多くの人が悩まされている「肩こり」。しかし、毎日のように感じている割には、具体的な解消法がわからず放置している人もいるのではないでしょうか。肩こりはなぜ起こり、どうすれば改善するのでしょう。今回は、肩こりの主な原因や解消法について解説します。

■肩こりの原因って? どんな症状が出る?

肩こりとは、首筋や、首の付け根から肩・背中にかけての筋肉がこわばり、だるさや重さ、張り、痛みなどを感じることです。人によっては、頭痛や吐き気を伴うこともあります。こうした肩こりを日常的に感じ、肩を揉んだり首を回したりして何とかしのいでいる人は多いでしょう。

実際、厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」によると、男女とも自覚症状の2位に「肩こり」が挙げられています(参照元:2022(令和4)年 国民生活基礎調査)。

肩こりが起こるのは、重たい頭を支えている首や二本の腕の重さが、肩に集中するのが理由の一つとされています。つまり、普通に生活するだけでも、元々肩はこりやすい場所なのです。

ただし、運動した時に肩が痛む、手のしびれや麻痺を伴う、首や肩を動かしていなくても痛む、徐々に症状が進むといった場合は要注意です。骨や神経の異常による「病気の症状としての肩こり」の可能性もあるため、すぐに病院を受診しましょう。

また、「椎間板ヘルニア」や「肩関節周囲炎(四十肩・五十肩・凍結肩)」など、首や肩の骨・筋肉に肩こりの原因があるケース、内臓の病気や高血圧、眼精疲労など、首や肩以外に肩こりの原因があるケースもあります。

しかし実際には、これらが原因ではない「本態性肩こり」が大半を占めます。本態性肩こりは、原因のわからない肩こりですが、後述する姿勢の悪さや運動不足、過労、冷えなどが要因と考えられています。

■肩こりになりやすい人の特徴は?

肩こりのほとんどは、原因不明の「本態性肩こり」であると言われていますが、肩こりになりやすい人には特徴があります。たとえば、以下のような生活習慣のある人や身体的特徴のある人です。

・首や背中が緊張するような姿勢で作業している
・連続して長時間同じ姿勢をとっている
・姿勢が良くない(猫背・前かがみ)
・運動不足
・精神的なストレスがかかっている
・なで肩
・体型が華奢
・ショルダーバッグを同じ肩にかけている
・過労
・寝不足
・デスクワークが多い
・冷房に当たっている
・冷え性(特に女性)

元々、肩こりになりやすい体の特徴を持っている人もいますが、長時間のデスクワークや過労、運動不足など、肩に負担のかかる生活を送り、肩こりになっている人は多いのではないでしょうか。

■「冷え」と肩こりの関係性とは

肩こりになりやすい人の特徴はさまざまですが、特に、「冷え」と肩こりには密接な関係があります。肩こりの症状がなくても、肩に手を当てた時に「冷えている」と感じるなら、それは冷えによる肩こりの前兆かもしれません。

肩を動かしていなかったり、冷房などの冷気に触れていたりすると、血管が収縮して血液の流れが悪くなってしまいます。そして、冷たくなって血行不良になっているところに痛みやこわばりが生じるのです。

冷えによる肩こりを改善するには、まずは冷えているところを温めるのが効果的です。温めることで血のめぐりが良くなり、肩こりの予防にもなります。たとえば、蒸しタオルなどで肩を温めると、筋肉の血行が改善し疲れもとれます。

ただし、表面だけを温めても根本的な改善にはつながりませんので、入浴などで時間をかけて身体の芯から温めることも心掛けましょう。

■肩こりを改善するおすすめの方法

肩こりを改善するには、首や肩の筋肉を伸ばしたり縮めたりするストレッチをこまめに行うこともおすすめです。たとえば、椅子に座ったままでもできる肩のストレッチとして、以下のようなものがあります。

<首まわりのストレッチ>

首を左側に倒す。左手は右の側頭部に添え、右腕はできるだけ床の方へ引き下げ、このまま20秒程度静止する。そのまま首を左斜め下に倒し、20秒程度静止。腕を下して首を正面に戻したら、反対側も同様に行う。

<肩の上下体操>

肩をすくめて、ストンと落とす。これを10回ほど繰り返す。

<肩回し>

腕を肩の高さに上げたら、腕の力を抜き、ひじで前後に円を描くように肩をゆっくりと回す。前回しと後ろ回しを交互に10回ずつ繰り返す。

こうしたストレッチのほかにも、ストレスをため込まない、蒸しタオルを当てるなどして目の疲労をとる、バッグをいつも同じ側の肩にかけない、長時間同じ姿勢を続けない、正しい姿勢を心がけるなどの対処が有効です。

特に、前かがみになったり背筋を反らし過ぎたりすると、姿勢が悪くなり、肩に負担がかかって肩こりの原因になります。正しい姿勢をとるには、あごを引き、頭のてっぺんから糸でつり下げられているイメージで、おへそ辺りに軽く力を入れてお腹を引っ込めて立つようにしましょう。

最後に肩こりの予防法に関して、整形外科の専門医に聞いてみました。

肩こりは、首や肩周辺の筋肉が緊張し、痛みや重だるさを感じる症状です。主な原因は、姿勢の悪さや長時間の同じ姿勢、運動不足、ストレスなどが挙げられます。特に、デスクワークやスマートフォンの使用が増える現代では、前かがみの姿勢が肩の筋肉に負担をかけ、肩こりを引き起こしやすくなります。また、血行不良や冷え、精神的な緊張も肩こりの一因となります。

予防のためには、以下の対策が有効です。まず、姿勢を正すことが重要です。背筋を伸ばし、肩を開いた姿勢を保つことで、肩周りの筋肉への負担を軽減できます。次に、適度な運動やストレッチを日常に取り入れることが大切です。特に肩甲骨周りの筋肉をほぐす運動や、肩を回すストレッチは効果的です。また、長時間同じ姿勢を続けないよう、定期的に休憩を取って体を動かすことも肩こりの予防に役立ちます。さらに、リラックスを心がけ、ストレスを軽減することで精神的な緊張からくる肩こりも予防できます。

これらの対策を実践し、肩周りの筋肉の健康を保つことで、肩こりを効果的に予防できます。

梶田 幸宏(かじた ゆきひろ)先生

一宮西病院 整形外科/統括部長、肩関節センター長
資格:日本専門医機構認定 整形外科専門医