第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は7回戦までが終了。11月5日(火)には8回戦、羽生善治九段―高見泰地七段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりの力戦から抜け出した羽生九段が158手で勝利。今期3勝目を挙げ順位戦の連敗を5で止めました。
それぞれの戦い続く
ここまで4勝3敗の高見七段はもちろん、2勝5敗の羽生九段にとっても負けられない戦いが続きます。相掛かりの戦型に進んだ本局は後手となった羽生九段がさっそく工夫を凝らしました。飛車で6筋の歩をかすめ取る手を許したのは手順に金銀の進出を図る狙いで、盤上はここから定跡のない手将棋模様に進みます。
一手一手の価値が高い濃密な中盤戦を前に両者長考が続きます。本格的な戦いが始まったのは夕食休憩後のことでした。飛車を犠牲に角を入手した先手の高見七段はこの角をすぐさま敵玉の目の前に打ち込んで攻撃開始。羽生九段もギリギリの受けで応じますが、攻勢をとる高見七段が押し切るのは時間の問題かと思われました。
羽生九段が怪力発揮
劣勢に追い込まれた羽生九段ですが、ここから持ち前の怪力を発揮して形勢逆転に成功します。駒を渡すと自玉に詰みが発生する厳しい条件の中、竜を3筋に引いて攻防に利かせたのが深謀遠慮の一手。その竜で敵の攻め駒の一掃に成功したところで羽生九段の勝勢が確立されました。高見七段としては受けのタイミングを見誤った形です。
自玉の安全を確保した羽生九段は安定感のある寄せで勝利を手繰り寄せます。終局時刻は翌6日0時9分、最後は自玉の詰みを認めた高見七段が投了。自身の土俵に持ち込んで戦った羽生九段の逆転譜となりました。4か月ぶりの順位戦勝利を挙げた羽生九段は3勝5敗、敗れた高見七段は4勝4敗の成績に。なおB級1組8回戦の残り5局は11月7日(木)に行われます。
水留啓(将棋情報局)