東京駅丸の内駅舎内にある美術館、東京ステーションギャラリーで、展覧会「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が開催されています。コンランを知らない人でも、「ザ・コンランショップ」の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。同展は、第二次大戦後のイギリスの生活文化に大きな変化をもたらし、デザインブームの火付け役にもなったテレンス・コンランの人物像に迫る、日本で初めての展覧会です。

  • 東京ステーションギャラリーで「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が開催されている

1931年にロンドンで生まれ、戦後まもなくテキスタイルや食器のパターン・デザイナーとして活動を始めたコンラン。彼はデザイナーであると同時に起業家、家具職人でありホテル経営者、小売業に出版業、レストラン業、そして美術館の設立者でもありました。“Plain, Simple, Useful(無駄なくシンプルで機能的)”なデザインが生活の質を向上させると信じ、デザインによる変革に挑戦し続けた彼を、本展を監修したデザイン・ミュージアム元館長のディヤン・スディックさんは「イギリスという国の見え方や、食や服飾の文化を一変させた人」と評します。

  • 展示風景

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コンランは1960年代に、ホームスタイリングを提案する画期的なショップ「ハビタ」のチェーン化で成功を収め、起業家としての手腕を発揮。1970年代から展開した「ザ・コンランショップ」における“セレクトショップ”という概念は、日本をはじめ世界のデザイン市場を激変させました。さらに家具などのプロダクトの開発や、廃れていたロンドンの倉庫街を一新させた都市の再開発、書籍の出版など、その活動は多岐に渡ります。

  • 展示風景

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これらと同時進行的に、1950年代から乗り出していたレストラン事業では、高級レストランからカジュアルなカフェまで50店舗以上を手がけ、“モダン・ブリティッシュ”という新しい料理スタイルをイギリスの食文化に定着させつつ、1989年には長年あたためていたデザイン・ミュージアムの設立構想を実現させています。

  • 展示風景

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50年もの長きに渡り多層的な活動を続けたコンランの業績を、同展では「デザイン、コンランのはじまり」「起業の志:ハビタとザ・コンランショップ」「食とレストラン」「再生プロジェクトと建築/インテリア」など、8つのパートで紹介。同時に進行していた活動がいくつもあるため、展示は必ずしも年代順ではありません。

  • 展示風景

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展示ではパターン・デザインした食器、テキスタイルといった初期のプロダクト、家具デザインのための模型、ショップやレストランのためのアイテム、発想の源でもあった愛用品、著書や写真、さらに映像など、300点以上の作品や資料が登場。また、コンラン自身のポートレートの代わりに、彼から影響を受けた人々のインタビュー映像が、各章に登場します。“ライフスタイル”という言葉を嫌い、“スタイル・オブ・ライフ(生き方・暮らし方)”を使っていたというコンランが残した言葉も、そこかしこに展示されています。

  • 展示風景

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「コンランは、ものづくりに熱意があるデザイナーにいつも共感を抱いていました。『作る方法を知らなければ、それをデザインしたとは言えない』というのが彼の口癖。デザインとは、エリート主義や上辺のスタイルなのではなく、私たちの身の回りの世界を見つめる方法なのだと示そうとした、そこにコンランの功績があるのです」(スディックさん)

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展示では、コンランと日本との深いつながりも紹介されます。バブル崩壊の余韻が残る1994年に、ザ・コンランショップは日本初上陸し、これを機にコンランは日本でのプロジェクトに携わるようになりました。赤坂のアークヒルズ内の「アークヒルズクラブ」内装デザイン、リゾートホテル「二期倶楽部」、六本木ヒルズのレジデンス棟などを手がけ、2019年にグローブ・トロッター社から限定販売されたトラベルケースが、旅の思い出やアイディアスケッチで埋め尽くされた最晩年の彼のデザインに。2020年、コンランは自邸バートン・コートで88年の生涯を閉じました。

  • ミュージアムショップ

「ザ・コンランショップ」日本初出店から、今年で30周年。デザインブームの火付け役にもなったコンランの人物像に迫る意欲的な展覧会は、2025年1月5日まで開催です。

■information
「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」
会場:東京ステーションギャラリー
期間:10月12日〜2025年1月5日(10:00~18:00※金曜は20時まで)/月曜休、ただし11/4日、12/23日は開館
料金:1,500円/高校・大学生1,300円/中学生以下無料