近年、一人暮らしをする高齢者が増加しています。自分の生活や健康を守るためには、将来的にどのような費用に備えるべきかをしっかり考える必要があるでしょう。この記事では、一人暮らしの高齢者が備えるべき3つの費用について解説します。
◆備えたい費用1:賃貸であれば家賃、持ち家であればリフォーム費
高齢者の一人暮らしでまず備えたい費用は、賃貸物件にお住まいであれば「家賃」、持ち家にお住まいであれば「リフォーム費用」です。
賃貸であれば、家賃の支払いを続けるために長期的な家計管理が重要です。その際、今よりも狭い物件や少し郊外に住むことで家賃負担を減らす工夫が検討できます。
持ち家の場合は、高齢者が住みやすい環境に整えるためのリフォームが必要になる場合が多いです。バリアフリー化はもとより、外壁・屋根の補修、キッチンや水回りの改良、電気温水器の交換など必要になるでしょう。これらのリフォーム費用は数十万から数百万円と高額になります。事前に見積もりを取って計画的に準備することが大切です。
◆備えたい費用2:医療費
高齢になるにつれて、病気やケガなどの医療費が増加する傾向があります。一人暮らしの高齢者にとって健康問題は生活に与える影響が大きく、突然の病気や入院が経済的な負担になることが多いです。
高齢になったときにかかる医療費を厚生労働省の資料「2023(令和3)年度 生涯医療費」で確認すると、日本人の一生にかかる医療費である「生涯医療費」は2800万円。そのうち、70歳以降にかかる医療費は約1378万円、全体の約半分を占めています。
公的医療保険に加入しているので、実際に自己負担するのは1~3割ほど(個々の所得で負担割合が変わるため)ですが、70歳以上は138万~414万円もかかります。
日本には健康保険や高齢者向けの医療制度が整備されているとはいえ、ある程度の自己負担がかかることは想定する必要があるでしょう。医療費枠として、少なくとも100万~200万円は確保しておくようにしましょう。
◆備えたい費用3:介護費用や終活に関する費用
高齢で一人暮らしの方は、介護費用や終活に関する費用も忘れずに準備しておきましょう。
介護費用に関しては、公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021年度(令和3年度)」によれば、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、毎月の介護費用は平均8万3000円(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)。
介護期間の平均となる61.1カ月(5年1カ月)を合わせて考えると、1人当たり580万円が必要という結果となっています。介護費用枠として500万~600万円は少なくとも必要となるでしょう。
また、終活に関連する費用も無視できません。
一人暮らしで、子どもがいないという場合であればお墓の承継が難しくなります。事前に「墓じまい」や「永代供養」を検討する必要があるでしょう。墓じまいをする際、お墓の撤去費用やお寺へのお布施などで数十万~数百万円かかります。永代供養も合同葬か個別葬かで費用が変わり、こちらも十万~百万円以上と高額です。複数の情報を集め、慎重に検討することが重要です。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。
文=舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)