2024年度グッドデザイン賞の受賞結果が10月16日に発表された。全1,579件の受賞が決まった中で、JR西日本が導入を進める有料座席サービス「快速 うれしート」もグッドデザイン賞に選ばれた。

  • 「快速 うれしート」は2023年に大和路線・おおさか東線で導入された

「快速 うれしート」は、「電車で確実に座りたいなぁ。しかもお手頃な値段で」という気持ちに応え、鉄道が提供する「線路と車両による移動」という既存の機能に、「のれん」を設置するという低廉かつ汎用性の高い方法により、「確実に座れる」価値を低価格で提供。2023年10月に京阪神地区の大和路線・おおさか東線で導入した後、2024年10月から運行範囲を拡大し、新たに京阪神地区のJR神戸線と奈良線、広島地区の山陽本線でも導入された。

その背景として、JR西日本は新快速「Aシート」や通勤特急などで指定席サービスを展開してきたが、リクライニングシート・Wi-Fi等を備えた専用車両を使用するため、提供できる路線・本数・停車駅が限定される上に、車両の改修コストが高くなるなどの側面があったという。着席ニーズに応えたいと考える一方、コロナ禍の影響もありコストを抑えたいジレンマもある中、さまざまな路線で運転され、本数と停車駅の多い快速列車で座席番号があることに着目。車両をそのまま活用した指定席サービスを検討し、指定席エリアを区切る方法として、低コストで付け外しの簡単な「のれん」の設置というアイデアにたどり着き、「快速 うれしート」が誕生した。

「のれん」に親しみのあるデザインのロゴを施し、指定席エリアをわかりやすく表現。乗務員室前を指定席エリアとすることで、既存の乗務員が案内しやすく、車内の秩序も維持できるようにした。これらのアイデアをもって、低価格の「快速 うれしート」がニーズに対応できること、特定の路線だけでなく汎用性の高いものであることが確認できたとしている。

  • 新たに京阪神地区のJR神戸線と奈良線、広島地区の山陽本線でも「快速 うれしート」が導入された

「快速 うれしート」の評判が良いとのことで、今月から導入路線を増やすこととなった。グッドデザイン賞受賞に際し、審査委員から「JR西日本はもともと転換クロスシートの車両を使っていたこともあり、設備には手をつけず、普通席との間に暖簾を下げることで識別した。おかげでチケットレス予約では300円という低料金で利用できる」「既存の設備を有効活用して利用者のニーズに応えるべく、暖簾を選んだ発想に感心した」などと評価されている。