神奈川新聞社は、旅行・鉄道作家でジャーナリストの森川天喜氏の著書『かながわ鉄道廃線紀行』を刊行した。神奈川新聞のニュースサイト「カナロコ」に掲載された連載をもとに、内容を大幅にボリュームアップして書籍化された。
著者の森川天喜氏は横浜市生まれ。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を手がける。定期的に原稿を寄稿しているネットメディアに鉄道廃線のレポート記事を載せたところ、かなりの反響があり、これがきっかけで本格的に廃線跡を歩くようになったという。対象を神奈川県下の鉄道廃線中心に絞り、当時を知る関係者に話を聞くなど、より詳細に調査を進めてきた。
2023年秋、神奈川新聞電子版「カナロコ」にて、神奈川県内の鉄道廃線10路線を紹介する企画「かながわ鉄道廃線紀行」がスタート。2024年の年初まで、約3カ月にわたり、10路線を5回ずつの連載で紹介した。中でも「ドリームランドモノレール」「相模線西寒川支線」「東急東横線と桜木町駅周辺の鉄道遺構」を取り上げた回の反響が大きかったとのこと。この連載企画をもとに、大幅に加筆した上で、『かながわ鉄道廃線紀行』として書籍化することとなった。
- 第1章 箱根登山鉄道軌道線(小田原電気鉄道)
- 第2章 豆相人車鉄道(熱海軽便鉄道)
- 第3章 湘南軌道(湘南軽便鉄道)
- 第4章 京急大師線と海岸電気軌道
- 第5章 横浜市電
- 第6章 川崎市電
- 第7章 ドリーム交通(ドリームランドモノレール)
- 第8章 相模線西寒川支線
- 第9章 南武線にかつて存在した多くの貨物支線
- 第10章 東急東横線と桜木町駅周辺の鉄道遺構
- 第11章 横浜臨港貨物線
同書は路線数を連載時の10路線から11路線に増やし、コラムや関係者へのインタビューなどを章間に差し挟んでいる(第9章および各章のコラムは書き下ろし)。第7章のコラムとして、ロッキード式を採用した小田急電鉄の向ヶ丘遊園モノレールを紹介するとともに、向ヶ丘遊園モノレールの運転士経験者へインタビューも行った。
神奈川新聞社が所有するアーカイブ写真も多く活用。巻頭カラー「鉄道が走っていたあの場所、あの時代」では、現役時代の横浜市電と懐かしい横浜の街並み、廃止前の相模線西寒川駅の様子、1980年代に横浜港エリアを走った蒸気機関車やレトロ調気動車の写真を掲載している。各章で当時の写真や新聞記事をふんだんに使用したほか、路線図も見やすくなるよう細部までこだわった。巻末の資料編として、昭和初期の鶴見臨港鉄道本線(現・JR鶴見線)と軌道線(海岸電気軌道)の路線図や、1957(昭和32)年の横浜市電「電車調査表」などを収録している。
『かながわ鉄道廃線紀行』(A5判、本文310ページ・巻頭カラー32ページ)は10月17日に発売され、定価2,200円。なお、同書の発売に合わせ、有隣堂伊勢佐木町本店と横浜駅西口店にて、書籍で使用している写真のパネル展を行う。