「薬局」は、日本の医薬品に関するルールを定めた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(いわゆる「薬機法」)の第1章 総則の第2条の12で、以下のように定義されています。
この法律で「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所(その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所を含む。)をいう。
ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。そして一言で「薬局」といってもさまざまな違いがあり、人によって「合う薬局」は異なります。薬局の種類とかかりつけ薬局を持つメリット、選び方について分かりやすく解説します。
◆「調剤薬局」「院内薬局」「ドラッグストア」の違い
まずは、一般に「薬局」と考えられているいくつかの店舗について、違いを解説します。
■調剤薬局
主な業務として、医師が発行した処方箋に基づいて調剤を行う薬局です。
■院内薬局
院内薬局は、厳密には「薬局」ではありません。属する病院の処方のみを取り扱う「調剤所」を指します。
■ドラッグストア
一般に「ドラッグストア」と呼ばれる店舗は、正式な用語ではありません。処方箋がなくても患者自身が購入して利用できる「一般用医薬品」(いわゆる「市販薬」)や、健康・美容に関連した商品、日用品、飲料や食品類を店頭販売しています。
調剤室のないドラッグストアは「薬局」には該当しません。一方で、最近は調剤室を併設したドラッグストアもあります。保健所による薬局開設許可を受けていれば、「薬局」を付した店舗名を使うことができますが、市販薬や日用品の販売が主な設置目的なので、「調剤薬局」には該当しません。
◆「かかりつけ薬局」を持つメリット・期待できること
「医薬分業」が確立した現代では、病院を受診した後、医師に発行してもらった処方箋を院外の「調剤薬局」または「調剤室を設置したドラッグストア」に持参して必要な薬をもらう必要があります。
多くの方は、受診した病院近くの薬局に立ち寄ることが多いでしょう。そうすると、異なる病院を受診するたびに、違う薬局で薬をもらうことになります。たいていの場合はこれでも大きな問題は生じないのですが、できれば毎回同じ薬局を利用することをおすすめします。いわゆる「かかりつけ薬局」という考え方です。
病院の医師は、患者から可能な限りの情報を聞き取った上で、最適と考えられる薬の処方を出します。しかし、初診の場合は、一人ひとりの患者の過去の病歴や、過去から現在に至るまでにどのような薬を使用していて、どのような効果や副作用があったのかを、限られた時間内にすべて把握することは困難です。
そのため、必ずしも最適な処方ができるとは限りません。毎回違う薬局に処方箋を持参した場合も、同じようなことになります。
一方で、自分で決めたいつもの「かかりつけ薬局」に毎回処方箋を持参していれば、薬局側でも患者の病歴や服薬歴のすべてを記録して把握してくれていますから、処方内容がその方に合っているかどうかを、処方の時点でも的確に判断してくれます。
もし処方内容に気になる点があった場合は、処方箋を発行した医師に直接問い合わせ、修正してくれることもあります。
最近は「医薬品不足」が問題になっており、初めて利用した薬局に自分に必要な薬の在庫がないこともあります。その場合も「かかりつけ薬局」であれば、定期的に利用するあなたのために、一定数の薬の在庫を用意してくれることも多く、在庫切れの心配も少なくなります。「かかりつけ薬局」を持つメリットは非常に大きいのです。
◆自分に合った「かかりつけ薬局」を選ぶ3つのポイント
かかりつけの調剤薬局を選ぶポイントは3つあります。
1. サービスや料金が自分の求めているものに合っているか
一つ目は、サービスや料金の違いです。「薬局なんてどこも一緒だろう」と思う方が多いようですが、薬局に支払う料金には主に調剤技術料と薬剤料が含まれており、同じ処方箋を扱う場合でもその内容によって料金が違ってきます。
詳しく知りたい方は、薬局で薬をもらうときに発行される「調剤報酬明細書」で項目を確認して、分からないことは質問してみましょう。
2. 話しやすく、信頼できるか
二つ目のポイントは、自分が話しやすく、信頼できそうかです。何か質問した場合に、親切かつ正確に説明してくれるかどうかは重要なポイントです。
最初から知り合いの薬剤師が勤務している調剤薬局であれば一番いいのですが、そうでなくても、繰り返し利用しているうちに、「いざというときに親身に考えてくれる薬剤師」かどうか見分けられるようになるでしょう。薬局の清潔さや、薬剤師の身だしなみや言葉遣いなども、かかりつけにしたいと思えるかの判断材料になるでしょう。
3. 立地を含めた利便性はよいか
三つ目のポイントは、立地を含めた利便性です。かかりつけ薬局は、病院の近くよりも、自宅近くや通勤経路の途中にあるほうが便利です。病院での受診が終わってすぐ近くの薬局に行ったのに長時間待たされることもあります。早く薬局に行くほど、早く薬が手に入るわけでもありません。
病院とかかりつけ薬局が提携していれば、処方箋が病院から薬局へ電子通信で事前に送信されるというサービスがあり、自宅近くのかかりつけ薬局に到着した時にはすでに必要な薬が準備されていることもあります。
料金の支払いについても、最近はキャッシュレス決済を採用したり、薬の宅配まで行ってくれる薬局も増えていますから、どのような便利なサービスが用意されているかを教えてもらって、薬局選びの判断材料にするといいでしょう。
◇阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
文=阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)