第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は4回戦が進行中。10月15日(火)には永瀬拓矢九段―佐々木勇気八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いから抜け出した永瀬九段が142手で勝利。ライバルの全勝を止めて挑戦権争いに踏みとどまりました。
大舞台でのライバル対決
ともに小学生のころから切磋琢磨する二人。10度目となるライバル対決は佐々木八段3勝0敗、永瀬九段2勝1敗で迎えた挑戦権争いの山場となりました(ほかに佐藤天彦九段が3勝0敗)。佐々木八段の先手番で始まった対局は相掛かりに進展、早繰り銀の作戦提示に対して後手の永瀬九段は棒銀に似た要領で攻め合いの形を作ります。
駆け引きのすえ早い戦いは回避されて盤上は駒組みへ。早めに左桂を跳ねた佐々木八段は角の活用が課題です。居玉のまま飛車を6筋に回ったのは佐々木八段らしい自由奔放な指し回しですが、実戦はここから永瀬九段の巧妙な指し回しが上回りました。先手陣そばに配置した銀の圧力でこの飛車を抑え込んだのがその第一歩。
永瀬九段が競り勝つ
戦いのなかで玉を入城した永瀬九段は盤上に散らばった攻め駒をうまくまとめながら佐々木玉に迫ります。取られそうだった銀が一歩一歩着実に進んでいく様子は永瀬九段の堅実な棋風そのもの。ムダのない駒効率で切れない攻めを実現しました。佐々木八段は自陣の角が狙われる駒になっているのがつらい限り。
優勢を築いた永瀬九段の指し手に乱れはありませんでした。終局時刻は翌16日0時43分、最後は自玉の受けなしを認めた佐々木八段が投了。定跡を外れた手将棋をうまくまとめた永瀬九段の快勝譜となりました。これで勝った永瀬九段、敗れた佐々木八段ともに3勝1敗に。挑戦権の行方はまだまだわかりません。
水留啓(将棋情報局)