行楽の秋がやってきました。秋晴れの中、自転車で風を切る瞬間は格別。紅葉を眺めながら少し冷たい、爽やかな空気を感じて走るひと時を楽しみたい季節です。今回、ドンキホーテから登場した電動アシスト自転車「EVA PLUS CROSS」をメーカーから借りて試乗する機会を得たので、レポートをお届けします。
ドンキの電動アシスト自転車「EVA PLUS CROSS」とは?
EVA PLUS CROSS(エヴァ プラス クロス)は、ドン・キホーテの独自ブランド「情熱価格」で販売しているクロスバイク型の電動アシスト自転車。通勤通学から週末の街乗り・軽めのアウトドアまでをカバーする幅広い用途を想定しています。フレーム内にバッテリーを内蔵し、一見して電動アシスト自転車には見えないデザインを採用したほか、販売価格が109,780円とバッテリー内蔵型のクロスバイクとしては価格を抑えた点も特徴です。
外観と機能をチェック
見た目は一見すると普通のクロスバイクで、外付けバッテリーから醸し出される“電動アシスト感”はほぼありません。フレームはアルミ製、カラーはマットブラック、マットチタングレーの2色に加え、台数限定のカーキも用意されており、いずれもマット塗装です。
EVA PLUS CROSSの主な特徴・機能は次の通り。
- 耐久性の高いアルミフレーム
- 3段階の電動アシスト
- 走行距離などが表示されるディスプレイ
- 27.5×1.95インチの太めタイヤ
- 外装7段変速
- 1つの鍵でワイヤーロックとバッテリーを施錠
- 前輪・後輪に泥除け
- バッテリーを含め約19.8kgの重さ
適応身長のめやすは155cm以上。170cmの男性が立った状態で、手をまっすぐに伸ばしてハンドルが握れるくらいのサイズ感です。サドルは支柱裏にあるクイックレバーを開閉して高さを調節でき、ボルトで締めるタイプやレバーを回すタイプと比べ、手軽に上げ下げできます。車体はアルミ製フレーム、全体はマットな黒で統一(ブラックカラーの場合)され、見た目は良好。27.5×1.95インチとやや太いタイヤであることもあり、チープさはあまり感じられません。
一方で、他の自転車メーカーが販売しているスポーツタイプの電動アシスト自転車と比べると、パーツの選択には価格を優先した部分も見られます。例えば他社製品では、錆びにくく停車中でも変速できる内装ギアや、強力で消耗しにくいディスクブレーキを採用した車種もありますが、本機はそれぞれ外装7段ギア、リムブレーキ(Vブレーキ)です。また、バッテリー容量も6.0Ah/36V(216Wh)と、300Wh以上の車種も多い中でやや心もとなく見えます。ただ、これらは大手メーカーの10万円台後半~20万円以上の製品と比較した場合の違いなので、価格相応の部分といえそうです。
実際の乗り心地は?
舗装された街中の道路や、未舗装路がある大型広場などで試乗してみました。アシストは1~3まで3段階を設定でき、漕ぎ出し時はバッテリー消費が最も少ない「1」でもぐっと強いアシストがかかり、最初は戸惑ったもの次第に慣れ、街中で軽快に走行できました。特に橋を超える時など、坂道でのアシスト力は力強かったです。また太目のタイヤで走行中の安定感は大きく、特に漕ぎ出しや段差でふらつきにくかったように感じます。
ギアは1~7まで7段階あり、5~7の重いギアでもアシストのおかげで十分軽い力で漕げたため、都内の街中では5~6を標準で使い、スピードが安定したときに7へ入れる形で試乗していました。変速はグリップタイプで右手で調節しますが、軽い力で動かせ、上り坂・下り坂・平地など状況に応じて細かく切り替えられます。ハンドルの太さが個人的には細く感じ、もう少し径が大きい方が握りやすかったです。
ブレーキの効きは良好。個人的には少し“遊び”多めという印象でしたが、制御はしやすく、電動アシスト自転車の加速に慣れない人が急ブレーキで転倒するといった心配はなさそうです。車体は20kgを切る重さのため、駐輪場で持ち上げて動かす際も、普段のママチャリと比べて特に重く感じることはありませんでした。
一般的なクロスバイクでは軽量化や乗車バランスのため省かれることもあるスタンドや泥除け、ライトが付いている点も、街乗り向きで好印象でした。ライトは街灯がある場所では夜道でも十分な光量。街灯がなく真っ暗な場所ではやや心もとないかもしれません。
今回約20kmほど試乗しましたが、3段階で表示されるバッテリー残量はフル表示のままでした。公式ではアシスト「1」のエコモードであれば約60kmの走行が可能とされていますが、欲を言えばもう少し大容量のほうが、よりパワフルなモードを多用したり、上り坂の多いルートを走ったりしてもバッテリー切れの不安がなくなると思います。ただ、7段変速で道に合わせて細かくギアを変えられるので、アシストを切った状態でも、軽いギアを選択すれば、速度は落ちますが楽に運転可能です。
デザイン面だけで言えば、バッテリ―内蔵モデルを用意するヤマハのCROSSCOREシリーズやパナソニックXEALTシリーズ、MIYATAのCRUISE iシリーズが競合にあたりそうですが、優位性はなんといっても価格。これらが15万円~30万円以上の実勢価格であるのに対し、本機は10万円強の価格で購入できる点が魅力です。
一方、上で挙げたように外装変速やワイヤーロック錠、バッテリー部分などは、専業自転車メーカーのものを選んで安心したいユーザーもいると思われます。特にバッテリーに関しては、炎天下の屋外に常駐させることも多い自転車という特性上、劣化や破損させたくないパーツ。ブランドや実績から得られる安心感を重視して、大手メーカーのものを選びたい人もいるかと思います。
スペックにこだわらずスポーツ電動アシスト自転車が欲しい人に
EVA PLUS CROSSは、「ブランドやパーツのスペックにこだわりはないが、スポーツタイプの電動アシスト自転車がほしい」という人におすすめです。ママチャリ型の電動アシスト自転車よりも軽快な走りを楽しむことができますし、バッテリーがフレームと一体となったスタイルでは最も低価格帯の車種であり、コストパフォーマンスに優れます。一方で、前述のバッテリー容量など、他社のより高価な製品と比べると違いがあるのも事実ですので、近距離サイクリング用として使うといった割り切りは必要です。