洋梨ってどんな果物?
洋梨は、ヨーロッパ原産の梨のことです。日本でよく栽培されているのはシャリっとした食感の和梨ですが、洋梨はトロッと軟らかい食感をしており、熟すと芳醇(ほうじゅん)な香りがします。洋梨の香りの香水などが販売されているほど、人気の高い香りです。
そして、和梨が丸い形をしているのに対し、洋梨はほとんどの品種で縦長のいびつな形をしています。同じ「梨」とよばれるバラ科ナシ属の果物ですが、味・食感・形は全く別物です。
品種が多いのも洋梨の特徴で、日本で栽培されているのは20品種ほどですが、世界にはなんと4,000以上もの品種が存在しています。世界中でおいしいと愛されながら、形や味などが異なる品種をどんどん増やしているのが洋梨なのです。
洋梨の種類
洋梨の種類
ラ・フランス
洋梨=ラ・フランスと勘違いしている人もいるほど、代表的な品種です。多くの品種が存在する洋梨の中でも、ジューシーで肉厚な果肉の軟らかさと強い甘みはトップクラスを誇ります。
日本では主に山形県で生産されています。甘いラ・フランスを育てるのに適した寒暖差の大きい気候であることが生産数トップの主な理由です。
ラ・フランスには、ビタミンC・食物繊維・カリウム・ペクチンなどが含まれています。中でもペクチンにはコレステロールの吸収を抑制する効果があるため、血中コレステロール値の改善が期待できます。それに加え、腸内で善玉菌のエサになるので、腸内環境を整える力もあるのです。
長い歴史を持つラ・フランスは、栽培の技術をどんどん進化させています。現在は、気温の上昇に対応しつつ、高い品質の実を栽培する技術の開発が進められています。
ル・レクチェ
主に新潟県で栽培されている、幻の洋梨・洋梨の貴婦人ともよばれる洋梨がル・レクチェです。ル・レクチェでなくては味わえない甘みと香り、食感を生み出すためには、追熟の工程が欠かせません。
追熟の作業は、細やかな温度管理や風通しの良し悪しなど気を使わなければならないことがたくさんあり、熟練の技術が必要です。このように、生産の難易度が高いのが幻の洋梨とよばれる理由です。
その分、軟らかい果肉と甘い香りは数ある洋梨の中でもトップクラスです。甘いものが大好きという人に是非味わってもらいたい洋梨です。
ドワイエンヌ・デュ・コミス
ドワイエンヌ・デュ・コミスは、1849年にフランスで生まれた洋梨です。ドワイエネ・デュ・コミスやドワイアンヌ・デュ・コミスとよばれることもあります。
平均して250〜350グラムほどの果実は、熟すととろける舌触りです。しっかりした甘みに程良い酸味がマッチしており、何個でも食べられるようなおいしさです。コンポートにしてもおいしいですが、生で食べるのがベストでしょう。
そんなドワイエンヌ・デュ・コミスが日本に入ってきたのは明治時代初期です。とてもおいしい洋梨であるため人気も高いのですが、実は栽培がかなり難しく、生産量は限られています。生理落下がとても多いため、ドワイエンヌ・デュ・コミスを育てている農家は慎重な栽培を行っています。
シルバーベル
シルバーベルは、ラ・フランスの自然交配実生から選抜された山形県の日本生まれの洋梨です。大きな果実が特徴で、1個400g以上とラ・フランスの倍ほどになることも珍しくありません。
大きいながらも繊細な味と、甘みにマッチした酸味があります。洋梨の生産数第1位の山形県で、ラ・フランスの次に人気の品種です。ラ・フランスよりもシルバーベルが好みな人も多くいます。
ゼネラル・レクラーク
フランス生まれ・青森育ちの洋梨がゼネラル・レクラークです。全国での生産量第1位が青森県で、ブランド品種に指定されています。
収穫したばかりの実は、硬くてガリガリとした食感でおいしさがありませんが、一定の期間冷やして適切な温度管理をして保存する予冷と、追熟を行うことにより繊細な舌触りと芳醇な味わいを持つゼネラル・レクラークができあがります。
予冷・追熟を行ったゼネラル・レクラークには果汁が豊富に含まれており、甘さの中に爽やかな酸味があります。
そのまま生で食べるのがおすすめですが、旬の時期が短く、長く楽しむことができません。そのため、ゼネラル・レクラークの生産者の中には缶詰やジュースに加工して販売している人もいます。
バートレット
日本に最初に伝わってきた洋梨といわれているのがバートレットです。バートレットはイギリス生まれの洋梨で、日本でラ・フランスが一般化されるまでは洋梨=バートレットでした。実際、昭和の頃流通していた洋梨のほとんどはバートレットです。
甘みと酸味のバランスが絶妙で、香りの強さは洋梨の品種の中でも強い方です。完熟すると、芳醇な甘い香りが漂います。果肉は少し固めですが、完熟してなくても渋みがないため、シャリっとした食感を楽しむことができます。
比較的長めの追熟期間が必要ですが、完熟すると固さがなくなって軟らかくなります。控えめな甘みと調和した酸味が楽しめる品種です。
マックスレッド・バートレット
ワシントンで発見されたバートレットの枝変わりの品種がマックスレッド・バートレットです。形も食感もバートレットと同じで、甘みと同時に程良い酸味が楽しめるのが特徴です。
バートレットと違う点は、果皮が赤いことです。収穫後、食べ頃になると、まるでリンゴのようないい香りがします。
バラード
洋梨生産量第1位の山形県で生まれ、栽培されている洋梨の品種がバラードです。ラ・フランスとバートレットを掛け合わせてできた品種で、緻密でとろりとした食感の果肉が特徴です。
甘くて食べ応えのあるバラードですが、まだまだ生産量が少ないため、認知度があまり高くありません。もし出会うことができたのならとてもラッキーです。
オーロラ
山形で栽培されている洋梨の中でも、早い時期に収穫されるのがオーロラです。早生品種の中でも、滑らかな食感と濃厚な甘さはラ・フランスに近いともいわれています。たくさん品種がある洋梨ですが、洋梨ファンの中にはオーロラを支持している人も多くおり、根強い人気があります。
オーロラが追熟して食べ頃を迎えると、実の果皮が黄色に変化します。他の品種と比べて食べ頃がはっきり分かりやすいため、洋梨を初めて食べる人にも向いています。洋梨には、食べるとざらりとした特有の食感がありますが、オーロラにはその食感がなく、滑らかな舌触りをしています。
生で食べるのはもちろんですが、スムージーにしたり冷凍してシャーベットにするのにも向いています。ですが、短い期間にしか出回らず、なかなか出会えません。
マルゲリット・マリーラ
マルゲリット・マリーラは、1800年代にフランスで発見された洋梨です。日本に来たのは大正時代になってからで、フランスではなくベルギーから伝わりました。果実は大玉で、350〜500グラムほどの大きさになります。熟すと黄色になり、優しい香りが漂います。
日本では、山形県・青森県・福島県などで生産されています。オーロラの親品種でもあり、オーロラと同じく早生種なので、他の品種よりも一足早く軟らかい果肉とジューシーな果汁を味わうことができます。
メロウリッチ
2009年に登録されたメロウリッチは、比較的新しい山形県のオリジナル品種の洋梨です。濃厚な甘さがあり、滑らかな舌触りの果肉が特徴です。実を切るだけで果汁が溢れるほどジューシーで、話を聞くだけでも食べてみたくなります。
メロウリッチの甘さを数値で表すと、糖度約16度です。ラ・フランスの糖度が約14度なので、かなり甘い品種であることが分かります。甘くておいしいメロウリッチですが、生産数がまだまだ少ないため、手に入りにくい国産の洋梨です。
フレミッシュ・ビューティ
1800年代初頭にベルギーで発見されたのがフレミッシュ・ビューティです。日本には明治時代に伝わってきて、太陽の光を浴びた部分が赤く染まることから、日面紅ともよばれていました。
450gほどの大ぶりな実は、甘さと共に、爽やかな酸味を持ち合わせています。軟らかい果肉を口に入れると、噛むごとにたっぷりの果汁の上品な味わいを楽しめます。
日本では主に青森県で生産されていますが、生産量が少ないレアな品種です。
ブランデーワイン
ブランデーワインはアメリカのペンシルバニア州で生まれた洋梨です。日本には明治時代に伝わりました。9月上旬頃から収穫され、他の品種より早めの時期に出回ります。
果実は200グラムほどと小ぶりで、果皮は緑色です。完熟しても特に色合いが変わらないため、完熟したかどうかは、香りと実を触ったときの硬さで判断します。
寒さに強い品種なので、主に北海道で栽培されています。ほとんどが北海道産のブランデーワインですが、生産量が少ないため、なかなか手に入りません。
プラコース
早く出回るという意味の名前を持つ洋梨がプラコースです。その名の通り早生種で、さっぱりとした甘さがあります。
追熟に時間がかかる品種で、熟して食べられるようになると、実の色が若干黄色に変化します。洋梨独特の甘い香りもしてくるので、香りも一緒に確かめるようにするとより分かりやすいでしょう。
完熟して軟らかくなった実でも、梨のざらつきのもとである石細胞を含んでいるため、食べるとざらつきを感じます。
洋梨が出回る時期は?
洋梨の品種は、大きく早生種・中生種・晩生種の3つに分かれます。この3つの分類で、出回る時期が大きく違います。
早生種の洋梨は、たくさんある品種の中でも、収穫の時期が早いため、8月半ば頃に収穫をして下旬には出回るものもあります。多くの早生種の旬は9月上旬〜下旬で、この時期にスーパーで出会える洋梨は早生種と言えます。
代表的な早生種には、オーロラ、バートレット、プラコースがあります。甘みがあまり強くないものが多いようです。
中生種の洋梨は、9月半ば以降に収穫され、その後追熟してから出荷されるため、スーパーに出回るようになるのは9月の下旬ごろから。最もおいしい旬の時期は10月初めから半ばにかけてで、この時期を狙うと、甘みの強い洋梨に出会えます。
代表的な中生種には、メロウリッチ、マルゲリット・マリーラなどがあります。糖度15度以上のものがあるなど、甘さ自慢の品種が多いです。
晩生種の洋梨は、10月〜11月に収穫されます。早くて10月の初めから収穫ができるものもありますが、11月半ば以降に収穫するものもあります。旬の時期は、10月下旬〜12月頃で、長く楽しめるのが特徴です。
晩生種の代表には、ラ・フランス、ル・レクチェ、ドワイエンヌ・デュ・コミスがあります。大きな実ができる品種が多いです。
まとめ
たくさんの品種がある洋梨は、品種によってそれぞれ旬や収穫、スーパーに出回る時期も異なります。味わいや大きさも品種により違うため、食べ比べが楽しい果物でもあります。
中にはなかなか手に入らない洋梨もあり、知ってみると一度は食べてみたいと考えてしまうのではないでしょうか。いろいろな洋梨を食べてみて、ぜひ好みの品種を探してみてください。