テクノロジーを活用した次世代農業を体験できる

現在、日本の農業は従事者の減少や高齢化、生産コスト上昇などの課題を抱えています。
そんな中、今回オープンするELTRESアグリテックフィールドは、データやソリューションを用いた次世代の農業を体験できる施設です。ICTを活用したスマート農業の検証を行うとともに、スマート農業に取り組む人たちのコミュニケーションを推進し、農業の未来を学ぶ場を目指しています。

ELTRESアグリテックフィールドがあるのは、札幌市の東に位置する北広島市。無人機の利活用サポートや新技術開発に取り組むための施設「TECHNOLOGYFARM西の里」内にあり、高強度で雪解けにも耐えられる「K50角ハウス」を採用しています。
ELTRESアグリテックフィールドに構築されているスマート農業ソリューションの全体像はこうです。ハウスには各種センサーを設置し、温湿度、CO2濃度、日射量、土壌水分量などのデータを収集。これらのデータをソニーの無線通信規格「ELTRES™ 」を用いて通信し、専用アプリケーションでリアルタイムに可視化します。また収集したデータは、日々の栽培管理や品種ごとの特徴分析に活用し、作物の品質向上や収穫量の増大など、地域に適した生育環境の構築に役立てることができます。

このプロジェクトに参画しているのは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、株式会社サングリン太陽園、越浦パイプ株式会社の4社。ソニーネットワークコミュニケーションズ法人サービス事業部ソリューション営業部営業推進課の長谷川拓二(はせがわ・たくじ)さんは「農家の方からは、スマート農業をやってみたいけれど、情報をどこから得るのか分からない、費用がかかるといった声が多く聞かれます。私たちは、本当に必要なものをなるべくリーズナブルな価格で提供できるよう開発を進めてきました」と話します。

ELTRESアグリテックフィールドが進める3つの実証

ELTRESアグリテックフィールドでは、3つの実証を進めています。
1つは、農作物の生育状況をモニタリングし、水分量や肥料使用量を最適化することです。これにより資材の過剰な使用を防ぎ、無駄を削減することができます。
2つ目は、センサーから収集したデータを解析し、作物の生育状況や気象条件、病害虫の発生リスクなどを予測すること。適切な対策を講じることができ、収穫量の安定化と品質向上が期待できます。
3つ目は、農作業の効率化です。スマートフォンやパソコンで農地を遠隔監視できるため、常に農地にいる必要はなくなります。

ELTRESアグリテックフィールドでは、オープンに先立ち2024年5月より作物を植えて、温湿度、CO2濃度、日射量、土壌水分などを測定し、データの可視化と作業に与える影響を検証する実証実験を行ってきました。実証実験では、経験則に頼ることなく適切なタイミングで農作業ができるようになった、リアルタイムにハウスの状況を確認でき、作業の効率化と安心感が向上したなどの成果が得られました。また技術を導入するに当たり、一歩を踏み出すきっかけや、導入コスト・効果に対する不安解消が必要であることなど、課題やニーズも明らかになり、農家の現場との対話を通じて課題解決が進められています。

ともに成長する場として

ELTRESアグリテックフィールドでは、農業関係者やスマート農業を学ぶ学生を対象に、見学・体験を受け付けています。見学プログラムには、実際にセンサーに触れて設置を体験する「端末およびセンサーの実物設置」、収集したデータの分析や活用を学べる「データ活用方法のレクチャー」、最新の農業機械やドローンの技術を体験できる「最新機器・ソリューションの体験」が用意されています(一部体験は有料)。

長谷川さんは「成長の場でありたい」と言います。「設置することが目的ではなく、スマート農業の良さを理解していただき、なるべく効率的に農業を進めていく、広めていくことがゴールだと思っています。そのために、ともに学び、ともに成長していく場として、ELTRESアグリテックフィールドを活用していただきたいと考えています」。

(編集協力:三坂輝プロダクション)