※前編では、NO.20(第20問)までを掲載しています。NO.21(第21問)以降をお読みになりたい方は、後編をご購入ください
はしがき
私が女流棋士になってしばらくして、運よく、リコー杯女流王座戦で姉様と対局をする機会に恵まれた。後にも先にもこの一局が、公式戦での姉様との対局だった。勝敗は別として、私はこのことがうれしくて仕方なかった。ワクワクして対局に臨んだ。
ところがその日、対局後に話があるから二人でその場に残っていてほしいと、読売新聞の関係者の方に言われた。対局後、私に告げられたのは、読売新聞の観戦記を書いてほしいということだった。「そんなこと、できません」と頑なに断る私に、姉様は、「奈々ちゃんならできる。きっと大丈夫」と、ものすごい勢いでもって私を説得。もはや、逃げられない状況に私は追い込まれた。「観戦記なんていままでやってみたこともないのに、何を根拠に」と内心思いながら、とりあえず、断りきれずに保留と言う形で話は終わり、えらいことになったと新幹線に乗り込んだのを昨日のことのように覚えている。
姉様は、人を勇気づけ励ます才能にも優れている。あのとき私が姉様から受けたありったけの激励を、今度は姉様に捧げたいと思う。
女流初段 藤井奈々
※本文中の段位は将棋世界本誌掲載当時のもの
NO.1
●ヒント●
先手中飛車に構えた西山に対し、後手の小林が箱入り娘から穴熊への組み替えを図った局面。ここで強烈な一手が飛び出した。 (R2/1/17 竜王6 小林宏七段戦)