• フランスで購入したRay-Ban Meta

    フランスで購入したRay-Ban Meta

普通のレイバンをスマートに

Ray-Ban Metaは、ほぼ通常のメガネと同じデザインながら、カメラ/スピーカー/マイク(とバッテリー)を搭載したスマートグラスです。いわゆるARグラスとは異なり、ガラス面に映像などを表示することはできません。そうした機能がないため無線でスマートフォンに接続されます。

  • ニースの眼鏡店で購入

    ニースの眼鏡店で購入しました

一般的なARグラスは、メガネとしては不自然なデザインが多いのが難点です。だいぶ小さくはなってきていますが、それでもまだまだ大きなサイズになってしまいます。また、ケーブルでスマホと接続するというものもあります。

Ray-Ban Metaは、そうした表示機能がないため、メガネとしては不自然ではないデザインです。これまでもオーディオグラスとしてHUAWEI Eyewearのような製品もありましたが、それに対してカメラを搭載した点がポイントです。

  • 一見すると普通のメガネのようです

    一見すると普通のメガネのようです

今回購入したのは「Wayfarer」。レイバンの伝統的なデザインで、通常のデザインと大きな差はありません。少しツルが太い感じはありますが、取りあえず自分の顔にはぴったりフィットしました。

  • レイバンらしいデザイン

    レイバンらしいデザイン。個人的にあまり違和感はありませんが、普段メガネをかけないため、レイバン愛好家には別の意見があるかもしれません

最大の特徴であるカメラについては後述するとして、まずはサウンド関連から。HUAWEI Eyewearなど、従来のメガネと変わらないデザインで音楽が聴けるという製品はいくつか登場しています。

オープンイヤー型というか、指向性のあるスピーカーをツルの部分に搭載して、耳に向けてサウンドを飛ばすという仕組みによって、周囲への音漏れを最小限にしながら、十分な音量で音楽を聴くことができます。

  • メガネのツルにスピーカーを内蔵

    メガネのツルにスピーカーを内蔵

Ray-Ban Metaも同様で、音質面では十分以上という印象。低音から高音まで比較的バランスよく聞こえます。低音は弱めにも感じますが、このあたりはどこまで許容するかでしょう。

  • 固定式の鼻パッドなので、微妙にズレ下がるタイプ

    固定式の鼻パッドなので、微妙にズレ下がるタイプ

耳は開放されているので周囲の環境音も聞きやすく、逆に言えば騒音下ではスピーカーからの音は聞こえづらくなります。それに対抗して音量を上げると音漏れも大きくなるのでバランスが難しいところ。基本的には特に公共交通機関内で音楽や映画、ゲームなどを聞くために使うようなものではありません。

  • ツルの裏側のMetaのロゴとモデル名

    ツルの裏側にはMetaのロゴがあり、モデル名も書き込まれています

通話のマイクとしても利用可能。複数のマイクを搭載しているためか、音質は問題ないようで、比較的小声でも音を拾ってくれます。これも周囲の環境音の程度次第ではありますが、他社と比較しても問題は感じませんでした。

楽しく便利なカメラ

肝心のカメラはメガネの左上に配置されており、少し内側に向けて角度がついているため、真っ直ぐ見たときに正面が撮影できるようになっています。反対の右側にも同じように円形のデバイスが埋め込まれていますが、これはLEDライトで、撮影時に発光して周囲に撮影中と知らせる役割を担います。

  • メガネに埋め込まれたカメラ

    メガネに埋め込まれたカメラ。やや内側を向いています

  • 反対側はLED

    反対側もカメラに見えますが、これはLEDでした

カメラのスペックは1,200万画素で、動画はフルHDで記録されます。内蔵メモリは32GB。レンズの実焦点距離は2.24mm。センサーサイズが不明なので35mm判換算時の焦点距離は不明ですが、恐らく17mm程度の超広角レンズでしょう。取りあえずシャッターを切れば眼前の景色はざっくりと切り取れます。

  • 撮影例1

    超広角のカメラで撮影。どの範囲まで写るかは賭けです

当然、モニターはないので細かな構図は決められません。せいぜい「どちらを向くか」ぐらいです。逆に言えば気軽で手軽。超広角なので視界に収まっているものはおおむね撮影できます。

シャッターボタンは右側のツルの上にあり、押し込むことでシャッターが切れます。ただし撮影は即時ではなく、押して最初の電子音の後、一拍置いてシャッター音が鳴って撮影されます。いうならばレリーズタイムラグですが、トータルでは1秒弱ぐらいでした。

  • ツルの上部にあるシャッターボタン

    ツルの上部にあるシャッターボタン

そのため、ジャストのタイミングで写真を撮るのは難しいでしょう。そもそもそういうためのカメラではなさそうです。それでも、常にカメラを構えているのと同等で、「スマートフォンを取り出しカメラを起動して撮影」という一連の動作をトータルのレリーズタイムラグだと考えると、それよりははるかに高速です。

  • 撮影例2
  • 撮影例3
  • 何も考えずに歩きながら撮影していけば、後で見返したときに楽しめそう。歩きながらの撮影だとブレることもあるので、立ち止まった方がいいのは確かですが、スマホのように「立ち止まって、取り出して、構えて構図を決めて、シャッターを押す」という動作に比べると一瞬で撮影できます

しかも撮影に焦って端末を落とす心配もないですし、画面もないので細かな構図を考える必要もほとんどありません。

静止画だけでなく、シャッターボタンを長押しすることで動画撮影も可能。動画はフルHDで記録されます。こちらも手軽に撮影できるので、非常に気軽に撮影できます。LEDが発光し続けるので撮影中だと分かりますが、周囲の人たちが気付いていたかは不明です。もちろん、他人のプライバシーなどに配慮する必要があるのはいうまでもありません。

撮影されるのは縦動画。音もかなり良好です。最後に「Stop recording」との声が入っているのは、「Hey Meta, take a video」で撮り始め、「Hey Meta」のウェイクワードなしでストップできないかと試していたから。この「Hey Meta」については後述します

噴水の音もリアルです。なお、撮影された動画の解像度は1,552×2,064になっていて、9:16でもなくちょっと不思議なアスペクト比になっています。こちらも同様でテストしていますが、ちゃんとウェイクワードを入れると、その直前までで録画は停止しました

個人的に嬉しいのは、位置情報が自動的に記録されている点です。手持ちのミラーレスカメラでは位置情報が記録されないため、特に旅先で場所を記録したいとき、毎回スマートフォンでも撮影していたのですが、カメラを構える前に1枚、Ray-Ban Metaで撮影しておけばいいのでより気軽です。位置情報だけなら、カメラを構えつつRay-Ban Metaでも撮影しておけばよく、これは両手がフリーになるメガネ型カメラならではです。

  • 鏡に映ったRay-Ban Metaのフレーム

    ちょっと分かりづらいですが、鏡に映ったRay-Ban Metaのフレーム、向かって右上が白く光っています

撮影画像はメモリ内に保存され、スマートフォンに転送できます。転送はWi-Fiを使っているようなのですが、アクションカメラなどの一般的な転送と違い、Wi-Fiの接続設定も不要でスピードも高速で安定しています。最初はBluetoothのみで転送していると思ったぐらいです。設定すれば、「メガネを外してツルを畳む」と自動的に転送する設定も可能です。

  • スマートフォン用のMeta Viewアプリを使って各種設定が可能

    スマートフォン用のMeta Viewアプリを使って各種設定が可能

  • LED搭載のケース

    中央にはバッテリー残量に応じて色が変わるLEDを搭載

  • ケース裏面

    裏面にペアリング用ボタン。下部にUSB Type-Cポートを装備します。バッテリーを内蔵しているので、外出先でもRay-Ban Metaの充電ができます

  • 充電用端子

    ケースの内部に充電用の端子

  • メガネ側の充電用の端子

    メガネ側の充電端子

  • アプリ側で音声制御をオンにすると声で操作できるようになります

    アプリ側で音声制御をオンにすると声で操作できるようになります

  • 位置情報の設定もすれば写真に位置を書き込んでくれます

    位置情報の設定もすれば写真に位置を書き込んでくれます

  • 画像をインポートしているところ

    画像をインポートしているところ

  • インポートした画像はスマホ内に保存され、アプリでも一覧で確認できます。ちなみに画像の傾きが認識された場合、自動で傾きを補正して保存する機能もあります

    インポートした画像はスマホ内に保存され、アプリでも一覧で確認できます。ちなみに画像の傾きが認識された場合、自動で傾きを補正して保存する機能もあります

音声を使ってスマートに操作

Ray-Ban Metaを使うにあたって、特に便利なのが音声制御の機能です。

Ray-Ban Metaでは、「Hey Meta」と呼びかけることで音声制御が可能になります。写真を撮るときは「Hey Meta, Take a photo」、動画撮影をするときは「Hey Meta, Take a video」です。

  • 音声コマンド

    Ray-Ban Metaが対応する音声制御機能。最初に「Hey Meta」と言った後に命令文を話します。これを見ると文章が必要なようですが、キーワードをピックアップしているだけのようで、短文でも問題ありません

  • 音楽のコントロールなども可能

    音楽のコントロールなども可能

「Hey Meta」と呼びかけた段階で電子音が鳴り、命令をすれば写真や動画を撮影します。動画撮影を止めるときは「Hey Meta, Stop recording」と言うと、「Hey Meta」と言う直前までの動画が記録されます。

ちなみに、「Hey Meta」以降の言葉は日本語非対応ですが、かなりざっくりとした言葉で実行してくれます。「Photo」や「Video」のかわりに「Picture」や「Movie」と言っても反応しますし、単に「Hey Meta, Photo(Video)」だけでも撮影してくれます。他には時間やバッテリー残量も音声で聞くことができますが、正直に「Hey Meta, How much battery is left?」などという必要もありません。「Time」や「Battery」だけでも回答してくれます。

いずれにしても、カメラを構えるために両手が塞がっていても、その場で撮影ができるのは便利です。スピーディにテンポ良くシャッターが切れるわけではないので少し慣れが必要ですが、取りあえず周囲の様子を撮影するなら快適です。

  • 撮影例4

    カメラを片手で構えて撮影するよりも手軽に撮影できます

  • 撮影例5

    目立たずに撮影できますが、室内での撮影はやはりいまいちでしょうか

  • 撮影例6

    画質面では夜景も少し苦しいところですが、立ち止まっていればブレは抑えやすいように感じます

描写性能は、今どきとしては珍しいシンプルな12MPカメラで、晴天時にはまずまずの写りながら、屋内や曇天時など光量が足りないとすぐにノイジーになります。思ったよりも画質は良いのですが、過度な期待は禁物。動画のイメージも同様ですが、思ったよりもブレが抑えられているので、歩きながらの撮影も十分活用できます。特に録音性能が強い印象でした。

  • 撮影例7

    やや難しいシーンですが、写り自体は低価格スマートフォンのカメラと同等ぐらいでしょうか

  • 撮影例8

    広角なので気持ちのいい写真が撮影できます

個人的には、「音声録音だけ」の機能が使えれば面白かったように感じました。動画は連続撮影時間が3分(当初は1分のみ)に限られているので、音声録音のみもう少し長時間録音できたら便利そうだと思います。

また、撮影結果はすべて縦型になります。横向きに寝て撮影すれば横位置にはなりますが、普通にメガネをかけた状態で撮影すると静止画も動画も縦位置での撮影になります。SNSなどには適していると言いますが、「視界を収める」という意味では違和感があります。

  • 撮影例9

    画質はともかく、縦画像に適したシーンもあります

  • 撮影例10

    できれば横画像で広々とした風景を撮りたいシーン

35mm判換算17mm程度の焦点距離なので、視界よりも広い範囲が記録されるのですが、縦位置になるので、上下は想定外の範囲まで記録される反面、左右は予想よりも狭い範囲しか写りません。まだ横方向であれば予測も付けられそうですが、縦となるとどこまで写っているか予測もできません。

さらにモニターのないRay-Ban Metaの場合、写真を撮るときに「見たまま」記録されることを想定してしまいます。しかし人間の視野は横方向に広いため、縦長画像は「自分の視野」としては不自然な印象が拭えません。視界に映っていたものが、撮影したら写ってなかったという結果になってしまうわけです。

それでも広角レンズぐらいの範囲は撮影できるのですが、縦に長い分、横に物足りないという印象を強いのです。個人的にはアクションカメラでよくあるように、センサーの一部を切り出すことで縦横を自由に切り出せるようにすると良かったと感じます。それならば縦位置でも横位置でも任意に切り替えて撮影できるからです。

個人的に縦動画に慣れていないのも扱いの難しいところです。記録時間も最大3分なのでTikTokなどのショート動画向けなのですが、いかんせん、自分にそういうニーズはないので、使いどころの難しい機能になっています。とはいえ、簡単に気軽に動画が撮影できるのは変わりないので、ひとまず撮っておくと、あとで見返すのも便利です。

繰り返しですが、かなり人に気付かれにくい状態で撮影できるため、自分を律することができない人には向きません。盗撮などはしないという人が使うものです。

  • アプリで初期設定時に表示される警告

    アプリで初期設定時に表示される警告。他人のプライバシーを尊重しましょう

音声コントロールは限定的

音声機能はほかにもあります。Meta製品ということもあって、FacebookとInstagramと連携できます。Facebookの友だちに連絡(「Hey Meta, Call ○○」)したり、メッセージを送信(「Hey Meta, Send a message to ××」)したり、写真を送ったり(「Hey Meta, Send my last photo to △△」)できます。

  • 接続できるアプリ

    接続できるアプリは限定的。Threadsに対応していない理由は不明です

  • Messengerとの接続

    Messengerとの接続。メッセージの読み上げで日本語は非対応です

  • 音声は英語とイタリア語、フランスに対応

    音声は英語とイタリア語、フランスに対応

Instagramへの投稿もできます。「Hey Meta, Share a photo to my Instagram story」、「Hey Meta, Share my last photo to Instagram」といった具合です。InstagramをFacebookに置き換えればFacebookへの投稿も可能。Threadsと連携しない点は疑問ですが、音声だけでもある程度のSNS利用は可能になっています。

ライブ配信も行えます。InstagramやFacebookのライブ配信を起動してRay-Ban Metaが接続されていることを確認したら、カメラの撮影ボタンをダブルクリックします。するとライブ配信用のカメラがRay-Ban Metaに切り替わるので、後はライブ配信を始めるだけです。

文字通り自分の目線でライブ配信できるので、慣れた人ならば面白いライブ配信もできるのではないでしょうか。カメラを構える必要がなくて手軽で、声も取り込みやすいというのは大きなメリット。この場合も撮影しているかどうかが分かりづらいので、周囲の人への配慮はより一層必要ですので、注意しましょう。

ほかには音声で音楽の再生(「Hey Meta, Play」)、曲送り(「Hey Meta, Next song」)なども可能です。

ツルの側面をタッチすることでのタッチジェスチャーにも対応。タッチで音楽再生、ダブルタッチで曲送り、スワイプで音量変更などが可能です。

  • タッチジェスチャーの設定

    タッチジェスチャーでは音楽アプリの起動や音量変化などが可能

音声操作には対応していますが、スマートフォン全体のコントロールやほかのアプリなどとの連携はいまいちです。よくある、タッチジェスチャーによる外部の音声アシスタントの起動は非対応で、例えばGoogleアシスタント(Gemini)の起動はできません。

音声通知も、例えばGmailやLINE、X、その他各種アプリの通知も非対応です。FacebookやInstagramの通知は音声でしてくれるのに、このあたりは不便な点です。

今後のAI対応に期待

Ray-Ban Metaには、今後AI機能も搭載されると予告されています。すでにベータ版として米国ユーザーには提供されているようですが、フランスで購入したためか、現時点で利用できる状態になっていませんでした。

ただ、カメラで撮影したときにレンズに髪の毛が写っていたかどうかを警告してくれる機能(撮影後に「Camera was covered by hair」とのメッセージが流れる)があり、リアルタイムにカメラの画像を解析していることが分かります。

  • 撮影例11

    黒く写っているように見えるのは髪の毛です。それなりに警告は出ますが、もちろんスルーされることもありました

  • 撮影例12

    どこまで写るか分からないのでさしていた傘が入ってしまったパターン

現状では、カメラに写ったものを教えてくれるGoogleレンズ的な機能やQRコードの読み取り機能などが予定されているほか、音声翻訳機能も提供予定とされています。

  • 撮影例13

    フランス語の看板(英語もありますが)。これを読み上げて翻訳してくれると便利そうです。また、今後一部言語では通訳機能も提供されるそうで、これも日本語対応すればかなり期待度は高い機能です

現状、日本語にまったく対応していないため、例えばFacebook Messengerの通知でメッセージ内容の読み上げも機能しません。音声翻訳機能も現状日本語はターゲットに入っておらず、日本での販売も当分はなさそうです。

言語の壁を越えられないというAIとしては中途半端な状態ですが、これはAppleやMetaのような巨大企業でもまだまだ研究が足りていないということでしょう。いずれにしても、メガネにカメラが搭載されると夢が広がります。

自分自身は今までメガネをかける習慣がなかったのですが、すでに老眼が始まっているのでそのうちメガネが必要になりそうで、そうしたときに常にかけるメガネにカメラが搭載されていれば、自然に撮影ができるようになります。さらに、周囲の映像を取得できるため、自然と「スマホの目」となってスマートフォンが世界を認識できるようになります。

メガネ自体がディスプレイ化したARグラスではないため、できることは限られますが、カメラを搭載するとスマートフォン自体も進化する。Ray-Ban Metaはそんな可能性を想像させる製品でした。