物価が上がる中、少しでも安く買い物をするなどして、節約を心がけている人は多いでしょう。では、「医療費」はいかがでしょうか。実は、医療費もちょっとした心がけで抑えることができるのです。今回は、「医療費を節約するコツ8選」をFPがご紹介します。
■医療費を節約するためのキホン4つ
病気やケガで病院の外来を受診する時は、まず以下の4つのポイントを意識しましょう。
1.健康保険証を忘れずに持参する
医療機関を受診する場合、診察や検査、注射などどのような診療を受けるにしても、その行為ごとに「点数」が決められています。そして、その点数が「1点10円」で計算され、総合計の1〜3割が自己負担となります。
しかし、健康保険証を忘れて受診すると「自由診療」扱いとなり、1〜3割の自己負担が適用されません。自由診療になると、医療費を全額支払う必要があるため高額になってしまうのです。
医療費を全額支払った後、加入している健康保険に申請すれば払い戻しが受けられますが(自己負担分を除く)、手間も時間もかかってしまいます。さらに、自由診療になると病院が支払額を自由に設定できるようになるため、払い戻しを受けても、はじめから保険証を提示していた場合に比べて負担が大きくなることもあります。
そうならないためも、病院にかかる時には、保険証を必ず持参するようにしましょう。
2.かかりつけ医を持つ
病気やケガをした時、まず相談できる近所の「かかりつけ医」。かかりつけ医を持つことも、実は医療費の節約につながります。いきなり大病院を受診すると「特別料金」がかかってしまいますが、かかりつけ医に紹介状を書いてもらえば、紹介状発行料金(原則3割負担750円)で済みます。
また、持病・体質を把握したうえでの治療やアドバイスが受けられる、顔なじみの医師であれば質問や相談がしやすいなど、経済的な部分以外のメリットも得られます。
3.はしご受診を控える
「はしご受診」とは、同じ病気やケガでいくつもの医療機関を受診することです。継続して1つの医療機関にかかれば1回目は「初診料2,880円+検査料等」、2回目以降は「再診料730円」がかかりますが、再診料は初診料より安いため2回目からは医療費が抑えられます。
しかし、はしご受診をすると、医療機関を変えるたびに初診料や検査料が発生して医療費がかさんでしまいます。
また、はしご受診をすると、重複する検査をしたり、同じ効能の薬が再度処方されたりすることもあります。さらに、医療費がかさむだけでなく、身体に負担がかかり、どの治療や薬が有効だったのかわからず治療方針が確立できなくなります。
同じ症状で医療機関にかかる際は、安易なはしご受診は控えるようにしましょう。
4.緊急時以外は受診する時間帯に気を付ける
夜間や休日に急に体調が悪くなった時、診てくれる医療機関があると安心できます。しかし、診療時間外に受診すると、割増料金がかかり医療費が高くなってしまいます。
たとえば、初診の場合は初診料が2,880円かかりますが、おおむね8時前と18時以降の診療時間外(土曜は8時前と正午以降)は、これに850円が加算されます。また、休診日となっている日曜・祝日・年末年始には、「休日加算」として2,500円が加算されます。深夜(22時〜6時)の受診にかかる「深夜加算」は、なんと4,800円です。
なお、診療所(ベッド19床以下のクリニックや医院)を受診する場合、診療時間内であっても、時間帯(18時〜8時、土曜は正午〜8時)によっては料金が加算されることがあります。
夜間や休日は限られた治療や検査しか受けられないことが多く、その場合、診療時間内に改めて受診しなければなりません。緊急時を除き、できるだけ休日以外の日中に受診するようにしましょう。
■さらに医療費を節約するコツ4つ
医療費を節約する方法は、他にもあります。窓口での負担を抑える方法、薬局でのワンポイントなどを見ていきましょう。
5.限度額適用認定証を持っていく
医療機関の窓口での支払いが高額になりそうな時には、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付申請をしておきましょう。認定証の交付を受け、保険証と一緒に窓口で提示すると、1ヶ月(1日〜月末)あたりの支払いを所定の自己負担限度額までに抑えることができます。
なお、オンライン資格確認(2023年4月から原則義務化)に対応する医療機関では、マイナンバーカードや保険証を提示して本人が同意することで、窓口での支払いを所定の自己負担限度額までにとどめられます。
6.お薬手帳を持参する
薬局で薬を処方してもらう際は、「お薬手帳」を持参しましょう。薬局で薬を調剤してもらうには、「薬剤服用歴管理指導料」がかかりますが、お薬手帳を持参することでこの料金が多少安くなります。
初めて行く薬局やお薬手帳を忘れてしまった場合、管理指導料は500円かかりますが、お薬手帳を持って行けばこれが380円で済みます(管理指導料が380円になるのは、3ヶ月以内に同じ薬局で調剤を受けた場合のみ)。医療費の自己負担が3割の人の場合、40円の差額になる計算です(四捨五入で10円単位で計算した場合)。
持参するだけで少しでも医療費が安くなるのですから、薬局にはお薬手帳を忘れずに持って行くようにしましょう。
7.ジェネリック医薬品を利用する
「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」とは、新薬(先発医薬品)の特許期間が切れた後、同じ有効成分で製造され、国が新薬と同等と認めた薬のことです。ジェネリック医薬品は開発費が少なくて済む分安価となっており、薬によっては新薬の3割〜5割も安くなる場合があります。
なお、2024年10月から、ジェネリック医薬品がある薬で新薬の処方を希望する場合は、特別料金(ジェネリック医薬品と新薬の薬価の差額の4分の1相当)がかかります。ジェネリック医薬品を選択するメリットはますます大きくなりますので、薬による医療費を節約したいならぜひ活用しましょう。
8.大病院にかかる際は紹介状を持って行く
一定規模以上の対象となる病院では紹介状を持たずに外来受診をした患者に対し、「特別料金」を徴収することが義務付けられています。該当するのは「特定機能病院」「一般病床200床以上の地域医療支援病院」「一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関」で、初診で7,000円以上(歯科の場合は5,000円以上)かかります。
大病院にかかる場合は、まずはかかりつけ医で紹介状を発行してもらい、持参するようにしましょう。
■工夫を重ねて医療費を節約しよう
同じ医療を受ける場合でも、ちょっとした工夫を重ねることで医療費は抑えられます。医療機関にかかる時は、保険証に加えてお薬手帳や限度額適用認定証も一緒に携帯しておくと、医療費がむやみに高くならずに済むでしょう。また、普段からかかりつけ医を持っておくと、体調について相談しやすく健康管理にも役立ちます。