フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で10月27日に放送された『二丁目に生きて 前編 ~コンチママ 56年目の迷い道~』(TVer・FODで見逃し配信中)。新宿二丁目で56年の歴史を持つショーパブ「白い部屋」の移転問題に揺れるコンチママ(76)たちを追った作品で、3日に後編 『~コンチママ 56年目の決断~』が放送される。
衰える自分の体力、半世紀を超える店の歴史、キャストやスタッフたちの不安、決まらない後継者と移転先……様々な問題を抱えながら困難に向き合い続けるコンチママに、取材した宮井優ディレクターは何を感じたのか。話を聞いた――。
立ち退きが決まるも移転先、後継者探しに苦闘
2023年冬、年内に現在の場所から立ち退くことが決まっているにもかかわらず、一向に新たな移転先を見つけられずにいたコンチママ。自身は引退を決め、店の後継者に指名したチーママの真琴さんと共に物件探しに奔走するが、こだわりのショーを見せるには不向きな物件ばかりだった。さらに、真琴さんから突然の辞退も。「自分たちはどうなるのか…」と、キャストたちに動揺が広がっていく…。
宮井Dがコンチママと「白い部屋」の取材を始めたのは、『ザ・ノンフィクション』で放送された『切なさに生きて…2丁目』(18年8月26日放送)から。その後、コロナ禍で休業を余儀なくされる苦難に密着した『禍の中でこの街は』(20年10月11日・18日放送)、BSフジでの「特別編」(21年1月23日放送)と追いかけてきた。
コロナ禍が明け、店がかつてのにぎわいを取り戻してきた矢先、コンチママから「店を立ち退かなければいけない」という連絡が。「コンチママは年齢のこともあって、自分が引退するかどうか、店を閉じるかどうかと困っていたので、これは歴史あるお店のターニングポイントになる」(宮井D、以下同)と、再び取材が動き出した。
コロナ禍でのピンチの際は、コンチママたちに「ショックを受け止めつつも、“しょうがない。だったらやってやろうじゃないか”という感じがすごくあったんです。そこに、新宿二丁目で生きていくことを選択した人たちの矜持みたいなものを感じました」と印象を抱いていた宮井D。だが今回の危機の受け止め方には、当時より深刻なものを感じた。
「コロナの時は誰もが等しく“急停止”することになりましたが、今回は自分たちだけの立ち退きという話が出てきたので、よりダメージを受けているのを感じました。それに、お客さんの前に出ている時のハイテンションな姿からはこちらも年齢を忘れてしまうのですが、ふとした瞬間に見かけると疲れ果てているのを見て、やっぱり気を張ってるんだなと思う場面が増えたように思いました」
「ずっと家にいたら絶対おかしくなる」
体力的な厳しさがある一方で、多くのキャストやスタッフを抱え、通ってくれる客もいる――この狭間で悩み続けたコンチママ。時には宮井Dに「何も決まらなくて、ごめんなさいね」と謝ることもあったそうで、「僕らにそんなこと言う必要なんて全くないのに、そんな言葉からも、関わってくれたいろんな人たちのために“この店をなくしちゃいけない”という強い思いを背負っているのが、ひしひしと伝わってきました」と振り返る。
店を続けたいという思いの背景には、自分の生きがいになっている部分もあると感じた。
「前編で真琴さんにオーナーママを引き継ぐ話をする時に“ずっと家にいたら絶対おかしくなる”と言っていましたが、その不安が強かったように感じます。たしかに疲れるけど、お店に出ていると生き生きできる。接客して人の輪に入るということを半世紀以上やってきたのが、それを辞めて広いご自宅でポツンと一人で暮らしていくことへのおそれが大きいのだと思いました」