50ccのいわゆる“原チャリ”に代わる移動手段のひとつとして、スズキが開発を進める電動モペッド「e-PO」(イーポ)。電動アシスト自転車のような見た目だが、原チャリにはないメリットはあるのだろうか。乗り味はどうなのか。バイク乗りが実機で走って確認してきた。
折りたためば室内保管や持ち運びもOK
スズキのe-POは、モーターだけを使ってバイクのようにも乗れるし、ペダルを使えば電動アシスト自転車のようにも乗れるというちょっと変わった乗り物だ。
そんなe-POにあって原チャリにはない大きな特徴は何か。まずひとつは、折りたためることだ。
e-POは折りたたみ可能なアルミフレームを採用している。スズキ担当者の様子を見ていると、慣れてしまえば1分もかからずに折りたためるようだった。
折りたためることのメリットは室内保管が可能なこと。共同住宅に住んでいて安全な保管場所が確保できない人には助かるし、普段は外に置いていたとしても、荒天時にはすぐに室内に持ち運べるのが嬉しい。
二輪には盗難の心配がつきまとう。部屋で保管できれば盗難リスクは大幅に減少するに違いない。アクティブなユーザーであれば、クルマでキャンプなどに出かける際にe-POを積んで行って、目的地で手軽な移動手段として活用するという使い方も考えられる。
シート高の調整機能は意外と便利そう
e-POにあって原チャリにはない特徴の2つ目は、シートの高さが調整できること。
自転車でもそうだが、男性と女性では体格が違うため、シートの高さを男性に合わせると女性が乗る際に足付き性に不安を覚えるというケースは少なくない。
e-POの場合は乗る前にシートの高さが調整できるので、こうした問題はなくなる。まるで自転車のような使い勝手だが、高い互換性は家族利用などを考えれば意外と大きなメリットと言えるのかもしれない。
「e-PO」を試し乗り!
ここからは試乗で確認した乗り方と乗り味をお伝えしていきたい。
シートを調整したら、モーターを起動させる。起動はハンドル中央のメーターにあるスイッチを長押しすればOKだ。
またがってみた感じは、原付というよりもやはり自転車という感じが強い。これで一体どんな走りをしてくれるのか。まずは「フル電動モード」で試乗をスタート。
期待しながらアクセルを開けていくと、車重が軽いこともあってなかなかの加速力を発揮する。車速はすぐに最高速度の30km/hに到達した。特定小型原動機付自転車の最高速度20km/hとはわずか10km/hの差だが、一般交通の速度帯での利用をイメージすれば、この10km/hの差は非常に大きいと実感できる。
試乗コースは多少の砂利もあるコンディションだったが、しっかりと止まって曲がってくれるところからはスズキの技術力とこだわりを感じた。
続いて「アシスト走行モード」を試してみる。といってもモード切り替えに特別な操作は必要ないので、ペダルを漕ぐだけだ。
だいたい20km/hくらいでペダルを漕いでみたが、モーターのアシスト力が強い(人力1に対してモーター3)こともあって、足がついて行かずにペダルが空回りするようなこともなく、実にスムーズに切り替えられた。そのままペダルを漕いでいると30km/hに到達。電動アシスト自転車は24km/hでアシストが終了するが、e-POは原付一種とあって24km/hを過ぎてもしっかりとアシストを継続していた。
この「アシスト走行モード」の良さを感じたのがコーナリング時だ。コーナー手前でペダルを漕ぎだすことで、コーナーを自転車感覚で回ることができた。普段からバイクや原チャリに乗り慣れていない人でも、自転車感覚で運転できることにより安心して走れるはずだ。
最後にモーターを切って「ペダル走行モード」を試してみたが、これはもう自転車そのもの。それだけに、灯火類に使う電力が切れてしまった場合に自転車として使用できないのは、法規とはいえ不思議な感覚だ。
原チャリと自転車のいいとこ取りで、ある意味、原チャリの進化系といった感のあるe-PO。現在の原チャリユーザーの代替モビリティとして幅広く支持を得られそうなので、発売となればけっこうヒットするかもしれない。