投資を始めようと考えている人なら、「投資は長期投資が基本」「長期投資をするべき」と一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、なぜ長期投資が良いのか、長期投資にデメリットはないのかという点を疑問に感じるかもしれません。
そこでこの記事では、長期投資のメリットやデメリットを解説し、長期投資に向いている人についてもお伝えします。長期投資にはデメリットがあることも理解したうえで、自分に合った投資スタイルを選択しましょう。
■長期投資とは? 短期投資との違いは?
長期投資といっても、「どのくらいの期間が長期なのか」と疑問に思うでしょう。また、短期投資との違いもよくわからないかもしれません。まずは、長期投資の期間の目安や、短期投資との違いについて解説します。
<長期投資の期間>
一般的に、長期投資とは、数年〜数十年程度の期間をかけて投資を行うことを意味します。では、具体的に投資期間何年からが長期投資になるのでしょうか。実は、「長期投資は〇年以上」という明確な定義はありません。ただ一般的には、長期投資というと10年単位での投資を指すことが多い傾向にあります。
また、おおよその目安として、運用期間や積立期間が1日~1年程度を「短期」、数年~10年未満くらいまでを「中期」、10~50年を「長期」とイメージできることから、長期投資は「大体10年以上」と捉えておくとわかりやすいでしょう。
投資は、「長い期間をかけるほどお金を増やすのに有利」と言われています。「長期投資がおすすめ」とあちこちで見かけるのは、そのためです。
<短期投資との違い>
先ほどもあったように、短期投資とは運用期間や積立期間が1日~1年程度の投資を指します。たとえば、1日のうちに取引が完結するデイトレードや、数日〜数週間で取引するスイングトレードは短期投資です。また、長期投資と短期投資は、投資期間のほかにも、運用スタイルや売買の頻度などに以下のような違いがあります。
・運用スタイル
長期投資: 将来に向けてコツコツと運用していく
短期投資: 短い期間の間で売買タイミングを狙い、すぐに利益を出す
・主な売買のタイミング
長期投資: お金を使う目的の時期が訪れた時など
短期投資: 値上がりしたタイミングなど
・売買の頻度
長期投資: 少ない
短期投資: 多い(売買タイミングが訪れた時、都度)
・得られる利益
長期投資: キャピタルゲイン(売却益)、インカムゲイン(配当、分配金など)
短期投資: キャピタルゲインが中心
一般的に、長期投資は日々の値動きを追うことなく、一度投資した銘柄を保有し続けて成長を見守る投資スタイルです。売買タイミングも、お金を使う目的の時期が訪れた時やお金が必要になった時、目標金額に到達した時などで、頻繁に売買することはありません。
反対に、短期投資は投資した銘柄が値上がりしたタイミングなどで売買を繰り返し、利益を出す投資スタイルです。統計の結果や有力者の発言などで発生する一時的な値動きに乗じて投資するなど、モニターに張り付き1分1秒の値動きを争って利益を得ようとする人も多く、売買の頻度は高くなります。
■長期投資の4つのメリット
では、長期で投資をすると、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを4つをご紹介します。
1.複利効果が得られやすい
長期投資の最も大きなメリットは、複利効果が得られやすい点です。複利効果とは、投資で得た利益を再度投資に回すことで、利益がまた新たな利益を生んでくれる効果のことです。
運用期間が長くなるほど複利効果は大きくなり、利益も大きくなりやすい傾向にあります。「早く投資を始めたほうが有利」「時間を味方につけて投資する」などと言われるのは、そのためなのです。
2.日々の値動きを気にせずに済む
長期投資は、10年以上運用することを前提に遠い将来を見据えているため、短期投資のように常に値動きをチェックしておく必要はありません。値動きの確認は半年や1年に一度でも問題ありませんので、仕事などで毎日忙しくしている人でも取り組みやすいでしょう。
なお、相場が下がっていても、長い目で見た時には一時的な値下がりであることも多いものです。慌てることなく、淡々と投資を続けることが大切です。
3.リスクを分散できる
短期投資はタイミング次第で売買を行うため、リターンが変動しやすく、リスクの高い売買方法と言えます。一方、長期投資は「積立投資」との相性が良く、購入時期をずらすことでリスク分散ができ、効率的な運用が期待できます。
4.売買コストを抑えやすい
投資をする時は、運用によって資産がどれくらい増えるかが気になりますが、同じく考えなければならないのが「売買コスト」です。たとえば、株式投資なら株式の購入時や売却時に手数料がかかります。
具体的な金額は、証券会社や料金プランによって異なりますが、短期間に何度も売買を繰り返すとその分手数料は高くつきます。反対に、一度購入した銘柄を長期間保有してから売却すると、取引回数が少ない分、手数料を抑えられる傾向にあります。
手数料が抑えられれば、それだけ手元に残るお金も多くなります。
■長期投資の3つのデメリット
長期投資にはいくつものメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。長期投資の主なデメリット3つを確認してみましょう。
1.資産形成に時間がかかる
長期投資は、文字通り長い期間をかけて取り組むものですので、結果が出るまでには時間がかかります。そのため、「できるだけ早く稼ぎたい」と考えている人には向かない方法でしょう。また、「来年使う予定のお金を運用したい」など、運用期間を長く持てない場合にも向きません。
長期投資のメリットで挙げた「複利効果」を活かすためには、どうしても長い期間が必要になるのです。
2.長期投資だからといって失敗しないわけではない
長期投資は失敗しにくいと言われますが、長期投資だからといって100%失敗しないわけではありません。数十年先の結果はプロでも予測しにくいため、元本割れの可能性はゼロにはならないのです。
短期投資の場合、短期間で何度も繰り返す売買のうち、1回くらい失敗してもやり直すチャンスは充分あるでしょう。しかし、長期投資は10年単位などで行う投資であるため、「失敗したからはじめからやり直し」ということが難しい傾向にあります。
たとえば、老後資金のために長い期間をかけて運用して失敗してしまった場合、リタイア直前に急いで挽回しようとしても、老後までの時間が短くうまくいかないかもしれません。
できる限り失敗を防ぐには、長期投資だけでなく積立投資や分散投資も併用する、投資先は慎重に選ぶといった対策も必要です。
3.リターンを取り逃す可能性もある
投資の世界では、リスクとリターンはコインの表裏の関係にあります。一般的に、短期投資は「ハイリスク・ハイリターン」、長期投資は比較的「ローリスク・ローリターン」と言われていますが、長期投資の「リスクを抑えやすい」というメリットは、裏を返せば「リターンが小さくなりやすい」というデメリットにもつながるのです。
短期投資の場合、大きく相場が動いたタイミングで売買できれば、わずかな時間で大きな利益を手にすることが期待できます。しかし、長期投資はそのような時でも、淡々と保有を続けます。一時的に大きく値上がりしているタイミングでも、自分がお金を必要とする時期でなければ、リターンを取り逃してしまう可能性があります。
■長期投資に向いている人は? 長期投資を成功させるポイント3つ
<長期投資に向いている人>
ここまで、長期投資のメリットとデメリットをご紹介しました。では、これらを踏まえると、長期投資に向いているのはどのような人なのでしょうか。
まず、頻繫な値動きの確認や、短期投資のような売買タイミングを見計らう必要がないことから、特に「投資初心者」に向いていると言えます。また、多忙で投資に時間を割けない人や、じっくりコツコツと堅実な運用がしたい人にも向いているでしょう。
さらに、「値動きが気になって、どうしても頻繁に確認してしまう」という人にもおすすめです。あえて長期で投資すると決めることで、相場に振り回されることなく運用を続けられる可能性があるからです。
誰にとっても長期投資が最適というわけではないため、自分は長期投資に向くタイプかどうか見極めてみましょう。
<長期投資を成功させるポイント>
最後に、長期投資を成功させるためのポイントを3つご紹介します。
1.積立投資と分散投資も併用する
先ほどもあったように、長期投資だからといって絶対に失敗しないとは限りません。そこで、長期投資とあわせて、リスクを抑える効果の高い「積立投資」や「分散投資」も取り入れてみましょう。
積立投資とは、同じ銘柄を定期的に一定額購入し続ける投資手法のことで、「ドルコスト平均法」とも言われます。毎回一定額を買う設定のため、「価格が安い時には多く買い、高い時には少し買う」ことになり、結果的に平均取得単価を抑えやすくなります。
分散投資とは、投資するタイミングや投資先の銘柄、地域、資産を1つに限定せず、複数に分散させる方法です。1つに集中して投資してしまうと、それが下落した時に大きなダメージを受けますが、分散して投資しておけば、万が一の際にダメージを抑える効果が期待できます。
2.NISAを活用して運用する
よりリスクを抑えて安定的な収益を目指すには、長期投資に加え、積立投資や分散投資が重要ですが、この「長期・積立・分散投資」は国も推奨する投資手法です。
2024年1月からはこれまでのNISA制度が大きく拡充し、「新NISA」がスタートしました。新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠がありますが、そのうちつみたて投資枠の対象商品は、「長期・積立・分散投資に適している」と金融庁が認めた投資信託のみがラインナップされています。
また、NISAを利用すれば、通常は利益に対して約20%かかる税金が非課税になります。非課税で運用できれば、その分再投資できる金額も増えますので、効率的に運用を進めていくことができます。
3.投資の目的と目標額を決める
長期投資は投資のスタイルであり、具体的な投資の方法というわけではありません。まずは、投資をする目的や目標額を明確にし、そのうえで自身のリスク許容度(どれくらいまでならマイナスを受け入れられるかの度合いのこと)に応じた商品や方法を選びましょう。
■長期投資のメリットだけでなく、デメリットも理解しよう
長期投資にはメリットしかないと思われがちですが、デメリットもあるためよく理解しておく必要があります。そのうえで、長期でコツコツと運用していくと決めたら、まずは投資の目的と目標額を明確にし、積立投資や分散投資にも適したNISA制度を活用すると良いでしょう。投資初心者の方なら、無理のない少額から始めるのもおすすめです。