日産自動車は10月10日、より手頃な価格の「Vehicle to Grid」(V2G)技術を英国で販売する一部の電気自動車(EV)を対象に導入すると発表した。導入は2026年の予定。

  • カーボンニュートラルの実現と電気料金の低減に貢献

■中期経営計画「The Arc」を支える取り組みとして推進

同プロジェクトは日産が中期経営計画「The Arc」で掲げているコミットメントを推進する取り組み。EVへの移行を可能にする差別化されたイノベーションを提供すると同時に、新たな売上の機会を創出する。

  • V2Gオンボード双方向充電器技術のイラスト

また同時に、よりクリーンで、より安全で、より包括的な世界を創造するという日産の長期ビジョン「Ambition 2030」の実現をサポートする。

■自動車メーカーとして初めて英国でACグリッド認証を取得

V2Gは、EVのバッテリーに蓄えられた電力を電力網(グリッド)や自宅などに供給することを可能にする技術。これにより、EVに風力や太陽光などで発電した電力を蓄え、必要な時にその電力を電力網に送ることができるため、再生可能エネルギーの割合を増やし、化石燃料依存を減らすことができる。

日産は同技術の導入に向けて、英国のノッティンガム大学で1年間実施した実証プロジェクトの成功を受け、自動車会社として初めて、交流電源(AC)システムによるグリッド認証コード「G99」を取得。英国の系統電源への電力供給が可能となった。

この実証実験は、ACおよび直流電源(DC)の双方向システムの拡張性の検証や、この技術におけるユーザーからの意見を得るための貴重な機会となったという。

■英国で導入開始後、欧州市場に順次拡大を計画

日産は過去10年間にわたり、世界各地で実施してきた約40件のV2Gに関する実証実験の実績を持つ。

その知見をいかしながら、「ニッサンエナジー」の傘の下に、まずは英国、続いて欧州の他の市場にV2Gを展開する。導入にあたっては、現地のインフラや規制要件に沿ってACとDCのどちらが適切かを判断していく。

V2Gの導入は、ゼロ・エミッションで走行するEVにおける再生可能エネルギーの利用を推進すると同時に、EVから住宅や電力網への給電も含めた総合的なエネルギー・エコシステムの実現を目指す日産のビジョンの一環を成すものだ。

■専用のアプリケーション利用で、電力を柔軟にコントロールすることも可能に

同社が提供を予定している双方向システムのうち、英国で認定されたACのシステムは、車載型充電器を採用することにより、より安価な導入コストを実現し、より多くのユーザーがV2Gを利用できるようにする。

  • EVから住宅や電力網への給電も含めた総合的なエネルギー・エコシステムの実現を目指す

また、このAC双方向充電器を、現在販売されている単方向充電器と同等の価格で提供することを目指す。さらに、サービスを利用するユーザーは、専用のアプリケーションを利用することにより、EVに蓄えた電力を柔軟にコントロールすることも可能になる。

日産のグローバルエネルギーエコシステムおよびEVプログラムを担当する理事のユーグ・デマルシエリエ氏は次のように述べた。

「今回私たちがお客さまに提供する技術は、車の役割を大きく変えるゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。EVは、単なる移動手段だけでなく、走る蓄電池として日々のコストの低減、化石燃料依存からの脱却、そして脱炭素社会の実現にも役立ちます」