2023年9月8日。エリザベス2世の一周忌を偲び、彼女が公私にわたって乗り込んだ歴代ランドローバーのパレードがグッドウッド・サーキットにて開催された。そして2024年8月。ペブルビーチ・コンクールデレガンスにも女王に関連する10台のランドローバーが集結したのだ。
【画像】ペブルビーチ・コンクールデレガンスにずらりと並んだエリザベス女王陛下のランドローバー&レンジローバー(写真30点)
ウェッジシェイプやFIAレーシングカーなど、展示にも世代交代への思惑が見てとれた今年のペブルビーチだったけれど、企画展の面白さは相変わらず。筆者などはグッドウッドで見逃した「女王陛下のランドローバー&レンジローバー」クラスに大感激してしまった。
Xクラスとして、18番ホールのコンクール会場最奥に並べられた陛下関連のレンジローバー&ランドローバーはいずれもロイヤルファミリーの公式行事はもちろん、彼女がプライベートに使った個体もあった。
エリザベス2世といえば皇位継承1位となってからの第二次世界大戦中、英国王室の女性としては初めて戦地に赴き、救急車両のドライブやサービスといった公務に就いた方だ。運転好きはよく知られるところだろう。
また父君のジョージ6世が1948年(ランドローバー誕生年)にわずか48台のみが作られたランドローバー最初のプリプロダクションプロトタイプ(シャシーナンバーL31、HAC379)を駆ったことでランドローバーとロイヤルファミリーとの縁が始まっている。ちなみにジョージ6世によってロイヤル・ワラントが授与されたのは1951年のことだった。
ペブルビーチに集まった10台は、今もなおロイヤルファミリーが保有する個体に加えて、ランドローバークラシックや英国自動車博物館、そしてプライベートコレクションからやってきた逸品ぞろいである。
順に紹介していこう。ランドローバークラシックからエントリーされたXクラス-01は1954年式のシリーズ1の86(ホイールベース86in.)ソフトトップだ。NXN1というナンバーをつけたこの個体は、父君ジョージ6世が発注し、後にエリザベス2世も使用したという個体。2010年にレストアされた。
X-02も1954年式のシリーズ1 86ロイヤルセレモニアルで、アメリカのコレクターが所有する個体。その名の通り、リアプラットフォームを改造してセレモニーパレード用に仕立てられている。遠くは豪州パースにまで運ばれて2カ月に及ぶツアーにも供されたという。
X-03は1958年式ランドローバーシリーズ2 88ロイヤルセレモニアル。英国自動車博物館所有のロイヤルコレクションの一台で、”ステートⅡ”の呼び名で知られている。サイドのブルーランプが点灯していれば、ロイヤルファミリーが乗車中という意味だ。
女王自身が好んでドライブしたとされる1966年式のシリーズⅡa 109ステーションワゴン(X-04)。ナンバーはJYV1Dで、6気筒エンジンを積んだごく初期のシリーズⅡがベース。レザーシートや木製ドッグガード、サイドステップなど特別な装備も散見される。
1971年、ステートレビューランドローバーがついにレンジローバーへとスイッチされることが決まった。2年にわたって王室とランドローバー社との間で仕様検討が行われ、誕生したスペシャルボディモデルが1974年式レンジローバー・ロイヤルセレモニアル”ステートⅠ”だ(X-05)。バルクヘッドを前進させ、エグゾーストサイレンサーを追加、リアドアからさらに離している。2002年まで使用された。
X-06は1983年式ランドローバー110ステーションワゴン(A444RYV)で、X-04のシリーズⅡ 109に代わる女王のプライベートカーだ。特別な装備としてはレザーシートやラジオシステム、ダークグリーンペイントなどが挙げられる。現在も王族所有の個体だ。
X-07は90年式レンジローバー・ロイヤルセレモニアルで、”ステートⅠ”としては三代目となる個体。94年には女王のクリスマスカードにフューチャーされた。
四代目のレンジローバー”ステートⅠ”が1998年式P38Aで、X-07からの代替となった(X-08)。ロイヤルクラレットのボディカラーに赤いピンストライプは王家の車の証だったが、この個体にはドアとテールゲートに紋章が手書きで施されている。
X-09は5代目の2005年式レンジローバーL322 ”ステートⅠ”だ。先代と同様にランドローバーのSVO(スペシャルビークルオペレーション)チームによって製作された。2016年にエリザベス女王の90歳を記念したパレードでウィリアム皇太子とキャサリン妃、そしてヘンリー王子が乗車してことでも有名だ。
そして最後に、女王が晩年プライベートカーとしてこよなく愛した2009年式レンジローバーL322ヴォーグ。ナンバーはCK58NPJだ。ボンネットには彼女の愛犬ラブラドールのマスコットが付いていた。この個体も今はまだ王家の所有にある。