厚生労働省が「みんなで医療を考える月間」と定める11月を目前に控え、「肥満症」について考えるイベントが10月28日、帝国ホテルで開催された。
肥満という言葉は知っていても、肥満症という病気の認知度はまだまだ低い。本イベントは、慢性疾患の克服に取り組むヘルスケア企業「ノボ ノルディスク ファーマ」が主催し、肥満症に悩む人が適切な医療を受け、健康的な生活を送れるよう啓発する目的で行われた。
トークショーではスピードワゴンの井戸田潤さん、元AKB48の大家志津香さんらが登壇。肥満症と正しい医療のかかり方について、意見を交わし合った。
■肥満と肥満症は違う? 正しく理解して、医療機関に相談を
肥満症とは、“肥満に起因・関連する健康障害を有し、減量を必要とする状態”を指す病気である。
実は、日本の成人人口1億500万人のうち4人に1人が肥満と言われ、そのうちの14.9%が肥満症という慢性疾患を患っている。しかし、医師から肥満症と診断され、適切な医療を受けられている人はわずか2.4%にしか満たない。
ノボ ノルディスク ファーマが今年行った肥満と肥満症についての意識調査では、BMI25以上の日本人9,400人のうち、「自身の体型が健康面から問題」と感じている人が71.7%もいるにもかかわらず、「肥満症の定義を知っている人」はわずか8.7%(聞いたことがある人を含めると34.3%)と非常に少ないことがわかったという。
イベントに登壇した、ノボ ノルディスク ファーマの心血管・代謝内分泌マーケティング本部の清水真理子本部長は、「私たちの使命は、肥満症をはじめとする慢性疾患の克服。肥満症のことを知り、ご自身が少しでも肥満症かもしれないと思ったら、医師に相談をしてほしい」と訴え、「このイベントを通して、肥満症がどんな病気なのか理解を深めていただくだけでなく、自分の健康とはなんなのかを考えるきっかけにしてもらえればうれしい」と呼びかけた。
トークショーでは、日本橋れいわ内科クリニックの理事長・井内裕之先生、プロフィギュアスケーターの村上佳菜子さん、元AKB48の大家志津香さん、スピードワゴンの井戸田潤さんの4名が登壇。ライフステージに合わせた健康作りと医療機関へのかかり方についてディスカッションした。
競技の第一線から退いた際に体重増加を経験したという村上さんは、「3歳からスケートを始め、22歳で引退するまでは毎日十数時間運動していたので、現役時代は太りにくかったのですが、引退後にスナック通いや美味しいものを食べすぎて13kgくらい太ってしまった」と明かした。「テレビのロケに行くと地元のおじさんに『太ったね』とストレートに言われることもあり、結構気にしちゃっていました……」と、人知れず傷ついた経験を語った。
ダイエット法について聞かれた村上さんは、「体が運動に慣れすぎているせいで通常の運動では痩せられなかったので、数倍の運動量をこなし、同時に食事も減らすというよりはいいものを採るように気をつけるようにしました」と話し、「今は現役のベスト体重まで戻りましたが、筋肉量は違うので少しふっくら見えるかも。それも自分のいいところで今の体も素敵だと思いながら、楽しく減量していきたい」と前向きにコメントした。
太りやすい体質でAKB時代は常にダイエットしていたという大家さん。「一時期無理なダイエットをして、168cmで46kgまで体重を減らしていました」と打ち明け、「周りからは『痩せている』と言われていたんですが、自分では『まだ太ってる』と思うくらい、痩せてる実感はなかったですね。今思えば自分のことが見えなくなっていたなと」と当時を振り返った。
AKBを卒業したあとは大家さんも体重増加を経験したといい、「卒業時は49kgだった体重が1年間で73kgまで増えました」と告白。「体重が増えたこと自体は『太るポテンシャルがある!』と前向きに捉えていたんですが、健康的にはよくないと思って、パーソナルジムでウエイトトレーニングと有酸素運動、食事管理などをして減量しました。今はYouTubeなどでダイエットを発信しつつ、56kgまでゆるやかに減らしています」と語った。
ライフステージの変化について問われた井戸田さんは、「7月に子供が生まれたので生活はガラッと変わりました。夫婦ともにお酒好きでしたが、妻の妊娠中はお酒が飲めないので、僕も必然的にアルコール摂取量が減りましたね。子供主体の生活リズムになったおかげで夜ご飯を食べる時間が早くなり、その分朝はお腹が減って起きるんですよ」と最近の健康的な生活に触れつつ、「ただ運動はしていないので、お腹が出てて、赤ちゃんのようなボディになっている(笑)」と笑いを誘った。
「健康を保つためにはどんな医療機関にかかるべきか」という質問を受けた井内先生は、「まずは、地域の医療や福祉をまとめて行う『かかりつけ医』に相談していただくのがいいと思います」と提案。
「お近くのかかりつけ医で受診し、必要に応じて専門機関を紹介してもらうようにしてください。かかりつけ医がいない方も多いと思いますが、現在厚生労働省では、かかりつけ医の仕組みをもっと皆さんに利用してもらうための発信をスタートしています」と呼びかけた。
イベント後半には、井内先生による講演も行われた。
肥満と肥満症の違いについて井内先生は、「肥満という言葉に『症』が付くだけで意味は大きく変わります。日本ではBMI25以上になると肥満と定義されていますが、まだ病気ではない。肥満によって、耐糖能障害や、脂質異常症、高血圧など11個の健康障害が出てくることで肥満症と診断され、医学的に減量が必要となります」と解説。「体重が増えることでこれらの症状が気付かぬうちに進行することもある」と注意を呼びかけた。
講演の最後には「肥満症は病気。生活面だけではなく、生理的、心理的、環境的、遺伝的などさまざまな要因が組み合わさることで起きる慢性疾患だということを知ってもらいたい」と述べ、「肥満症の治療は、見た目を良くすることだけが目的ではなく、肥満によって起こる慢性疾患の健康障害を減量によって改善し、QOLを高めることが最終目標。偏見に晒されやすい疾患だが、社会全体で取り組むべき課題だと理解してほしい」と強く訴えた。