静岡市は、「ホビーのまち静岡」の魅力を伝えるため、東京・新橋「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」にて、メディア向け懇親会を開催した。
会場には静岡市 広報課に加えて、静岡ならではと言える産業振興課 プラモデル振興係の職員が参加。プラモデルや伝統工芸品を多く生み出す「ホビーのまち静岡」、そして静岡市が進める「静岡市プラモデル化計画」の概要を解説した。
●静岡はなぜ「ホビーのまち」?
「静岡市はプラモデルの製造品出荷額が全国No.1」と話すのは、静岡市 商工部 産業振興課 プラモデル振興係 係長の石川直哉氏。静岡市には、青島文化教材社、タミヤ、ハセガワ、バンダイなど、プラモデルの錚々たるメーカーが工場や本社を構えており、プラモデルの出荷額におけるシェアは8割を超えているそう。「ひとつの都市にこれだけの模型メーカーが揃っているのは、世界でも類をみません。静岡にとってプラモデルは地場の産業であり、代表的な産業として取り扱っています」と、その重要性を示した。
なぜ静岡市にこれだけのメーカーが揃っているのだろうか。その歴史的背景を紐解いていくと、静岡の環境と文化に秘密がありそうだ。静岡市は温暖な気候と豊かな降水量に恵まれており、市域面積のうち約75%が森林が占める。天竜川、富士川などの水運に恵まれ、中部山岳地帯にある豊富な木材資源を基に、戦前から材木加工業が盛んな土地柄だったという。
また文化の面では、江戸時代、久能山東照宮や浅間神社の造営に際し、全国の秀でた職人たちを静岡に集めたことから伝統工芸がさかんな地域でもある。駿府に定住した職人たちの様々な技術は長年に渡って受け継がれ、また時代とともにさらなる発展を遂げて今日に至る。
静岡における模型の原点は、青島文化教材社の前身である「青嶋飛行機研究所」から始まる。創業者の青嶋次郎は、静岡初の民間パイロットとなったのち、建具屋で学んだ技術をもとに1932年から木製模型飛行機を製造・販売した。この模型は非常によく飛ぶことで人気を博し、国策によって学校の授業に取り入れられるほどだったという。1950年代後半から外国産のプラモデルが輸入され始めると、模型の主流は木製からプラスチック製へと転換するが、静岡の模型メーカーは情熱、知識、努力のすべてをかけて乗り越え、現在に至る。
静岡市はプラモデルメーカーが多いことから、年間を通して様々なホビーイベントが開催されている。中でも有名なのが「静岡ホビーショー」。プラモデル、ラジコン、鉄道模型の国内有名模型メーカーが一堂に介し、注目の新製品を発表する国内最大級のホビー展示会で、一般公開日は全国各地から訪れる大勢の来場者で賑わう。
また、これから注目したいのが冬に開催される「クリスマスフェスタ2024」だ。模型メーカーの展示に加え、ステンドグラスやアクセサリー、花など様々なジャンルの手作りホビーを見て、触れて、体験できるホビーイベントで、2024年は12月7日、8日の開催が予定されている。今回は初めて、高校生を対象とした模型制作作品展示会およびコンテストとなる「全国プラモデル選手権大会 次世代模型フェスティバル」が同時開催されるという。
「小学生の頃にプラモデルを作った経験がある人が多いが、中学、高校と進むにつれて、携わる機会が減っているという調査結果もあります」と石川氏。初開催となる「全国プラモデル選手権大会」は、中学、高校に進んでも“ものづくり”に関わり、さらには、将来的にものづくり産業に就職するという流れを構築したいという想いも込められているそうだ。
また、静岡市が実施しているユニークな取り組みとして「プラモニュメント」を紹介。プラモデルのランナーを模した郵便ポストや公衆電話、看板など市内12か所に13基が設置されているこのモニュメントは、静岡の街なかでプラモデルを感じてもらう「静岡市プラモデル化計画」の取り組みの一環だ。
「静岡市プラモデル化計画」とは、「プラモデルの魅力をまちの魅力へ」をテーマに、プラモデル産業を振興するだけでなくプラモデルを活用したまちづくりを目指す計画だそう。単にプラモデル産業を支援するだけにとどまらず、静岡市の財産でもあるプラモデルを活用して、ものづくりの楽しさ、素晴らしさ、魅力を伝えていくとともに、まちの賑わいや地域への愛着などを育み、「プラモデルのまち」を体感できる総合的なまちづくりの地方創生プロジェクトだ。
「環境づくり」「人材づくり」「コンテンツづくり」を“3つの柱”としており、それぞれに応じた事業を展開しながら、多様な分野でプラモデルに関わる機会を創出する。「環境づくり」では、「プラモニュメント」の設置など「静岡市=プラモデル」をPRし、「模型の世界首都・静岡」の認知度向上を図る。「人材づくり」では、ものづくりキャリア教育や静岡型学校教育プログラムなど、ものづくりやプラモデルの魅力を伝えることで、郷土の誇り醸成とその魅力を発信する人財を育成し、関係人口の拡大を狙う。「コンテンツづくり」は、「全国プラモデル選手権大会」などプラモデルに触れる機会を創出し、プラモデルの魅力を体感できる機会および静岡市の求心力を高める取り組みが行われているという。
この取り組みは、行政だけでなく静岡市内で活動する企業と一緒に推進するひつようがあると石川氏は語る。「1人の100歩よりも100人の1歩。みんなで前に進んでいきたい」と、あらためてプラモデルによるまちづくりについての想いを明らかにした。
●タミヤのフラッグシップ施設「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」
今回の懇親会が行われた「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」は、2024年5月にリニューアルオープンしたタミヤのフラッグシップ施設だ。「タミヤの今が、ここにある。」をコンセプトに、最新のプラモデル、ミニ四駆、RCカー、工作シリーズなどの製品を集め、「ものづくり」で得られる心豊かな体験、さらには「模型文化」を世界に発信する拠点となっている。
「ONIBUS COFFEE」のスペシャルティコーヒーやジュースなどのソフトドリンクを楽しめるカフェスペースを入口に併設。現在、ホットラテ/デカフェ・ラテを購入すると、「フルカウルミニ四駆30周年」記念施策で、ラテアートが無料サービス中となっている。
カフェスペースにて注目を集めるのが、1/1スケール「ミニ四駆 エアロ アバンテ」。全長4.65m×全幅2.80mの圧倒的な存在感を放つ実車版ミニ四駆で、実際にサーキット場を走る映像もあわせて上映されている。
売場空間は、タミヤ製品約6,000アイテムが一堂に会する圧倒的な品ぞろえとなっている。高さ約4m、全長約100mのジグザグと店内をめぐる大きな棚は、まさに“PLAMODEL FACTORY”という名にふさわしい迫力。プラモデルはもちろん、ミニ四駆、RCカー、工作シリーズのほか、塗料や工具、各種パーツからアパレル商品、書籍など、タミヤのすべてが取り揃えられている。
さらに、「フルカウルミニ四駆ヒストリー」や箱絵の原画なども展示されており、資料館的な価値も高い。
そして、「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」の最奥部には、イベントスペース「MODELERS SQUARE」を設置。模型作品の展示会をはじめ、ミニ四駆やRCカーといった動くモデルの競技会や体験会、さらには工作教室、ワークショップ、セミナー、トークショーなどさまざまなイベントが開催される。ミニ四駆のコースが常設されており、平時は自由にミニ四駆を走らせたり、セッティングしたりできるスペースとして開放されている。
「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」の営業時間は、平日(月〜金)は11:00~20:00、土・日・祝祭日は10:00~19:00。