シン・モバイルワーカーにカシコイ、ホンモノ、カッコイイ

VAIOが新しい14インチモデル「VAIO SX14-R」「VAIO Pro PK-R(法人向けモデル)」を発表しました。ここでは事前説明会で行われた製品の魅力、特徴をじっくりと解説します。

  • 発表されたVAIO SX14-R/VAIO Pro PK-R

  • ハイエンド製品ゆえにカラーリングも豊富。手前からディープエメラルド、アーバンブロンズ、ファインブラック、ブライトシルバー。後ろのふたつは限定版となるALL BLACK EDITION、勝色特別仕様

  • 左サイド。奥側にUSB-C(兼Thunderbolt4端子)があります。電源にもモニター接続にもThunderboltとしても使えるのが魅力

  • 右サイド。RJ-45のLAN端子があるのも見逃せませんし、左右USB-C(兼Thunderbolt4端子)を初めて商品化したのもVAIOとなります

  • キーボード。電源ボタンが別になっており、右上がDELキーなのが個人的には大満足。オンライン会話設定キーがF12の右に用意されています

  • Copilotキーも装備していますが、Core Ultra Series1なのでCopilot+PCではありません

  • VAIO Vision+とのドッキング例。VAIO Vision+の液晶カバーはパソコンの裏に縦連結できるようにスタンドになり、同一サイズで違和感ゼロ

冒頭、取締役執行役員 開発本部長の林 薫氏が挨拶を兼ねて近況を紹介。7月1日でソニーからの独立10周年となったことに触れつつ、ここ数年の業績が極めて順調に推移してきたといいます。その原動力はコロナ禍による意識変化で、「よりよい働く環境の源泉はPCにあり」というユーザーの気づきにあるとのこと。

  • 取締役執行役員 開発本部長の林 薫氏

VAIOが掲げる「カシコイ、ホンモノ、カッコイイ」が評価された結果が現在の好調さの源泉で、過去5年で市場は横ばいから減少傾向にある国内法人向けPC市場ですが、VAIOはFY21からFY23で2倍となる売り上げ台数を実現できたと数字で証明しています。

そこで今回はあえて長い開発期間をかけてよりクオリティを追求し、VAIOらしさをさらに引き上げる開発体制としたと言います。具体的には従来試作を3回行って製品化するのに対し、さらに試作を一回追加して品位、クオリティ、信頼性を一歩高め、評価指標も変えています。

その結果としてカラバリが増えましたし、新カラーも完成度が高いと自負して、新しい働き方「シン・モバイルワーク」へと対応するといいます。シン・モバイルワークという用語を出してきたのは、働き方と目的が変化したため。

以前はいわゆる「モバイルワーク時代」でどこでも作業ができることが優先されたため、目的は業務効率でした。しかし、コロナ禍で「在宅/ハイブリッドワーク時代」へと変化し、テレワーク率は急増したものの、あくまで非常時の対応が目的。

シン・モバイルワーク時代はテレワーク率がさらに増えつつも、目的は本来の業務効率であったり、在宅勤務によって通勤時間ゼロになるなどワークライフバランスも考慮する柔軟な働き方をも考慮すると、コロナ禍の非常時対応から脱却した利用となっていると紹介。

そのシン・モバイルワークにおける生産性追求とハタラク気持ちを高めるパソコンが今回の新製品であり、集中作業やWeb会議、ハイブリッド会議、コワークにおける不満点に対して新たな機能を加え、デザインやカラーリングで気持ちを高める要素をふんだんに盛り込みました。

このシン・モバイルワーク時代への生産性を追求するため、新しい機能とデザイン、そして新色を展開すると説明があり、製品のアンベールとなりました。それと共にサンプルが机の上に。鮮やかなグリーンの新色でした(正式名称はディープエメラルド)。

ノートパソコンで初採用の熱可塑性カーボンを使用し、コダワリの成型

商品に関しては開発本部 プロダクトセンター プロダクトマネージャーの柴田 雄記氏が説明。新製品は個人向けがVAIO SX14-R、法人向けがVAIO PRO PK-Rとなり、いずれもハイエンド製品の位置づけとなります。

  • 開発本部 プロダクトセンター プロダクトマネージャーの柴田 雄記氏。ちなみにSX由来のオーナメントも健在です

基本スペックは14.0インチワイド液晶を搭載しており、1kg切りの軽量さを実現します。従来のカーボンボディは熱硬化樹脂を使ったカーボンファイバープレートを採用していましたが、今回は熱可塑性樹脂を使ったカーボンプレートを使用し、デザイン性と機能の両立を図った点が最大の特徴。

熱可塑性樹脂を使ったことにより、天板部は強度のために厚みが必要な部分だけ厚みを増すことができたほか、ベース部は放熱性に優れたカーボンを採用するという細かい設計になっています。

シン・モバイルワークに向けた新たな機能も加わりました。AIノイズキャンセリングマイクは本体上部の2つのマイクに加えて、キーボード脇にもマイクを入れた3マイク構成で、従来問題になっていた「対面の人の声をひろってしまう」という問題に対応。モードもプライベート、標準に加えて、プライバシーと会議モードを追加しています。

設定が複雑になる問題に対しては、VAIOオンライン会議アプリとこれを呼び出すワンタッチキーを追加。公共の場所でしゃべる声が周りに聞こえてしまう問題に対しては「小声モード」、会議室等の残響に対しては反射抑制が加わり、ベースとなる音の質に関してはスピーカーボックスの容量を増大させています。小声モードの技術を応用したのか、会議モードでは離れた声を増強して相手に聞き取りやすい音にしてくれます。

また、バッテリーは37%増の大容量バッテリーモデルを用意。それでも1,016g~と性能と軽さの両立を図っているだけでなく、画面を見ていないときの節電モードとバッテリーの劣化を抑えるいたわり充電モードを用意しています。

先に登場したVAIO Vision+との連携も考えられており、同一サイズの液晶パネルを使用しているため、違和感のない2画面操作と縦が大きな16:10(WUXGA:1,920×1,200)の液晶を採用しています。モデルによってはWQXGA(2,560×1,600)タッチ、アンチグレアと選択の幅を広げています。ちなみにVAIO Vision+も熱可塑性カーボンを使用しています。

ヒンジのトルクカーブのチューニングにより片手で開き、対面の人にも見せやすい180度オープン、使いやすさを考慮した左右USB-C(&Thunderbolt)。そしてWWANとeSIMモデルもあり、どこでも使える事も考慮されています(LTE/5Gのsub6G対応)。キーボードもキートップの成型に工夫を凝らし、ガタツキを減らして、耳につきやすい周波数帯である100〜1000Hの音圧低減を行ったとのこと。VAIOらしいコダワリにあふれた作りには感動すら覚えます。

カラーリングはいつものファインブラック、ブライトシルバーに加え、人気色となったアーバンブロンズ。そして今回満を持して投入するのがディープエメラルドとなります。今回熱可塑性カーボン樹脂を採用したことで、電波を通すFRP部と強度が得られるCFRP部の一体感もさらに良くなっているというのもポイント。特別色として定番となっているALL BLACK EDITIONと勝色モデルも用意されており、どちらもVAIOロゴの隠し刻印も選択できます。

もちろんVAIOなので、信頼性とユーザビリティの品質チェック項目は120以上。安曇野工場で念入りに確認される安曇野フィニッシュも健在です。サンプル機は高い質感で「仕事にアガルパソコン」という意図が大きく伝わりました。

なお、個人向けモデルはIntel Evo Platformの申請中(発売までに認可が下りる予定)、企業向けモデルはvPro Enterpriseとなります。ACアダプターにもコダワリを見せ、新開発で待望のプラグ収納型で持ち運びがラクになり、コネクタもテーパー形状とコダワリを見せた内容です。

予約開始は10月31日で個人向けモデルは最速で11月8日のデリバリーを予定しています。

「アレはLunar Lakeのイベントだったので辞退した」

先日のIntel Connection Japan 2024(参考記事)で気になっていたのが、AI PCエコシステムパートナーにVAIOの名前がなかったことです。ズバリ質問してみたところ、「あれはLunar Lakeのお披露目会で当社はLunar Lakeパソコンの(近日中)発売予定がなかったので辞退した」とのこと。

Lunar Lakeパソコンは各社開発期間が極めてタイトと聞いている上、量産機がなかなか店頭に登場しないという状況を目にしているので、開発期間をしっかり確保したVAIO SX14-Rにおいては致し方ないところでしょう。

  • このような商談のケースでも円滑に使える事をアピール。この画像ではVAIO Vision+を使った2画面表示で話を進めたあとで、180度開いてサインをしてもらっています

  • 下に見えるのは大容量バッテリー。今回は音にもコダワリがあり、スピーカーエンクロージャーを1.5倍に拡大。WWANモデルが用意され、左上部にSIMスロットがありますが、eSIMも対応

  • 液晶側の天板。画像ではわかりにくいですが、強度と重量のバランスで厚みを変えています。今までの熱可塑性カーボン樹脂ではできなかったポイントです

  • ボトムカバーも熱可塑性カーボン樹脂を生かして、突起部分を作り出しています。上に乗っているのは液晶上部のアンテナ、マイク、カメラで場所取りのせめぎあいがわかります

  • キートップもパンタグラフを抑える部分(左が新型で、下部に微妙な突起が見えます)を加えてノイズを抑制しました

  • ACアダプタは折り畳みプラグで携帯に便利。USB-Cコネクタのカバーもテーパーをつけて取り扱いをアップとコダワリの多さが光る内部、付属パーツでした