デジカメで撮影した大切な写真や動画を安全に保存する環境を整えたい人に支持されているのが、手持ちのハードディスクを組み込むだけでNAS(ネットワークHDD)が構築できるNASキット(NASケース)です。そのNASキットに、究極ともいえる高性能&大容量モデル「ZimaCube」が登場。合計10個ものベイを備え、最大164TBものデータを保存できるだけでなく、さまざまなソフトウエアを追加して自前でGoogleフォトのようなUIの写真サーバーを構築できるなど、データを保存するストレージにとどまらない活用ができる点が好ましいと感じました。
写真や動画はクラウドに上げたくない
自宅のパソコンに保存したデジカメ写真や動画を実家など外出先でも参照したいものの、クラウドにはアップロードしたくない…と考える人が増えています。家族などのプライバシーの漏洩や、生成AI学習での意図せぬ利用の可能性があることなどが懸念されているからです。
そこで活躍するのがNAS。ハードディスクを内蔵したNASが周辺機器メーカーから出ていますが、ハードディスクを省いたNASキットも存在。好きな容量のハードディスクが使える点や手ごろな価格、インターネット経由で外からでもアクセスできるリモートアクセスなど多機能の製品が多いことなどが人気を集めています。
そのようななか、異色の高性能NASキット「ZimaCube」シリーズが応援購入サイトのMakuakeに登場しました。まず特筆すべきが拡張性で、3.5インチSATAベイを6基、M.2 NVMeスロットを4基備えており、最大164TBものストレージを搭載できます。RAIDは0/1/5に対応しており、RAID1/5に設定すれば万が一ドライブが1つ故障してもデータの損失を防げます。
拡張性の高さだけでなく、基本性能の高さも格別。上位モデルのZimaCube Proは、処理性能に優れるCore i5 1235Uを搭載するほか、大容量メモリーや高速ネットワーク、Thunderbolt 4ポートも搭載。PCI Express x16スロットも備え、外部GPUカードを搭載することで生成AIにも対応します。ケースにはデュアル冷却ファンも搭載し、ストレージの冷却も万全です。
ソフトウエアまわりの充実ぶりもZimaCubeの特徴です。OSは独自OS「Zima OS」ですが、多くの拡張用ソフトが用意され、一部はプリインストールされています。写真管理&アルバムソフト、オンラインストレージ、生成AIなど、多くのソフトが専用のアプリストアから入手できます。
ユニークなのが、専用のコミュニティスペースがWeb上に用意され、メーカーやユーザーの間で活発なコミュニケーションが図られていること。ユーザー間でトラブル報告や解決方法の交換が行われているほか、ここで出た意見をもとにメーカーが改善を実施する方針といい、「メーカーがユーザーと育て上げるハードウエア」の文化が作られています。
さまざまなソフトを簡単に追加できる
実際に使ってみました。購入時点で、本体内のストレージにZima OSがインストールされているので、自分で必要なファイルを入手したりターミナルを開いてコマンドを入力する必要はありません。ハードディスクなどのストレージを接続して電源を入れると、1~2分で起動して画面にはIPアドレスが表示されるので、別のPCのブラウザーでそのIPアドレスを入力するとZimaCubeのメイン画面が表示されます。組み込んだストレージは、通常の記憶域にするかRAIDを組むか設定すれば、すぐに反映されます。
写真や動画データの保存は、プリインストールされている「ファイル」のソフトで実行できます。ネットワーク経由でコピーするだけでなく、データが保存されているUSBハードディスクをZimaCubeに接続すれば高速にコピーできます。
無料で入手できるリモートアクセスのソフトを利用すれば、インターネット経由でZimaCubeにアクセスできます。製品に割り振られた独自のIDを入力するだけで接続できるので、こちらも面倒な設定の手間はいりません。ただ、現状ではリモートアクセスのソフトはパソコン用しか提供されておらず、モバイルアプリは後日公開となっているのが残念なところ。
Googleフォトのような写真や動画の管理機能を提供するソフトは、標準では「Prism」がインストールされていたのですが、アプリストアにあった「immich」の方が使いやすく機能も優れると感じました。UIはまんまGoogleフォトで、完成度の高いスマホアプリも用意。人物や被写体を認識してタグ付けする機能も実用的に働き、「猫」など日本語での検索にも対応しています。撮りためた写真や動画を家族で手軽に楽しめるフォトサーバーが簡単に構築でき、Googleフォトの代替として非クラウド環境への保存を望む人は注目といえます。
負荷がかかるとかなり騒々しくなるが、腕が鳴る一品
ZimaCube Proを使っていてまず気になったのが騒音と発熱。ケースのデュアルファンは一定の騒音を出しているのですが、写真を保存してimmichの被写体分析が働くなどCPUの負荷が高くなると、CPUファンの回転数が高まって騒音が響き渡ります。ケースのエアフローは、後方から前方に向けて風が送られる仕組みなので、ZimaCubeをデスクに置いていると熱気が自分の方に排出されるのも気になるところ。
説明書やドキュメントと呼ばれるものが最低限しかなく、詳細が分からないことがいくつかあったのも気になるところ。マザーボード上のUSB端子にはWi-Fiのドングルが差し込まれているのですが、Wi-Fi接続できるような設定はどこにもなし。メーカーに確認したところ、「ほかの用途での利用を想定しており、ユーザーがWi-Fi接続で使えるものではない」との回答がありました。
このように少し荒削りな部分は散見されるものの、ハードウエアとソフトウエアの拡張性の高さは腕に覚えのある人にとっては魅力となるでしょう。販売価格は、ZimaCubeが159,000円、ZimaCube Proが269,000円とやや高めですが、Makuakeでの早割価格を利用すればそれぞれ135,150円、215,200円からの価格で購入できます。大量の写真や動画のデータを安全に保存し、それらのファイルをどこからでも参照したいプロカメラマンやクリエイターには気になる存在となりそうです。