エンジニア向けのプラットフォームで知られるファインディは、2024年度に初の新卒採用を行った。社員数が2.9倍に拡大したという大きな雇用の背景と、「3年後にリーダークラス、5年後に事業責任者」という目標を掲げた理由を伺ってみたい。
エンジニアのスキルを可視化させたファインディ
エンジニア向けのプラットフォーム事業を行っているファインディ。2016年に創業してから急成長を続けており、2024年3月時点での従業員数はおよそ280名となっている。そのビジョンは、「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる」だ。
同社には「人口減少が進む中で日本の経済的な豊かさを後世に残すためには、日本企業が世界に進出しなければならない」という思いがある。だが日本はここ20~30年、世界に通ずるテックカンパニーを生み出せていない。その要因を"エンジニアの視点を持った経営者が少ない"ことと捉え、技術立国日本を取り戻すために技術者に特化したHR事業を始めたのが、ファインディという会社の始まりだ。
大きな特徴は、エンジニアのスキルを可視化していること。ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」と「Findy」を連携させ、OSS(Open Source Software)活動を解析し、エンジニアが持つスキルを数値化するサービスを展開することで大きな支持を受けた。このアイデアは、取締役 CTOの佐藤将高氏が「より良い転職支援サービスを生み出したい」と感じた実体験から誕生したという。
現在、事業の柱となっているのは、ダイレクトリクルーティングモデルで転職サービスを行っている「Findy」。フリーランス・副業の業務委託案件を扱い、スタートアップ企業とのマッチングも支援する「Findy Freelance」。エンジニアのアウトプットと開発状況の可視化を支援することで、開発チームの開発生産性向上を実現する「Findy Team+」の3事業。
全サービスの累計登録者数は現在約20万人、累計企業数はおよそ2,300社を数え、そのうちの約450社が「Findy Team+」を導入している。また新規事業として、開発ツールの導入・検討に関わる意思決定をサポートする「Findy Tools」、さらにインド進出による「Findy Team+の海外展開」を推し進めている。
そんなファインディが、2024年度より新卒採用をスタートさせたという。目標は「3年後にリーダークラス、5年後に事業責任者となるメンバーの育成」。同社はなぜここにきて新卒の採用を始めたのか。そして高い育成目標を掲げているのか。
Findy転職事業部とFindy Freelance事業部の管掌役員を担当する執行役員の扇谷勇多氏、新卒で入社しFindy Team+事業部に所属している新本育生氏にお話を伺ってみよう。
2024年度新卒採用で社員数は2.9倍に
「エンジニアから見たとき、従来の転職支援サービスは期待通りの信頼度や満足度が得られないケースも少なくありませんでした。技術への理解があって、キャリア相談ができ、適切なマッチングを行えるエージェントやアドバイザーが非常に少なかったからだと思います。我々は、そんなエンジニアの理解、エンジニアライクなサービスにおいて、どこよりも強みを持っていると自負しています」(扇谷氏)
扇谷氏は、ファインディの持つ強みをこのように説明する。人材・HR業界2社を経験した同氏が入社を決めたきっかけは、代表取締役の山田裕一朗氏がTwitter(現:X)で「会社を立ち上げるので、だれか手伝ってくれませんか?」とツイートしたことだったという。その後、転職事業部の立ち上げや新規事業開発に携わり、2023年1月から人事責任者を担当。そして2024年7月、現職に就いている。
新卒採用は、そんな扇谷氏の強い意思によって進められてきたプロジェクトだ。2023年当時、ファインディの社員数は約100名。企業規模を考えると決して多くはなかった。それが2024年3月時点で約280名まで増加している。
「現在の20代前半のみなさんは物心ついたときからスマートフォンがあって、小中高でPCやプログラミングに触れてきた、デジタルネイティブ世代です。"マネジメント経験はあるけれどエンジニアリングはよくわからない"方よりも結果的に早く業務のキャッチアップができますし、成果も出やすいです。ならば早期にマネージャーに上がってもらって、将来的なリーダーを育成していこうと思いました」(扇谷氏)
「3年後にリーダークラス、5年後に事業責任者」という目標は一般的にはハードルが高いように思える。だが創業当時のファインディにおいて、若い事業責任者の年齢は27~28歳。「新卒が23~24歳ならば、5年で事業責任者になるのは不可能ではないだろう」と設定された基準だという。
こうして2024年度に新卒採用が行われ、同社の社員数は2年に満たない間に2.9倍まで拡大した。このうち、扇谷氏は7名の研修責任者を担当。この7人の新卒はそれぞれ個性的ながらも非常に仲が良く、お互いの業務内容をフィードバックし、良い意味で刺激を与えあっていたという。
「我々は新卒社員に対して"NewEngine"というテーマを設定しました。要は『これまでの当たり前を壊してほしい』『新しい核となって会社をドライブさせてほしい」と。そのうえで7名には2カ月間、インサイドセールスの研修をしてもらいました。PDCAを速く回すことがなによりも重要なので、『量をこなすことで質が高まっていく』『仮説検証の力を付けてほしい』という話を伝え続けましたね」(扇谷氏)
この新卒第一期生の中には、入社後わずか4カ月でチーム内最高記録を達成したメンバーもいるという。それがFindy Team+事業部に配属された新本氏だ。
新卒社員が感じたファインディの社風
「ファインディに入社したきっかけは、第一に『つくる人がもっとかがやけば、世界はきっと豊かになる。』という経営理念への共感です。第二に新卒第一期生として入社することで、大企業などではできない経験ができるんじゃないかというタイミングとフェーズ感で、"自分がロールモデルになる"というプレッシャーをかけたかったんです。ベンチャー企業やスタートアップ企業の『文化祭の前日感』に惹かれていたところもありますね」(新本氏)
新本氏は、ファインディを選んだ理由をこのように述べる。ファインディという企業名は知っていたものの、エンジニアリングに興味を持っていたわけではなかった同氏。だが面接などを通じて、ファインディの“ゼロからイチをつくる人にフォーカスを当てたい”という思いに感銘を受けたそうだ。
「半年間働いてきて印象に残っているのは、扇谷さんに『これをやった方が良いと思うんですけど……』と個別に話したときに、『なんでやってないの?』と返ってきたことです。『良いと思っているならやった方がいいし、やって失敗したことよりもやった経験を重視する』という考え方、これがバリューで言われている"前向き"や"スピード"なんだなと実感しました」(新本氏)
「それこそ本当にダメなラインは見てくれているので、『なにも言われないってことはチャレンジしていいんだ』と前向きに捉えて、どんどん挑戦していく。手の届くボールはどんどんキャッチしていくという感覚を、この半年で学べたなと思います」(新本氏)
すでに確かな成果を上げ、社内でも期待されている新本氏。現在はなにを目標にし、どんな将来像を描いているのだろうか。
「目標はもちろん事業部長です。この一年はまず自分のできることを広げたいです。そして成功に再現性を持たせ、まぐれやラッキーではなく『新本に任せればコンスタントに成果が出るよね』と思われるように走って行きたいですね」(新本氏)
そんな新本氏を、扇谷氏は次のように評価する。
「新本さんの良い点は"制約を外せること"です。新卒研修で『リストからアポを取ってください』というミッションがあったのですが、彼はそのリストを使わないんですよ。自分でリストを作って電話をかけたんです。制約をかけずに思考できるというのは才能なんですよね。Findy Team+事業部でも、月初の1on1ミーティングで『記録を狙え』と話したら、本当に記録を取ってきました」(扇谷氏)
ファインディへの就職を考えている学生にアドバイス
ファインディの各部門でめざましい活躍を見せている新卒第一期生。扇谷氏も現在の育成状況をポジティブに捉えているが、一方で「“3年後にリーダークラス、5年後に事業責任者”のスピード感には達していないので、もう少し求めたいですね。新本さんも言ってましたけれど、足元の成果とその再現性に取り組んでほしいなと思っています」と冷静な判断も伝える。
さらに、これから入社を考えている学生に向けて、次のようにメッセージを送る。
「一期生が入社したタイミングよりも会社の規模が大きくなっていくという違いはありますが、次年度以降のみなさんへの期待値も変わりません。ですが、事業単位で行くとまだまだ発展途上のフェーズなので、自分たちで仕組みを作っていくという面白さは残っています。これから日本を代表する企業になっていきたいと思っているので、安定志向よりも挑戦思考の人、制約条件を外せる人にぜひ入社してほしいと思います」(扇谷氏)
また新卒一期生を代表して、新本氏からファインディで働くことを目指す学生にアドバイスをいただいた。
「スキルと考え方だったら、大事なのは考え方のほうです。なにも決まっていない目の前の状況を楽しめること、自分で決めることを楽しめること。レールを自分で引いていくこと、レールの先にある未来を自分でつくっていくこと。『決められたレールを走るだけは嫌だ』という人には合っている会社だと思います。自分もそういった意思を絶やさずに歩み続けたいですね」(新本氏)
IT技術で豊かな日本を維持したい
近年は生成AIが急激に浸透し、世の中はより目まぐるしく変化している。このような時代において、IT産業にはエンジニアをエンパワーメントしてプロダクトをつくっていくことがこれ以上に求められるだろう。
エンジニア出身の起業家やエンジニアリングに理解のある経営者も徐々に増えているが、まだまだエンジニアが力を発揮しきれていない環境は多い。ファインディは、マッチングの領域と開発生産性可視化による組織づくりの領域を併せ持っている。これを活かしてエンジニアが活躍する環境を作り、テクノロジードリブンな事業を増やしていくという。
「技術立国日本を取り戻す」。このビジョンに共感を覚えた方や、テクノロジーとビジネスを両方学びたい方は、ぜひファインディという会社を覚えておいてほしい。