藤井聡太竜王に佐々木勇気八段が挑戦する第37期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第3局が10月25日(金)・26日(土)に京都府京都市の「総本山仁和寺」で行われました。対局の結果、挑戦者意表のダイレクト向かい飛車を中終盤のねじり合いで制した藤井竜王が99手で勝利。2勝1敗で白星先行としました。

用意のダイレクト向かい飛車

ともに先手番で勝利し1勝1敗で迎えた本局は後手となった佐々木八段が意表の作戦を披露します。角交換ののち2筋に飛車を振ったのはダイレクト向かい飛車と呼ばれる戦法。相手の事前研究を外しつつ力戦に持ち込みたい狙いで、玉側の端の位が取れているのが主張です。これを見た先手の藤井竜王は持ち時間を投じて対策を考慮することになりました。

いつ戦いが始まってもおかしくないジリジリとした間合いの計り合いが続きます。先手としては地下鉄飛車の筋を絡めて9筋を逆襲するのが有力な構想ですが、振り飛車側の慎重な駒組みを前にうまく戦機をつかめません。このあたりの攻防について局後「まったく自信がなかった」とした藤井竜王が端歩を突っかけたところで1日目の戦いが終了。

大きかった勝負手

佐々木八段の記した封じ手が開封されて2日目の戦いが始まります。形勢は互角ながら手順に馬を自陣に引き付けた銀冠が手厚い格好で、実戦的には振り飛車ペース。佐々木八段はこのあと双方の玉頭となる7筋の歩をぶつけてペースをつかみました。藤井竜王としては左辺の勢力争いで負けないために桂損の実害を受け入れるよりありません。

佐々木八段が優勢を築くかと思われた終盤の入り口で藤井竜王が勝負手を繰り出します。5筋の歩を突き出したのは空間を作って角を打ち込む狙いで、実戦はこれを利かされと見た佐々木八段はこれを手抜いて攻め合いへ。しかし結果的にはこの折衝が勝敗を入れ替えることになりました。佐々木八段としては決断の良さが裏目に出る形に。

次戦への期待ふくらむ

長い我慢の時間を経て体を入れ替えることに成功した藤井竜王は鋭い踏み込みで勝勢を確立します。二枚角を連続して盤上に打ったのが敵玉への寄せをにらむ鋭手。孤立する自玉がギリギリのところで寄らないのを見切っているからこその寄せでした。終局時刻は18時26分、最後は自玉の詰みを認めた佐々木八段が投了。

全体を振り返ると、佐々木八段の作戦選択が見ごたえ十分の中盤勝負を招いた好局に。勝って2勝1敗とした藤井竜王は「1日目の時点で失敗したと思っていた。(次戦に向け)いい状態で臨めるよう準備したい」と抱負を語りました。佐々木八段の先手番で迎える第4局は11月15日(金)・16日(土)に大阪府茨木市の「おにクル」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 終局後のSNSには「最後の切れ味すごかった」「最後はスッパリ」と藤井竜王の寄せへの賛辞も並んだ(提供:日本将棋連盟)

    終局後のSNSには「最後の切れ味すごかった」「最後はスッパリ」と藤井竜王の寄せへの賛辞も並んだ(提供:日本将棋連盟)