藤井聡太竜王に佐々木勇気八段が挑戦する第37期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第2局が10月19日(土)・20日(日)に福井県あわら市の「あわら温泉 美松」で行われました。対局の結果、矢倉のねじり合いから抜け出した佐々木八段が103手で勝利。待望のタイトル戦初勝利でスコアを1勝1敗のタイに戻しました。

意外な矢倉戦

第2局を先手番で迎えた佐々木八段は初手に角道を開けて矢倉を志向。角換わりや相掛かりを主戦場とするスタイルからするとやや珍しい作戦選択ですが、両者とも想定の範囲内か早いペースで指し手が進みます。佐々木八段自身に実戦例はあるものの、盤上は早い段階で定跡を外れた力比べの様相を呈しています。

後手の藤井竜王は雁木の枠組みを作りながら居玉のままで駒組みを進めるバランス重視の駒組み。6筋の位を取ったことで持久戦になれば陣形の広さが物を言うとの大局観です。そうなっては不満と見た佐々木八段は6筋から遠ざかるように右玉を選択。続けて6筋・5筋の歩をぶつけていったことにより、盤上は左辺一帯を中心とした小競り合いに突入しました。

有無を言わさぬ快勝

第1局に続いて封じ手を行った佐々木八段は、2日目の戦いが始まるとともに積極的な指し回しでペースをつかみます。遊び駒の桂をぶつけて戦力増強を図ったのが味よい活用で、こうなると自玉を右玉の布陣に収めておいたことが生きて強い戦いに臨めます。その後、手番を得た佐々木八段の攻めは最後まで止まることがありませんでした。

桂を手にした佐々木八段はこれを盤上中央に据える好手で優勢を拡大。この同地点への桂打ちは終盤にも生じて藤井玉の死命を制することになりました。終局時刻は16時55分、最後は自玉の受けなしを認めた藤井竜王が投了。

全体を振り返ると、現代的な矢倉戦から実戦経験と研究を生かしてリードを奪った佐々木八段が最後まで攻め切った快勝譜に。これで七番勝負の戦績は1勝1敗のタイに戻りました。藤井竜王の先手番で迎える注目の第3局は10月25日(金)・26日(土)に京都市右京区の「総本山仁和寺」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 大盤解説会場に姿を見せた佐々木八段は「第5局につなげることができてうれしく思う」と謙虚に語った(提供:日本将棋連盟)

    大盤解説会場に姿を見せた佐々木八段は「第5局につなげることができてうれしく思う」と謙虚に語った(提供:日本将棋連盟)