葉山御用邸から134号線を南へ。葉山よりも自然と素朴さが深まったなと感じるのが横須賀市秋谷です。
浜でのワカメ干しが冬の風物詩になっている久留和漁港。美しく青い海を見下ろす場所に「イエローハウス」と呼ばれて親しまれてきた黄色いテナントビルがありました。しばらく空き店舗だったその建物の前に突如アイスクリームのサインが出現したのは2024年8月の終わりのこと。
「イエローハウスの前におっきなアイスが置いてあるよ! アイスのお店ができるんじゃない?」
いち早く期待に胸膨らませていたのは地元の子どもたちでした。
2024年9月8日、オープンしたカフェの名前は「YELLOW HOUSE KURUWA」。
黄色いビタミンカラーの外壁にアクセントとしてグリーンをペイント。地元の人たちの愛称を継承しようと、そのまま店名に採用したそうです。
朝8時からのモーニングが、秋谷の風景を変えた
オープンから1ヶ月半が経ったお店を覗かせて頂きました。引き戸を開けた瞬間、漂ってくる華やかなコーヒーの香り。朝8時のオープンとともに店内には厚切りトーストとコーヒーのモーニングを摂りながらノートパソコンを広げるノマドワーカーの姿もありました。都会のカフェでは日常的な光景が素朴な農漁村でもある秋谷ではとても新鮮に映ります。
「丘の上にあるAkiya villegeの方々がよく来てくれるんです」とうれしそうな店長さん。ご自身も7月まで暮らしていた東京からご主人とともに移住されたばかりなんだそうです。
リモートワークの定着と自然の多い町で子育てをしたいというライフスタイルの転換で子育て層を中心に移住者が増えている秋谷。1年前には海の見える絶景シェアオフィスとして「Akiya village」が、秋にはスタートアップ支援のインキュベーションセンター「DG CAMP AKIYA Yokosuka city」が誕生。この地域では珍しい早朝からのオープンにはこうした町の新たなニーズにも応えたいという思いがあったと言います。
モーニングメニューの厚切りトーストに使われているのは逗子市長柄の人気店「アフロパン」の「ほのか」。砂糖の代わりにみりんを使った食パンです。添えられているのは塩バターとあんこ。愛知県出身のオーナーさんの「名古屋のモーニング文化を」という故郷への思いも感じました。
コーヒー豆は世田谷区の豪徳寺と千歳船橋に店舗がある専門店「IRON COFFEE」からの仕入れ。こちらは店長が開業にあたって修行させて貰ったお店なんだそうです。
誰にでもオープンな店作り
9時を過ぎると小さなお子さんを連れた親御さんたちが真っ赤な螺旋階段を昇って次々に2階へと向かっていきます。
螺旋階段を昇った先にあるのは広々とした小上がり。棚には絵本やおもちゃ、ぬりえなども用意されています。地元で子育てしている親御さんたちがお子さんを遊ばせながらおしゃべりを楽しめる場をイメージしたというキッズフレンドリーな空間です。
大型犬を連れたご夫婦はテラス席へ。海を感じられるテラス席はペット同伴でも利用できるんです。
また、駐車場にはロードバイク用のサイクルラックも用意されています。
「誰にでも開かれた、キャパシティの大きい店を目指しています」と店長さん。その言葉の裏には「引っ越したばかりの時、近所の人たちと挨拶が飛び交うフレンドリーさに驚きました」という移住者としての感動もあったのかもしれません。
看板メニューは地元養鶏場のたまごサンド
10時からはサンドイッチも提供。看板メニューは「イエローハウスのたまごサンドイッチ・安田養鶏場(税込1100円)」。メニューに名前も刻まれた安田養鶏場は横須賀市長坂にある老舗養鶏場。東京からもシェフが産みたての卵や自家栽培の有機野菜を仕入れに訪れる養鶏農家さんです。地元の人の多くも卵はスーパーではなくこの養鶏場で買っています。そんな安田養鶏場の鉄分たっぷりで栄養価も高いたまご「しおさい」と「アトム」を使ったサンドイッチ。
意表を突かれたのはパンに挟まれていたのが「ゆでたまご」ではなく「たまごやき」なこと。しかもパン以上のボリュームある厚み。はんぺんを加えたことによるふんわりした食感とこだわりの味付けによる新感覚のたまごサンドです。
他にも地元葉山牛の切り落としを使った「葉山牛メンチカツのサンドイッチ」、ヴィーガンにも配慮した「グリル野菜とフムスのサンドイッチ」という三種類のほか、無添加のヴィーガンナゲットの入ったキッズミールなどもラインナップされています。
子どもたちの期待を超えたアイスクリーム
夕暮れ時にはおこづかいを握り締めてアイスを食べに来る地元の子どもたちの姿も。ガラスケースに並ぶ色とりどりのアイスはハーブやスパイスなどの素材を活かしたクラフトアイスクリーム「erb」からの仕入れ。
子どもたちの一番人気は「フレッシュミントチョコ(税込400円)」。着色料を使っていない白いチョコミントアイスは生ミントの香りが強い、体にやさしいおいしさでした。
地域の人たちのコミュニケーションの場所に
「地域の人たちが普段使いできるカフェを作りたい」というオーナーさんの思いでオープンした「YELLOW HOUSE KURUWA」。
店長さんは「ローカルの人たちのコミュニケーションの場所になれれば」と未来を語ってくれました。
観光客向けのリゾートレストラン以外に選択肢が少なかった秋谷の町では地域の人が集える場所といえば浜辺だけだったのです。
民泊施設もオープン
また、2024年10月末からは3階で民泊施設もオープン。「暮らすように旅ができる」よう、客室にはキッチンも用意されています。
木でしつらえられた浴槽の向こうには海と富士山の絶景が広がっています。
さらに屋上は宿泊者だけが利用できるプライベートスペースも。
〈暮らすように旅をする〉と〈旅するように暮らす〉が交差する場所
〈暮らすように旅をすること〉で〈旅するように暮らしてみたい〉という思いが生まれ、移住者が増えれば、町は賑わっていく。
地域住民とマリンスポーツなどで訪れる観光客がカフェで交差してコミュニケーションが生まれる。そこからあたらしいものが生まれていくことで町が活性化し、町の景色が変わっていく。
長年「イエローハウス」と呼んできたローカルの愛着を継承して、町の新しい歴史を紡ぎ始めた「YELLOW HOUSE KURUWA」に”店作りは町作り”であることを改めて教わったような気がしました。
店舗紹介
【YELLOW HOUSE KURUWA】
■神奈川県横須賀市秋谷4292番地1
■営業時間 月曜・木曜~日曜 8時~17時
■定休日 火曜・水曜
※駐車場・駐輪場あり
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