女優の松本若菜が主演するフジテレビ系ドラマ『わたしの宝物』(毎週木曜22:00~ ※TVer・FODで見逃し配信)の第3話が、きょう31日に放送される。
孤独な主婦が夫以外の男性との子どもを夫の子と偽り産み育てる「托卵」をテーマにした今作だが、早くも前回でその子どもが誕生し、そして亡くなったと思われた“本当の父”が生きていたということが判明したのだが、そこからさらに“地獄につながる運命”が丁寧に描かれていく――。
“悲劇のヒロイン”から“悪女”へ
今作は視聴者に「なぜ?」という疑問を決して抱かせてはならない。なぜなら頭に疑問が浮かんだ瞬間、“共感”が失われ、目の前のドラマがただの“絵空事”になってしまうからだ。そして、それでは今作が描きたいであろう“女の業(ごう)”を、真実みをもって描けないのだ。
また、センセーショナルなテーマを掲げながらも、視聴者から多くの共感を得てきた『昼顔』や『あなたがしてくれなくても』と同じ系譜と謳っている以上、“共感できない”作品は避けなければならなかった。
しかし、その共感において、今作は前2作と比較し、大きなハードルが立ちはだかっていた。それは当然のことながら、夫以外の子を産み育てる「托卵」というテーマだ。それに対して、視聴者が抱くはずであろう大きな疑問…ハードルは3つあった。それは、主人公の美羽(松本若菜)が「なぜ不倫をしてしまうのか?」、「なぜ子どもを産む決意をしてしまうのか?」そして、「なぜ離婚せず夫を偽り続けるのか?」だ。
まず「なぜ不倫をしてしまうのか?」。これについては、夫・宏樹(田中圭)からの冷たすぎる対応、不倫相手が美しい思い出のまま再会した幼なじみの冬月(深澤辰哉)、そしてその冬月はすぐに海外へ旅立ってしまうこと、それらによって美羽を不倫の道へと走らせた。
次に「なぜ子供を産む決意をしてしまうのか?」。ここは、子が授かったとされる時期が宏樹と冬月で偶然に重なってしまったこと、子を宿したと分かった日に冬月が亡くなったこと(※後に生存していることが判明)、それにより冷たすぎる宏樹への復讐とともに、新たな命を宿すその意味を悟り決意させた。
そして、最後の「なぜ離婚せず夫を偽り続けるのか?」だが、これについては単純そうでありながら最も難解だった。しかしそれを、美羽の家が背負っていた借金を宏樹が全て肩代わりして自立が難しいという背景に加えて、前回の衝撃……宏樹の“育児放棄宣言”によって、美羽の決意は強固となり、“悲劇のヒロイン”から“悪女”へと導かれていった。
「托卵」という行為に共感させることに成功
ここまでが第2話までに丁寧過ぎるほど描かれた。それは言うなれば「托卵」に説得力を持たせるための“お膳立て”と言ってよいだろう。しかし今作がそうした作為的なものに見えなかったのは、どの事象もキャラクターに寄り添うように自然で、何よりそれらが感情に訴えかけるドラマチックな演出になっていたからだ。
視聴者はそれらの“お膳立て”を、運命……ここでの運命はポジティブなものではなく、“地獄へ導かれる運命”のように、体感できたのだ。つまりほとんどの視聴者が理解できないであろう「托卵」という行為に共感させることに成功し、見事に表現できたと言える。
初回と“対(つい)”になるような展開
さて今回の第3話は、「まだまだこれまでの物語に意味があったのか!」と感心するほど、初回と“対(つい)”になるような展開をみせていく。前回の“育児放棄宣言”で視聴者を戦慄させたその直後、子どもが生まれるや否や、宏樹は“父性”を見せたのだが、それを引き金に、物語はまさに“地獄へ導かれる運命”に向けて、さらに大きく舵を切っていく。
メロドラマやハートウォーミングになってしまう場面も、「托卵」によって全ての意味が変わってくるという恐怖の構図に。そして今回、さらなる“地獄”を感じてしまうのが、子どもにつける名前。あまりにも残酷で、それを知った時の美羽と同様に、視聴者に戦慄が走ること必至だ。
もちろん、前回生きていると判明した冬月とその周辺も描かれていくのだが、これについては粗方道筋が“読める”はずなのに、“読める”展開になればなるほど怖ろしさが増していく。とにかく今週もこれまで以上の衝撃が待っている。