ベビー・育児用品メーカー大手のピジョンが10月22日、かえつ有明中学校(東京都江東区)の3年生に出前授業「赤ちゃんを知る授業」を実施した。哺乳瓶のカテゴリで世界的なシェアを誇り、現在世界70カ国以上の家族に製品が愛用されているメーカーとして、60年以上にわたって赤ちゃんと向き合い続けてきた同社独自の教材を活用する本授業。その取り組み背景や実際の授業の様子を取材した。

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    ピジョンによる出前授業「赤ちゃんを知る授業」

オリジナル教材で育児への関心を高める

長年にわたる少子化と核家族化の進行で、子どもたちが赤ちゃんや育児に直接触れる機会が減り、家庭内で育児を自然に学ぶ機会が減少している昨今。育児の実態や赤ちゃんに対する理解が乏しい傾向にある子どもたちは、赤ちゃんに対する興味や関心が薄く、早期教育によって社会全体で育児への関心と理解を深める必要性が高まっていると考えられている。

未来を創る世代が育児に関する知識を身につける機会提供のため、ビジョンでは育児についてリアルな学びを提供する独自のプログラム「赤ちゃんを知る授業」を、2021年9月から開始。2024年6月までで合計約400校、約3万2,000名の生徒に授業を提供してきた。

「赤ちゃんを知る授業」ではピジョンブランド制作の教材を使い、学校の教科書でカバーしきれない赤ちゃんの特徴や、体験を通じて育児のリアルな困りごと、そこで生徒たち自身ができる手助けのあり方などを学ぶ。

授業は講義で赤ちゃんとのコミュニケーションに不可欠な知識を身につけた後、社会の一員として生徒が主体的にできるサポートを考え、行動に移すきっかけを与えるという構成となっている。

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    育児についてリアルな学びを提供する独自のプログラム

授業後に生徒を対象に実施したアンケート調査では、赤ちゃんに対する興味・関心があると答えた生徒の割合が約17ポイント上昇。また、「赤ちゃんを見かけたときに、あなたが赤ちゃんにできることがあると思いましたか?」という問いには、90.1%の生徒が自分にもできることがあると答えているという。

妊婦ジャケットを着用してママの気持ちに

ピジョン社員の稲垣亜唯氏が講師役を務めた今回の出前授業は、50分間1コマで実施された。両親などから聞いたエピソードをもとに、まずは生徒自身が赤ちゃんだった頃の印象的な出来事などを振り返って発表。実際の赤ちゃんと同じようなサイズと重さでつくられた赤ちゃんの人形を抱っこする時間が設けられた。

「0.2ミリ程の大きさの受精卵がお腹の中で少しずつ大きくなり、妊娠3カ月ほど経つと、重さにしてジャガイモ1個分ほどになります。10カ月目になると3,000グラム前後で生まれます。低出生体重児はお医者さんの特別なケアを受けて成長します」

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    赤ちゃんの人形でサイズや重さを確認

続いて、言葉を話せない赤ちゃんは泣くことで自分の気持ちを伝えることや、身の回りのものを口に入れて確かめようとする習性など、赤ちゃんに特徴的な行動とその意味について解説が行われた。

「赤ちゃんの胃の大きさはさくらんぼの実くらいの大きさで、一度に多くの母乳を飲むことができないので、回数を分けて1日だいたい6回、3~4時間程度の間隔で母乳を飲みます。また、生まれて間もない赤ちゃんは1日約16時間、生後半年でも13時間と、赤ちゃんはよく寝ます。生後2ヶ月頃までは昼夜の区別ができないと言われ、昼間に起きて夜に寝る習慣が身につくまでには1年ほどかかるとされています」

特に初めての経験となるママ・パパにとって子育ては不安なことの連続。より安心して子育てをするには、祖父母や地域・職場、保育園など周囲の人の理解や手助けが必要だ。

動画教材なども活用して進められた今回の授業では、代表の生徒が妊婦ジャケットを着用して日常的な動作を行う体験を用意。実際にママ・パパの気持ちを想像してみる場面もあった。

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    妊婦ジャケットを着用して妊婦さんの気持ちを想像した

妊娠8カ月〜10カ月を想定した妊婦ジャケットの重さは約7キロ。体験した代表生徒の一人は「想像以上に重たくて、腰がキツくなってしまいました。歩いていて支えていても体全体に重さを感じて、妊婦さんがリラックスできる体勢や場所を少しイメージできたかなと思います」と、感想を述べていた。

赤ちゃんの人形を乗せたベビーカーを押す体験では、教室などに設けられたルートを回り、駅の改札などでのベビーカーの取り回しの難しさを実感したようだ。

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    ベビーカーを押す体験も

街中でも自分たちができる手助けを

その後のグループワークでは、実際の街なかでの場面を想定して、どんな手助けができるか思いついた考えを付箋に書き出し、グループごとに発表した。

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    グループワークで赤ちゃんにどんな手助けができるか話し合った

「ベビーカーを押している人が階段の前で困っているとき」というテーマで考えた班は、「赤ちゃんが親から離れて嫌がらないように一緒に支えて持つか、親の荷物を持ってあげる」「声をかけてスロープやエレベーターを案内してあげる」と発表。また、「公共交通機関や飲食店で赤ちゃんが泣いているとき」について話し合った班は、「うるさくしていると赤ちゃんが余計に泣くかもしれないので静かにしてやさしく見守ってあげます」と、自分たちの考えを紹介した。

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    グループごとに自分たちの考えを発表

講師役を務めた稲垣氏は生徒たちに次のようなメッセージを送って授業を締めくくった。

「今日は皆さんに街なかでどんなお手伝いができるか、実際に考えてもらいました。赤ちゃんや赤ちゃんを育てる人を他人と切り離さず、自分にできることを考えて行動してほしいと思います。将来、皆さんや皆さんの身近な人に赤ちゃんが生まれたときは少しでも今日の授業のことを思い出してください」

2024年度、ピジョンでは4月より教材の提供を開始。年度内で約150校での「赤ちゃんを知る授業」を実施する予定だという。