海老芋(エビイモ)とは? 産地や味の特徴

海老芋は、サトイモ属ヤマサトイモの変種で、唐芋(トウノイモ)という里芋(サトイモ)の一種です。栽培方法に特徴があり、何度も土寄せして海老のように湾曲した形に育てます。その形と縞模様が車海老のように見えることが、海老芋という名前の由来とされています。

海老芋の産地

現在の生産量が最も多いのは静岡県ですが、歴史的には京都を中心に関西地域で多く栽培されています。「京芋(キョウイモ)」「九条芋(クジョウイモ)」ともよばれ、京野菜(京都府)の他、なにわ伝統野菜(大阪府)、姫路市の伝統野菜(兵庫県)にも認定されています。

来歴は、江戸時代の安永年間(1772~81年)に、青蓮院宮(しょうれいいんのみや)が九州の長崎から持ち帰った唐芋を京都御所に仕えていた平野権太夫(芋棒で知られる京料理店「いもぼう平野家」の先祖)に栽培を託し、そこでできた大きく良質の芋が海老芋の始まりとされます。

海老芋はどんな食材?

肉質はきめ細かく滑らかで独特の食感があることが広く認められています。上品な風味で、料亭などで使われる高級食材としても知られています。また、種芋を元に、親芋、子芋、孫芋、と増え続けていくので、子孫繁栄の縁起物としても有名です。お祝い料理の「鯛」と並んで、海老=海の幸、海老芋=里の幸、として珍重されています。

旬は11月~1月

海老芋の出荷時期は、サトイモとほぼ同じ10月〜2月です。最盛期は11月〜1月で最も味が良く価格も手頃な旬となります。同時期には、ダイコン、ネギ、コマツナなどの冬野菜が旬を迎えます。

海老芋と京芋の違い

京芋は海老芋の別名です。京都の伝統的な野菜であり、関西地方では京芋とよばれることが多くなっています。

海老芋と里芋の違い

海老芋は里芋の一種です。里芋は主に子芋や孫芋を食べますが、海老芋は親芋も食べます。里芋と比べて柔らかく粘りが強いのが特徴です。

海老芋の栽培方法

4月から5月初旬に芽の出た種芋を植え、11月まで約半年かけて栽培します。収穫後も土に埋めておくことで翌年2月ごろまで出荷されます。海老芋にも種類があり、茎が赤いものが「唐芋(本海老)」、青(黄緑色)のものが「女芋」とよばれています。
ここではサトイモの栽培方法をベースに紹介します。

土作り・植え付け

水はけがよく通気性があり肥沃(ひよく)な土壌を好みます。植え付け1週間前には軽く苦土をまいて土を耕しておきます。堆肥と化成肥料を入れ、畝立てをして種芋を芽を上にして株間60cm、深さ5~6cm程度に植え付けます。

施肥・水やり

土壌表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。5月下旬と6月下旬ごろ2回追肥をして、軽く土寄せをします。

土寄せ(土入れ)

7月から8月にかけて、親芋と子芋が離れるように、間に土を入れて圧力をかける作業を4〜5回ほど繰り返します。

収穫

葉がしおれたころが収穫適期。地際で葉柄を切り取り、イモを傷つけないように離れた所からシャベルを入れて堀り上げます。

海老芋の食べ方

海老芋は、サトイモの仲間では「親芋・子芋ともに食べるタイプ」に分類されます。市場に出荷されているのは子芋と孫芋で、200〜300gの子芋が良品とされますが、小さな孫芋も食べられます。

肉質は、きめ細かく柔らかで、ねっとりとしたクリーミーな食感が独特で、うまみがあります。調理面では、煮込んでも煮崩れしにくいのが特徴です。煮物やおでん、揚げ物にも適しています。

下処理でぬめりを落とす

海老芋のぬめりは煮汁が濁る原因となります。作る料理によっては、ぬめりを落として下処理してから調理をします。ここでは一般的な下処理の手順を紹介します。

水で洗う

海老芋は水の中でこすり合わせるように水洗いして、ざるに上げて乾かします。

上下を切り落とす

上下の硬い部分を切り落とし、作る料理に合わせてカットします。

米のとぎ汁で茹でる

鍋に海老芋を入れ、米のとぎ汁を海老芋が隠れる程度注いで、火にかけます。煮立ったら3分程度茹でます。

ざるに上げて粗熱を取る

茹でた海老芋は、ざるに上げて粗熱を取ります。

海老芋は冷暗所で保存

海老芋を保存する場合は、土が付いたまま冷暗所に置きます。土が落ちている場合は、濡れた新聞紙に包んで冷暗所へ。複数個をまとめて包んでもOKです。海老芋は低温に弱く乾燥しやすいので、冷蔵庫に入れるのは避けましょう。

海老芋のおすすめレシピ5選

海老芋の煮崩れしない性質やねっとりとクリーミーな食感を生かして、できるだけ少ない材料で家庭で手軽に作れるレシピを集めました。

海老芋のそぼろあんかけ

海老芋のねっとりとした食感と、あんのとろみは好相性。鶏そぼろあんで、食べ応えのある一品に。

材料(2人分)

海老芋        2個

鶏ひき肉       80g

米粉(片栗粉でもよい)大さじ1

水          大さじ2

だし汁        300ml

酒          大さじ1

みりん        大さじ2

しょうゆ       大さじ1.5

しょうが(千切り)  適宜

作り方

海老芋は食べやすい大きさで下処理する

鍋に海老芋を入れ、だし汁を注いで中火で煮る

海老芋が竹串が通る柔らかさになったら火を止め、海老芋を器に盛る

残った煮汁に、鶏ひき肉、酒、みりん、しょうゆを入れて中火にかける

鶏肉が煮えたら、水で溶いた米粉を入れとろみを付ける

器に盛った海老芋に、5をかけてしょうがを飾る

海老芋の揚げ出し(2人分)

材料(2人分)

海老芋          4個

米粉(片栗粉でも良い)  適量

揚げ油          適量

だし汁          1カップ

しょうゆ         大さじ1

みりん          大さじ1

大根(すりおろす)    適量

しょうが(すりおろす)  適量

作り方

海老芋は食べやすい大きさで下処理し、竹串が通る柔らかさまで茹でる

キッチンペーパーで水気を取り、食べやすい大きさに切り、米粉をまぶす

フライパンに油を1cmの深さまで入れ、弱火にかけ、2の海老芋をこんがりと色が付くまで揚げ焼きして、器に盛る

小鍋にだし汁、しょうゆ、みりんを入れて火にかけ、ひと煮立ちさせて火を止める

器に盛った海老芋に、4をかけ、大根おろし、しょうがを乗せる

海老芋のポタージュスープ(2人分)

海老芋のとろみを生かすならポータージュがおすすめ。クリーミーに仕上がります。

材料(2人分)

海老芋  1個

玉ねぎ  1/4個

バター  小さじ1

コンソメ 1個

水    200ml

牛乳   200m

塩こしょう 少々

作り方

海老芋はよく洗い、皮ごと水から茹で、柔らかくなったらざるに上げる

海老芋が熱いうちに硬い部分を切り落として皮をむき、1.5cm角に切る。タマネギはスライスしておく

鍋にバターを熱して玉ねぎを透き通るまで炒め、茹でた海老芋を加えて更に炒める

水とコンソメを入れてひと煮立ちさせ、ミキサーにかけて鍋に戻す

牛乳を加えて混ぜながら温め、塩こしょうで味を整えて火を止める

海老芋おでん

煮込んでも形が崩れにくい海老芋は、おでんの具にも適しています。同時期に旬を迎えるコマツナと大根、彩りにトマトを合わせて。

材料(2人分)

海老芋          2個

練りもの         適量

大根           1/4本

トマト          中2個

コマツナ         1株

結びしらたき       4個

白だし(分量の水で希釈) 800ml

作り方

海老芋は蒸し器で竹串が通る柔らかさまで蒸して、皮をむき、大きめに切る

大根は皮をむいて厚さ2cmの輪切りにして下茹でし、コマツナは下茹でして3本ずつ束ねて結び、トマトは湯むき、練りものは熱湯をかけて油抜きする

鍋に希釈した白だしを入れて煮立て、全ての材料を入れて、沸騰させずにゆっくり火を通す

芋棒(2人分)

芋棒とは京都の伝統料理で、海老芋と棒鱈(ぼうだら)の炊き合わせのこと。棒鱈は戻す際に水を適宜取り替えるとより臭みが抜けます。

材料(2人分)

海老芋       4個

棒鱈(戻しておく) 長さ5cm程度を4切れ

だし汁       400ml

しょうゆ      大さじ4

酒         大さじ1

みりん       大さじ1

砂糖        大さじ2

作り方

棒鱈は、米のとぎ汁に一晩以上さらして戻しておく

海老芋は、皮をむいて水に浸してアクを取り、棒鱈は食べやすい大きさに切る

鍋にだしと酒、戻した棒鱈を入れて中火にかけ沸騰したら、海老芋を入れて弱火で煮る

海老芋が柔らかくなったら、しょうゆ、みりん、砂糖を加えて更に煮る

棒鱈と海老芋を取り出して器に盛り、鍋に残った煮汁を半量まで煮詰めてかける

伝統食材の海老芋、実は家庭でも調理しやすい

伝統野菜の海老芋は、高級食材として知られていますが、きめ細かく粘りのある肉質で煮崩れしにくい性質があるため、家庭でも扱いやすい食材だといえます。煮る、揚げる、蒸すなどいろいろな調理法に向き、いずれも独特のねっとりとした食感が引き出せます。

旬のおいしい時期に、お正月のおせち料理や郷土料理などの伝統食から、クリーミーさを生かした洋風アレンジまで、いろいろな料理に挑戦してみてはいかがでしょう。海老芋は京野菜として訪日客にも知られた存在。英語では、Ebi potetoやShrimp potatoなどの呼び方があり、Kyoimoでも通じています。

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