額の費用がかかるため、早めに貯蓄や投資をして備える必要があると考える人が多い結果となった。回答者の子どもが中高生だったころ、特にお金をかけていた項目は「学習塾・予備校」が1位だったが、意外と学費にお金がかかったという後悔の経験をもとに進学費用を選択していた。具体的には、「県外の大学に進学させるのには思ったよりもお金が必要だった。できるだけ本人が希望する進路を選ばせてあげたいと思った」(広島県65歳女性/専業主婦・主夫)といった回答が寄せられている。

一方、「高校卒業後留学の希望があったので、中学生の時から計画的に資金の準備をした。手当を他の用途に回さずその時子供に必要が無くても積立ておく」(大阪府67歳女性/共働き(フルタイム))といったように、前もって計画的に準備できていた家庭もあった。

どちらの回答者にも共通するのは、「子供が希望する進路を金銭的な理由で諦めさせたくない」「選択肢を与えたい」という意見は共通して見えており、子育て世代に向けたアドバイスも計画的な資金準備が最重要視されている。

2位「学習塾・予備校」

2位は学習塾・予備校だった。「身になるもの」「志望校合格のため」といったような、子どもの目標や課題を達成するためのサポートとして有効な使い道になる、と考えて塾を選択した回答者が目立った。また、月額1万円という児童手当の金額からしても、「塾代に充てるのが妥当」という考え方もあった。

具体的には、「基礎学力の向上と志望校の合格の為。なるべく本人に身につくものがベスト高校進学の際自分の選びたい高校が増えてよかった」(愛知県65歳/男性/共働き(どちらかパート))、「学校教育だけでは不十分と思うから。限られた予算を選択的かつ集中的に使うのがいいと思う」(長崎県68歳男性/シングル)などといった声が寄せられている。

3位「習い事(音楽、スポーツ、芸術など)」

3位は習い事で、回答者からは「目先の受験に捉われず、長い人生を楽しむため、また、苦しい時にも拠って立てる基盤を作ることが出来れば大きな財産となるから。社会に出て実感することは、確かに学歴で差が付く面はあるものの、大学入学時にピークを迎えたような人材では、ほぼ活躍出来ないことが明らかなので、人としての厚みを増し、引き出しを多くすることが大切だと思います」(茨城県64歳女性/共働き(どちらかパート))といった声が寄せられた。

進学の費用や学習塾など、進学に関わる教育関係に回すとした回答者が多数だったため、3位の習い事は、上位2項目と比べると一気に回答数が減る。しかし、「子どもの個性を尊重」「勉強以外の自己実現」など、学業以外の分野で幅広く経験を積むことを重視した回答者が集まった。

4位「部活動の活動費(遠征・合宿費用など)」

4位は部活動の活動費で、「県内ではスポーツエリート校のサッカー部員であり、試合の移動距離が長いため、活動費がかかるので、そこの補填に用いるのが合理的と考えた。親の意向と子供の意向がおおむね合致していれば親としては子供の進路に頭を痛める必要はないが、そうでない場合は、学習の意欲を削がないように対応することからやるべきと思う」(香川県56歳男性/共働き(フルタイム))といった声が寄せられている。

「今しかできないこと」「子どもの意見を尊重したした使い道」として、部活動の活動費と回答した人が集まった。実際、回答者自身の子どもが中高校生の頃に、部活に熱中していたため、「部活やクラブ活動にはに費用が掛かる」という実感が強い人が多い印象だった。

5位「テクノロジー機器の購入(パソコン、タブレットなど)」

テクノロジー機器は現代では「必須」として、最新のIT環境や技術への対応力と実用性を重視した回答が目立った。無駄なく実用的に活かせる費用の使い道といえる。具体的には、「テクノロジーの発達は早いのでそれに対応した機種を買い与えたいから。こどもにお金がかかっている時はとても負担にかんじたが、過ぎてみるとそれもまたいい思い出になると思う」(東京都63歳女性/共働き(フルタイム))との声が寄せられている。

子育てを終えた親が「特にかけた費用」と「その満足度」

ここまで、回答者のアドバイスが中心だったが、ここから回答者自身の子どもたちが中高生だったころ、何に費用をかけてきたのか?その費用をかけてよかったのか?といった回答者自身の「経験」についての調査結果を紹介する。

  • お子さまが中学生から高校生までの間に、特に費用をかけた項目について、1番目から3番目まで順にお選びください

回答者の子どもが中学生・高校生だったころ、特に費用をかけた項目は「学習塾・予備校」がトップだった。「学習塾・予備校」を選択した多くの回答者が、学習塾・予備校は大学や希望する学校への進学に向けて必要な学力を養うために利用したと回答している。「受験対策」「大学進学のため」「志望校の合格のため」子どもの具体的な目標を叶えるためとして費用をかけている。

具体的には、「中高一貫校から東大及び医学部を目指していたため、弱い教科に応じて塾や予備校を選んで通わせていた」「学校の授業だけでは足りないと思ったので、学習塾を選んだ」「本人がやる気を見せたのでお金をかけた」とのことだった。

お金をかけて良かったと思う費用項目「海外・ホームステイ」「進学のための貯蓄投資」

次に、各費用についてどのくらいお金をかけて良かったと思ったかについて調査した。

  • 1番目から3番目にかけたそれぞれの費用について振り返った結果、お金をかけて良かったと感じますか?

おおよそすべての項目で「とてもよかったと思う」または「よかったと思う」といった回答になった。

満足の度合いが高かった「海外・ホームステイ」

海外・ホームステイに特に費用をかけたとした回答者は25名で全体回答者の10%だった。さらに「グローバルな視点を持ってもらえた」「自分のことは自分で決めるようになった」と、お金をかけただけよかったと思う回答者の割合も高い傾向にあった。

しかし、「海外・ホームステイ」に費用をかけた25名の回答者に関しても「もしいま児童手当を使えるなら」という質問では、40%が「進学のための貯蓄・投資」を選択している。やはり資金準備は重要だと実感していることがわかる。

満足の度合いが高かった「進学のための貯蓄・投資」

次に、「進学のための貯蓄・投資」に特に費用をかけた回答者は176名で、全体の70%を占める。それでも費用をかけてよかったと感じている回答者が多く見られた。さらに、「もしもいま児童手当を使えるなら」という質問でも、176名中87名約50%が「進学のための貯蓄・投資」を選択している。

子育てを振り返って:子どもに影響を与えた費用項目

特に費用をかけた1位~3位の項目がどの程度子どもに影響を与えたか。回答者の自由回答をもとに、費用の影響の種類を4つに分類した。

各分類ごとに、回答者が特に費用をかけた項目を集計し、全体の有効回答者数(245名)との割合を求めた。この割合から、影響力の高い費用項目を分類ごとに紹介する。

  • 特に費用をかけた項目について、その費用はお子様の進路や職業選択にどのように影響しましたか

  • 直接もしくは間接的に進路・職業選択への効果があった費用項目

直接影響した項目と、間接的に影響した項目については3位大学進学のための貯蓄・投資がもっとも回答人数は多い項目だった。全体回答者数に対して特に割合が大きかったのは、資格取得のための講座・検定、テクノロジー機器の購入だった。

  • 成長・人格形成に対して影響があった費用項目

成長・人格形成に影響した項目に関しては、コミュニケーション能力や頑張る力など、勉強や進路に影響があったという回答を分類した。

ファイナンシャルプランナーが解説「子どもの年齢別のおすすめ使途」

回答者よりここまで大学進学に備えるべきというアドバイスが目立ったが、本当に気になるのは実際月1万円で何ができる?ということ。

保険・貯蓄・投資などの進学資金を用意するための方法別のメリットデメリット、さらにどれだけ運用期間があるかによっておすすめ手段は変わる。ファイナンシャルプランナー専門家の吉野祐一氏が解説する。

方法別(保険・貯蓄・投資)のメリットとデメリット

まず月額1万円の使い道としてどのような方法があるのか。代表的な方法とそのメリットデメリットは下記のとおり。

  • 方法別(保険・貯蓄・投資)のメリットとデメリット

子どもの成長に合わせたベストな使い道も紹介している。

  • お子さまの成長に合わせたベストな使い道

1万円追加でできる家計の見直しポイント

大学進学時の費用が大きくなることで、長期での積み立てを行うことが大切となる。子どもが小さいころから準備ができるのであれば、積極的に運用を行い、インフレ率よりも高い利回りを確保することで、実質でも資産を増やしていけることになる。大学進学で考えなくてはいけないのは、学費だけではなく、家元を離れて大学に通う場合には、アパートや寮の費用、子どもの食費や光熱費など、出費が多くなる。もちろん子どもの人数が増えれば、さらにお金が必要になる。

額面だけに捉われず、実質の価値を考えた準備方法も必要だという。まず収入から余った分を貯蓄するのではなく、目的に合わせた貯蓄を優先して余った分で生活していくことも考えて資金計画を行うことが大切だという。