ソニーグループが発表した2024年度上期(2024年4月~9月)の連結業績は、売上高および金融ビジネス収入が前年同期比2.2%増の5兆9172億円、営業利益は同42.3%増の7341億円、調整後OIBDAは同31.6%増の1兆813億円、調整後EBITDAは同28.3%増の1兆684億円、税引前利益が同43.8%増の7671億円、当期純利益が同36.5%増の5701億円となった。売上高は上期としては過去最高を更新した。

また、金融分野を除く連結業績は、売上高は前年同期比10.5%増の5兆5408億円、営業利益は同43.2%増の6384億円となった。

  • 【決算深読み】ソニー 過去最高の上期決算、ゲーム事業がけん引し通期も最高益更新へ

    2024年度上期(2024年4月~9月)の連結業績

  • 2024年度第2四半期(2024年7月~9月)の連結業績

2024年度通期(2024年4月~2025年3月)業績見通しは上方修正を行い、売上高および金融ビジネス収入は、前回公表値から1000億円増加の前年比2.4%減の12兆7100億円、営業利益は据え置き、同8.4%増の1兆3100億円、調整後OIBDAは50億円増加の同9.2%増の1兆9950億円、調整後EBITDAは50億円増加の同9.7%増の1兆9950億円、税引前利益は据え置き、同5.2%増の1兆3350億円、当期純利益も据え置き、同1.0%増の9800億円とした。

また、金融分野を除く連結業績見通しは、売上高は前年比4.7%増の11兆8000億円、営業利益は同12.5%増の1兆1650億円とした。

  • 2024年度の通期の業績見通しは、今回、上方修正を行った

  • 通期見通し、上方修正の内訳。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野がプラスに貢献している

ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は、「2024年度の通期見通しは、営業利益は過去最高を更新することになり、2026年度を最終年度とする第5次中期経営計画で掲げた3年間累計営業利益率10%以上の目標に対して、いいスタートを切れた」と総括。「下期はG&NS分野において、ファーストパーティーによる大型タイトルがないこと、I&SSで大手顧客の需要調整が入るという影響はあるものの、G&NSや音楽分野などが良好である。中期経営計画の目標達成に向けて成果を出していきたい。変化が激しい事業環境のなか、様々な課題に対処し、グループ全体でサステナブルな成長を実現していけるよう事業運営を進めていく」との考えを述べた。

  • ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏

2024年度から始まった第5次中期経営計画は、最初の半年間は、好調なスタートダッシュを切った格好だ。

  • 第5次中期経営計画における数値目標。今回の決算は、これの達成に向け「いいスタートを切れた」と総括

「コンコード」でつまづくも好調なゲーム事業

2024年度第2四半期(2024年7月~9月)のセグメント別業績と、2024年度の通期計画を見てみよう。

  • 2024年度第2四半期(2024年7月~9月)のセグメント別業績

  • 2024年度の通期で、セグメント別の業績見通し

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年同期比12%増の1兆715億円、営業利益は184%増の1388億円、調整後OIBDAは103%増の1690億円と大幅な利益の増加となった。

ソニーグループ 執行役員 経営企画管理担当の松岡直美氏は、「ハードウェアの減収はあったものの、サードパーティーソフトウェアやネットワークサービスの増収などにより、大幅な増収増益になった。第2四半期としては過去最高を更新した」という。

  • ソニーグループ 執行役員 経営企画管理担当の松岡直美氏

  • ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の実績と見通し

2024年9月におけるプレイステーション全体の月間アクティブユーザー数は、前年同月比8%増の1億1600万アカウントとなり、8四半期連続で前年同期実績を上回っている。総プレイ時間も前年同月比14%増、期初からの累計でも同11%増となり、「プレイステーションプラットフォームが着実に成長していることを示している。プラットフォームビジネスにおける足元のモメンタムは強く、下期以降も安定したユーザーエンゲージメントの拡大と、収益成長が見込める」と自信をみせた。

PlayStation Plusは、上位サービスへのシフトや価格改定の影響などによるARPUの向上が見られ、前年同期比18%増(米ドルベース)の増収を記録。安定した収益基盤になっていることを強調した。

  • プレイステーションの月間アクティブユーザー数が伸び続けている。PlayStation Plusも安定した収益基盤に

サードパーティーソフトウェアでは、堅調なフランチャイズ作品の貢献に加えて、新規のスポーツタイトルや、中国発のアクションRPGタイトルなど、新たなIPのヒットにより、売上げが大きく伸長したという。また、スタジオビジネスでは、9月6日に発売した「ASTRO BOT」が、Metacriticスコアで94点を獲得し、ゲーマーコミュニティから高い評価を獲得していることを示しながら、「発売9週間での販売本数が150万本を超えるヒットとなり、購入者の37%は、過去2年間にファーストパーティーソフトウェアの購入実績がない新規ユーザー。若年層やファミリー層の購買比率も高く、より広いユーザーへの訴求に貢献している」と手応えを示した。

  • ゲーマーから非常に高い評価を得ている「ASTRO BOT」。新規ユーザー、若年層やファミリー層へのリーチでも貢献中

ライブサービスゲームでは、「HELLDIVERS 2」が大ヒットを記録した一方で、「Concord」のサービスを停止するという事態に陥ったことに触れ、松岡執行役員は、「この2つのゲームから大きな経験と学びを得ている。タイトルの開発管理や、リリース後にも継続して拡張コンテンツを投下し、サービスをスケールさせるプロセスなど、成功と失敗からの学びを得ている。これをグループ内のスタジオで共有し、開発マネジメントの仕組みを強化する。ヒットの予見性が高いシングルプレーヤーゲームと、立ち上げに一定のリスクを取りなからも、アップサイドを追求するライブサービスゲームを組み合わせた最適なタイトルポートフォリオの構築を進めていく」と語った。

また、十時社長兼COO兼CFOも、「ユーザーテストや社内評価のタイミングをもっと早くすべきであった。組織が細分化されており、それを横断した企画開発、販売連携がスムーズではなかった反省もある。自分たちのブラットフォームで食い合いが起こらないようにタイトルローンチをすることも大切である」などとした。

同社では、「Ghost of Tsushima」の続編である「Ghost of Yōtei」を皮切りに、2025年度以降、シングルプレーヤーゲームの大型タイトルを毎年継続的に発売していく考えも示した。

  • 「Concord」でつまずいたが、「HELLDIVERS 2」などがヒット。今後の新作ゲームタイトルでは、「Ghost of Tsushima」の続編である「Ghost of Yōtei」などが注目されている

また、ハードウェアは、収益性が改善。PS5は、第2四半期の出荷台数が380万台(前年度同期は490万台)となり、上期では620万台(同820万台)を出荷した。十時社長兼COO兼CFOは、「年間出荷目標の1800万台は維持する。第1四半期は計画より弱めであったが、第2四半期は計画通り。下期はセールスプロモーションを行う予定である」としたほか、「PS5 proはコアユーザーを対象とした製品であり、もともと販売計画は大きくない。価格については、いろいろなコメントをもらっているが、それでも、PS4Proよりも若干強い引き合いがあるぐらいだ。価格設定がPS5 proの販売計画に悪影響を及ぼしていることはない」とコメント。「PS4からPS5へのシフトが進んでおり、PS5に買い替えると、ソフトウェアの購入が増加することになる。ポジティブな影響がある」と述べた。

G&NS分野の2024年度通期見通しは、売上高は前回公表値から1700億円増加し、前年比5%増の4兆4900億円としたほか、営業利益は350億円増加し、同22%増の3550億円、調整後OIBDAは350億円増加の同16%増の4750億円と上方修正した。営業利益は過去最高益を更新する見通しだ。

セグメント別業績、モバイルセンサーも大幅増収だが通期では下方修正

  • 音楽分野の実績と見通し

音楽分野の売上高は前年同期比10%増の4482億円、営業利益は12%増の904億円、調整後OIBDAは15%増の1118億円となった。興行や物販、ライセンス収入、ストリーミングサービスの売上げが増加した。ストリーミングサービスの売上高は、音楽制作と音楽出版のいずれもが前年同期比9%増を記録。松岡執行役員は、「The OrchardやAWALによる楽曲のデジタル配信や、アーティストサービスを通じて、新興市場を含めたグローバルでの事業拡大を実現している。ストリーミングが進んでいる国や地域では、音楽カタログの視聴が増加しており、2023年の米国音楽制作市場では、リリース後18カ月を超えるカタログ楽曲の視聴シェアは73%にも達している。Spotifyのグローバルトップ200においても、リリースから10年を超える楽曲のシェアは、2024年7月までの集計で20%以上になっている。ユーザーの年齢構成が成熟世代にシフトしていること、ソーシャルプラットフォームをきっかけに若い世代のリスナーが、過去の大ヒット曲の視聴機会を増やしていることが要因である」と分析した。

  • ストリーミング売上の成長

  • 音楽カタログの視聴が増加中。とくに米国市場ではカタログ楽曲の視聴シェアは73%にも達している

  • ソニーの音楽カタログの主要アーティスト。強力なラインナップであることは明白

ソニーグループでは、「エバーグリーン」と呼ばれる楽曲による音楽カタログを厳選し、積極的な投資によって、取得やライセンス契約の締結を進めてきた経緯がある。これらの資産がストリーミングでの視聴や、映画および広告での利用を通じて、長期に安定した収益基盤になっているというわけだ。さらに、ソニーグループでは、アーティストの名称、画像、肖像に関する権利も取得しており、マーチャンダイジングや体験型ライブイベントの開催などによる追加的な収益確保にも取り組んでいく考えも示す。

「ソニーグループの音楽事業全体にいい影響を与えるだけでなく、ソニーグループを横断して、これらの資産の活用を進めることができる点もメリットである。音楽カタログについては、今後も規律を持ちながら、取得の機会を検討していく」と述べた。

音楽分野の2024年度通期見通しは前回公表値を据え置き、売上高は前年比7%増の1兆7400億円、営業利益は前年比9%増の3300億円、調整後OIBDAは前年比14%増の4200億円とした。

  • 映画分野の実績と見通し

映画分野の売上高は前年同期比11%減の3558億円、営業利益は37%減の185億円。調整後OIBDAは24%減の325億円となった。「前年のストライキの影響などにより、テレビ番組作品の納入数の減少があり、減収減益となった。ストライキの影響からの回復は道半ばである」との見方を示した。

その一方で、8月9日から公開した「IT ENDS WITH US」が期待を上回る興行収入を達成したことに加えて、6月公開の「バッドボーイズ RIDE OR DIE」、10月に公開した「Venom: The Last Dance」などの大型作品が増えており、下期から来年度にかけては、テレビや動画配信サービス向けライセンス収入の回復が期待されるとの見方を示した。

  • 「IT ENDS WITH US」が期待を上回る興行収入を達成。バッドボーイズとヴェノムも今年の大型作品だ

また、Crunchyrollは、Amazon Prime Videoチャンネルとの提携に続き、YouTube Primetimeチャンネルとも配信契約を締結。年末からサービスを開始するなど、グローバルでのユーザーベースの拡大に弾みをつけている。また、アニメ作品の増加に注力しており、世界中のアニメファンとのエンゲージメントを高める施策にも取り組むという。

映画事業の2024年度通期見通しは、売上高は前回公表値から100億円減少し、前年比1%増の1兆5100億円、営業利益は100億円減少の同2%減の1150億円、調整後OIBDAは50億円減少の同1%減の1700億円。「メディアネットワークにおけるインド事業の業績見通しの見直しにより下方修正した」という。インド市場は、広告市場が軟調であり、有償テレビ視聴者の減少などの影響があるという。ソニーグループでは、8月に発足したインドにおける新経営体制により、継続的な視聴率の改善やオペレーション強化などを進めている段階にあることを明らかにした。

  • エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の実績と見通し

エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年同期比1%増の6198億円、営業利益は15%増の702億円、調整後OIBDAは10%増の960億円となった。2024年度通期見通しは据え置き、売上高は前年比1%減の2兆4200億円、営業利益は同1%増の1900億円。調整後OIBDAは前年並の2900億円とした。

ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏は、「為替のプラス影響や費用削減効果により増益となっている。北米、欧州、中国、日本といった主要市場は安定して推移している」と総括した。

  • ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏

この分野では、スポーツ事業における取り組みについて言及した。映像データをもとに審判判定支援ソリューションを提供するHAWK-EYEを中核に、パートナーとの協業や新たなテクノロジーを取り組むことで、さらなる事業機会の拡大を進めていると説明。米NLFとのテクノロジーパートナーシップを発表したほか、米KINATRAXを買収し、信頼性の高いスポーツデータを取得し、HAWK-EYEとの連動により、データ蓄積と活用の最大化を目指すという。

  • 映像データをもとに審判判定支援ソリューションを提供するHAWK-EYEを中核に、パートナーとの協業や新たなテクノロジーを取り組む

「現時点では、スポーツ事業の規模は大きくはないが、安定した高収益が期待できる事業である。事業拡大に注力していく」との姿勢を明らかにした。

  • エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の実績と見通し

イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比32%増の5356億円、営業利益は99%増の924億円。調整後OIBDAは50%増の1612億円となった。モバイル向けイメージセンサーの増収や、為替がプラスに影響した。2024年度通期見通しは、売上高は前回公表値から800億円減少の前年比10%増の1兆7700億円、営業利益は250億円減少の同29%増の2500億円、調整後OIBDAは250億円減少の同19%増の5250億円としている。

早川執行役員は、「スマホ市場は、中国や欧州でプラス成長が継続。北米市場では回復の兆しが見られている。スマホ向けのモバイルセンサーの売上げは、センサーサイズの大判化による単価上昇と、大手顧客のスマホ新製品に向けたイメージセンサーの順調な出荷により、大幅に伸長した。分野全体では、第2四半期としては過去最高の売上げを記録した」と報告。だが、「下期は大手顧客の生産計画の見直しを反映し、モバイルセンサーの売上げ、利益の見通しを下方修正した」という。また、生産面では、モバイルセンサーの歩留まりの改善が計画通りに進んでおり、第4四半期には正常な水準での生産が可能になると見込んでいる。

なお、スマホへのAI機能とサービスの実装は、中長期的には市場の活性化とハイエンド製品へのシフトを促すとの見方を示した。

  • 金融分野の実績と見通し

金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比1672億円減のマイナス633億円、営業利益は319%増の657億円、調整後OIBDAは220%増の725億円となった。第2四半期に、大幅に進行した円高によって、ソニー生命の外貨建保険の運用資産が、円ベースでの評価が大幅に減少したことで減収。だが、変額保険などの最低保証に係る市況変動による損益の改善や、金利変動の影響で、ソニー生命が大幅な増益になったという。

2024年度通期見通しには変更がなく、金融ビジネス収入は前年比49%減の9100億円、営業利益は同16%減の1450億円、調整後OIBDAは同6%減の1700億円としている。

ソニーフィナンシャルグループ 執行役CFOの山田和宏氏は、「ソニー生命の新規契約高は好調に推移している。2025年10月に予定しているソニーフィナンシャルグループの上場に向けた準備も進捗している」と述べた。

  • ソニーフィナンシャルグループ 執行役 CFOの山田和宏氏