放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、11日に行った会合で、6月19日に放送されたTBS系バラエティ番組『東大王』(9月でレギュラー放送終了)について議論。概要をホームページで公表した。
TBSテレビ考査局「慎重さが求められる事案」
この日の番組では、「野々村親子と学ぶ業界NO.1!味の素SP」と題したクイズコーナーを放送。味の素の6商品を紹介してクイズを出題するもので、正解の解説には味の素の社員が登場。画面左上には「東大王×NO.1づくし! 味の素」のテロップを表示し、味の素を冷凍食品界の王者と紹介し、NO.1商品と称する冷凍食品について3題を出題した後、売り上げNO.1と銘打った中華合わせ調味料、和風だし、洋風インスタントスープに関するクイズを出題した。クイズに優勝したチームには味の素商品の詰め合わせセットが贈られ、放送時間は約30分にわたった。
放送後、BPOに視聴者から「クイズコーナーで味の素の商品に関する問題や解説を長時間にわたって取り上げていた。番組か広告か分かりづらい点、ステマなのかどうか分からない点において番組に疑問を持った」という声が寄せられていた。これを受け、委員会ではTBSに対して報告書を求め、10月4日に提出された。
この報告書によると、企業PRにつながるような内容は全て取り上げず、番組側がクイズにしたいと考えた要素だけで自主的に構成したと主張。一方で、「番組かCMか分かりづらい」と受け止めた視聴者がいた点については、結果的に反省すべきことだとしている。
放送後TBSテレビの考査局から「慎重さが求められる事案」と指摘を受けたが、放送前の段階で番組プロデューサー陣は問題があるとは思わず、考査部門には相談していなかったという。同局は、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしている。
当たり前に考えていることに感じる問題の根深さ
委員会での議論では、以下の通り厳しい意見が相次いだ。
「視聴者に身近な商品を取り上げれば視聴率につながると、制作現場が警戒心も後ろめたさもなく当たり前に考えていることに本事案の問題の根深さを感じる」
「むしろ、提供社でもない企業の事を殊更に取り上げる方が、その企業の担当者と何か裏取引があるのではないかという不信感が視聴者に募る。本事案はまさにそういう構成だ」
「テレビショッピングかと思うほど、芸能人らが褒めて美味しい美味しいと繰り返しており、視聴者からは番組か広告か分かりづらくステマかもしれないという意見が届いた。番組で取り上げた企業から対価はもらっておらず自主的に構成した番組なので問題があるとは思わずそのまま放送したというテレビ局の対応を是認してしまっていいのか」
「『味の素』という企業名を書いたテロップが出続けたり、商品を売上げNo.1と強調し、味の素の商品を激賞したりしており、視聴者が広告ではないかと感じるのも致し方ないところがある」
「番組か広告放送かの問題で審議入りをして放送倫理違反を問われたある放送局の番組は“おいしさの追求”と銘打って企業の肯定的な側面の紹介に終始していた。本事案も番組コーナーのコンセプトはほぼ同じなので同様に審議入りすべきだ」
一方で、番組全編を通して一企業を取り上げているわけではない点や、番組のフォーマットであるクイズ形式に取り上げた企業の商品情報を落とし込んでいる点において、審議入りの判断をするまでには至らないという意見が出た。番組の一部で企業の商品やサービスを取り上げたケースで審議入りの対象とすることで、今後の対応に苦慮するのではないかといった意見もあった。
また、TBSが報告書で、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしていることから、「自主的な対応に任せる」として審議入りは見送られた。