藤井聡太王将への挑戦権を争うALSOK杯第74期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。11月4日(月・祝)に佐々木勇気八段―西田拓也五段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の三間飛車を用いて居飛車急戦を破った西田五段が73手で勝利。4勝1敗として挑戦に向け大きく前進しました。
ホットな居飛車急戦
佐々木八段0勝3敗、西田五段3勝1敗と明暗分かれる中での一戦。今期の王将リーグでは四間飛車を連採していた西田五段ですが、この日はクラシカルな三間飛車を採用しました。なお今年3月に両者の間で行われた棋聖戦の対局では西田五段がいわゆる「一間飛車」を採用して勝利しただけに佐々木八段としてはリベンジが期待されます。
さて本局、後手となった佐々木八段の作戦は居飛車急戦でした。コンパクトな金無双に玉を囲って6筋の歩をぶつけたのが開始早々26手目の仕掛け。この2か月ほど前に指された類例で佐々木八段は敵陣に角を打ち込みつつ快勝を収めていました。実戦は西田五段が8筋の歩の取り方で工夫を見せ、ここから二人の戦いが始まります。
振り飛車理想の完勝譜
盤上は佐々木八段の猛攻が続くものの、西田五段も振り飛車らしくのらりくらりと対応し決め手を与えません。むしろ返す刀とばかりに打った飛車取りの角が厳しい反撃。手順に後手の飛車を捕獲する形が実現して指しやすさを手にしました。佐々木八段としては攻めをつなぐために捨てた1筋の香が大きな負債となった格好です。
優位に立った西田五段の指し手は冷静でした。自陣の飛車取りを手抜いて自玉の安全を確保したのが万に一つも逆転を許さない手厚い指し回し。1筋に成り込んだ香が拠点となって先手からの攻めは切れる心配がありません。終局時刻は15時48分、最後は形勢の開きを認めた佐々木八段が投了。
勝って4勝1敗とした西田五段は初挑戦に向け大きく前進。敗れて0勝4敗となった佐々木八段はリーグ陥落が決まっています。
水留啓(将棋情報局)