歌手、タレント、女優と幅広く活躍し、現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)でききょう/清少納言役を好演しているファーストサマーウイカ。本作のクランクアップを迎えた直後にインタビューし、初の大河ドラマ出演がどんな経験になったのか話を聞いた。
大河ドラマ第63作となる『光る君へ』は、平安時代を舞台に、のちに世界最古の女性による小説といわれる『源氏物語』を生み出した紫式部の人生を描く物語で、主人公・紫式部(まひろ)を吉高由里子が演じている。ウイカが扮するききょう/清少納言は『枕草子』の作者。一条天皇に入内した定子(高畑充希)のもとに女房として出仕し心からの忠誠を尽くし、定子の死後は深い悲しみを抱えながら生きてきた。
クランクアップを迎えたウイカにインタビューすると、「あっという間でした」と撮影を振り返った。
「撮影が濃密な月もあれば、月に1、2回の時もありましたが台本をいただくのが楽しみで、1年の早さが今までの人生の中で最速に感じましたね。1回1回の重みを感じながらも、ずっとワクワクし続けた1年でした」
撮影は常に緊張感があったという。
「出てくるたびに歳を取っていて、話も大きく進んでいたりするので、常に空白の期間を埋めながらききょうの人生を紡ぎ続けないといけない。1年間常に緊張感がありました」
ききょうは定子が亡くなってから変化していったが、ウイカは「定子様が崩御されてから、『闇堕ち』とネットで表現されることもありましたが、ききょうにとっての『光る君』だった定子様が亡くなり、光を失ってしまった。闇に堕ちたのではなく闇に包まれて何も見えなくなってしまったのかなと私は解釈していました。そして、定子様へのゆるがぬ信念や使命感ゆえに、闇の中でもがき苦しみ、悲しみが恨みになりどんどんと増長して、あのようになってしまった」と語った。
そして、ききょうのことを「他人のように思えない。親近感を持って接することができるキャラクター」と感じていたウイカだが、後半は共感できないと感じることもあったという。
「ききょうはあけすけでオープンなキャラクターだったと思いますが、人ってワントーンではないですよね。グラデーションしていくものです。ただ、後半のききょうは、『私だったらこんな態度とらないかも』と思うシーンもあり、最初に抱いた親近感が失われる瞬間もありました。定子様を失ったききょうのように、自分にとっての『光る君』を失うとどんな心情になるんだろう、と自問自答しながら役へ向き合いました」
定子の死後、恨みを抱え、毒づく場面もあったききょうだが、10日放送の第43回では、「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います」と、吹っ切れたように語る場面があった。
「牙が抜けた! って思いました。どうやって闇から抜け出したのか、台本で描かれていない空白の期間は想像で埋めなければならないので、ききょうがどういう日々を過ごしていたのかなといろいろ考えました。何か物事を頑張ってやっているときに『もう無理だ。や~めた!』ってお手上げ状態になる瞬間が訪れたりもするし、限界を感じて、引退することを決めるみたいな感じもある。刹那な瞬間に恨みつらみの人格がふっと消え去ったということもあり得るかなと。そして、憑き物が取れたら丸くなったというか穏やかな日々が帰ってきたのかなと思います」
定子の死後、ききょうが定子の衣装を着て登場する場面があり、SNSでは「清少納言が定子さまの形見の着物を着ている」などと話題に。ウイカもこの衣装は特にお気に入りだという。
「定子様が着ていた着物を着たとき、衣装さんに『これ定子のですよ』と言われて『うわ~!』って涙が出そうになるくらい、形見を着ているところはグッときました。それを説明するところはないですけど、気づいてくださっている視聴者の方がたくさんいらっしゃって、驚きましたしうれしかったです。そういうバックボーンを彩って役にパワーをくださるスタッフ陣のプロの技に本当に感謝でした」
本作で風俗考証を担当している佐多芳彦氏も絶賛したというウイカの着物の所作については「練習しました」と胸を張り、限られた登場シーンの中でしっかりとキャラクターを表現するために、一瞬一瞬に全力を尽くしたと語る。
「限られたわずかな時間でキャラクターを印象づけることも、登場人物の多い物語では必要なことだと考えています。怒り心頭なききょうのシーンが放送されて、いろんな反響がありましたが、定子がいなくなってからの彼女の数年をあの数分で表現しなければならないという任務があると思うと、どれだけ濃度を高めて出せるかというのは大切にしていました」