ようやく暑さが落ち着き、秋らしい涼しさを感じるようになりましたが、季節の変わり目は「体がだるい」「疲れやすい」など感じる人も多いのではないでしょうか。その原因は、夏の疲れや、寒暖差が影響しているかもしれません。今回は、季節の変わり目に起こりやすい不調の要因やその対策方法について愛晋会中江病院の中路幸之助先生にお伺いしました。

■季節の変わり目は体調不良に注意

――体調不良になる要因はなんでしょうか?

秋は気温の寒暖差とともに、気圧が激しく変動し、自律神経のバランスが壊れやすくなります。気圧が上下することで、耳の奥にある三半規管や前庭など身体のバランスを保つ器官がその変化を感知して神経を介して脳に伝え、自律神経がストレス状態となり、様々な体調不良が引き起こされます。このように、気温差によって身体の機能を調節する自律神経がオーバーワークして、エネルギーをたくさん消費して、疲れてしまうために起こる現象を「寒暖差疲労」と呼んでいます。

自律神経には、身体をアクティブに動かすときの「交感神経」と、身体をリラックスさせるきに働く「副交感神経」があります。この2つの神経がバランスを取ることで、体温、心拍、消化、排便などの生命維持に必要な機能が調整されています。本来は交感神経と副交感神経が急激に入れ替わると身体に負担がかかるため、徐々に入れ替ります。しかし、寒暖差が大きいと、この自律神経の働きが1日の中でも何回も入れ替わるため、身体に過剰な負担がかかって不調を誘発します。特にストレスで交感神経が優位な状態になると血圧の上昇、心拍数の増加、めまいなどの症状が現れます。

人間は自律神経の働きで、ある程度の外界からのストレスには耐えられるようになっていますが、あまりに激しい気象の変化があると気圧の影響に勝てない身体なってしまいます。「疲労」は、貧血、肝臓疾患、腎臓病や甲状腺の病気、やうつ病などの精神神経疾患等でも起こります。季節の変わり目の寒暖差が大きい時期に疲労が起きた場合は「寒暖差疲労」もその可能性のひとつとして考えましょう。

――寒暖差で体調不良を起こしやすい人の特徴を教えてください。

「寒暖差疲労」の原因は自立神経のバランスの崩れが原因であるため、もともと自律神経のバランスをとりにくい人が季節の変わり目に体調不良となりやすいと考えられます。 例えば、「エアコンが苦手で、もともと暑さや寒さが人よりも苦手である」「身体がほてりやすい」「熱中症になりやすい」「冷え性がある」「身体がむくみやすい」「天気の悪くなる前にめまい、頭痛や肩こり関節痛などが起こりやすい」「エアコンはつけっぱなしで、いつも一定の温度の部屋にいる」などの人は寒暖差で容易に体調不良を来しやすいと考えられます。

――季節の変わり目に気を付けるポイントや日頃から出来る予防方法を教えてください。

「寒暖疲労」が原因の主な症状は、めまい、食欲不振などですが他にも頭痛、肩こり、腰痛や冷えや体のむくみ、イライラするなど気分の変調、不眠など様々な症状が現れます。また身体のいつも痛む場所が痛んだりする「慢性疼痛」が悪化することも良く知られています。

ただし、これらの症状は、必ずしも寒暖差疲労によるものとは限らないため、症状が続く場合は他の病気の可能性もあるため、かかりつけ医に相談しましょう。

■体調を崩さないために、日頃からできる予防方法

体調不良を起こさないためには、免疫力を高めることや「寒暖差」による自律神経の過剰なストレスを避けることが重要です。そのため、次の方法をためしてみてください。

【1】入浴で汗をかくようにする

これまで夏の暑い時期はシャワーのみですましていた人も、湯船につかってみましょう。 入浴すると、身体が温まるだけではなく、リラックス効果によって副交感神経が優位になります。

【2】ストレッチや身体を温めてみる

特に首と肩の筋肉のストレッチをすることで、緊張が緩んで副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整いやすくなります。また首や肩をホットタオルなどで温めて筋肉の緊張をほぐしましょう。

【3】適度な運動をする 自律神経のバランスを保つために、適度な運動をしてみましょう。ウォーキングなどの有酸素運動を30分程度習慣づけることで、ストレスの解消や筋肉量の増加が図られ、自律神経のバランスがとりやすくなり「寒暖疲労」予防効果が得られます。

【4】規則正しい生活を心がける。

規則正しい生活は、自律神経のバランスを保つために重要です。寝る時間と起きる時間をなるべく一定にしましょう。朝起きて日光に当たることで、睡眠を促すホルモンが増加します。食事は朝食をきっちり取り、1日3食のバランスの良い食事を心がけましょう。

【5】エアコンに頼りすぎない

エアコンに頼ると自律神経が働きにくくなり、交感神経と副交感神経のスイッチがうまくできなくなります。服装などでの体温調節を心がけましょう。

【6】冷たい飲み物を控える

冷たい飲み物は内臓を冷やすため、内臓にストレスがかかり、「寒暖差疲労」をきたす可能性があります。「寒暖差疲労」を起こしやすい人は、冷たい飲み物はなるべく控えるとともに、温かい飲み物を取るように心がけましょう。

【7】腸内環境を整える

腸と脳は関連が認められており、腸内環境が整うと自律神経も安定してきます。善玉菌のエサとなるヨーグルトや納豆などの発酵食品を摂取し、腸内環境を整えましょう。

これらを参考いただき、無理のない範囲で自分にあった予防法を身につけてください。

※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています